特別企画
“高速リリースサイクル”で進化を加速させる「EmEditor Professional」v14
複数選択・編集、変更行の強調……新機能を貪欲に取り込む古くて常に新しいエディター
(2014/2/17 13:10)
「EmEditor Professional」は、高速・軽量が売りの国産テキストエディターだ。誕生からすでに14回のメジャーバージョンアップを重ねており、さまざまなプログラミング言語に対応したシンタックスハイライト機能や、“ActiveScript”対応のスクリプト言語で記述できるマクロ機能、高機能な内蔵のテキスト比較機能、10GB単位のファイルも軽々と扱える“巨大ファイル コントローラー”といった多彩な機能を誇る。プラグインによる機能の拡張も可能で、有志によるプラグインの開発・公開も行われている。
しかし、「EmEditor」の魅力は多機能性だけにあるのではない。
「EmEditor」はv14から“高速リリースサイクル”の採用を謳い、メジャーバージョンアップ、マイナーバージョンアップにこだわらず、積極的に新機能を投入する姿勢を明らかにしている。実際、昨年10月のメジャーバージョンのリリースから、すでに比較的大規模なアップデートが2回も行われており、今月には3回目のアップデートがベータ版としてお披露目されている。15年以上もの歴史をもつエディターとは思えない、アグレッシブなアップデートだ。
本稿ではこれまでにリリースされた「EmEditor」の機能をv14の新機能を中心におさらいしつつ、進化をやめない老舗エディター「EmEditor」の魅力の一端をご紹介したいと思う。以前の特集記事も併せて参考にしていただければ幸いだ。
複数個所の選択とその同時編集
「EmEditor」では、選択操作の開始と終了時に[F8]キーを押すことで複数の箇所を選択することが可能。その状態でキーを入力すれば、当該箇所が同時に編集できる。この複数選択機能は、マウス操作でも行うことが可能。[Ctrl]キーを押しながら選択操作を行えばよい。
また、検索機能やマーカー機能と組み合わせて複数個所を選択することもできる。テキストを選択した状態で[Ctrl]+[R]キーを押せば、選択テキストで検索が行われ、カーソルの位置以降で検索にマッチする箇所がすべて選択状態になる。カーソル位置よりも前も含めた全文を検索対象にするには、[Ctrl]+[Shift]+[A]キーを利用すればよい。
この複数選択・同時編集の機能そのものはv13で搭載された機能だ。表記ゆれを一度に訂正したり、ソースコードで変数の名前を一度に編集したい場合に便利なのでぜひ活用してほしい。v14ではこの機能がさらにブラッシュアップされており、より使いやすく便利なものになっている。
たとえば、複数選択の際にそれぞれの位置でカーソルが明滅するようになった。カーソルが見つけやすいだけでなく、入力に対してカーソル位置に変更が加えられることを考えても自然な挙動だ。そのほかにも、[Shift]キーと左右キーの組み合わせで選択範囲の拡張が可能となるなどといった改良が加えられている。
そのほかにも大量のテキストを効率よく処理するのに便利なコマンドとして、[1行上へ移動][1行下へ移動]コマンドが追加されている。これはカーソルのある行をまるごと1行、上下へ移動させるコマンドで、[Ctrl]+[Shift]+上下キーで利用可能。上下にある既存の行を乗り越えて移動させることもできるので、行の入れ替えなどに非常に役立つ。
パーセントエンコーディング
“パーセントエンコーディング(Percent-Encoding)”とは、URLで利用できない文字を符号化したもの。たとえば“窓の杜”は“%E7%AA%93%E3%81%AE%E6%9D%9C”となる。URLエンコードと呼ばれることも多い。
「EmEditor」v14.0では、このパーセントエンコーディングのサポートがビルトインされている。パーセントエンコーディングされたテキストは薄い紫色にハイライトされ、マウスカーソルを移動させるとツールチップでデコードされたテキストを確認可能。たとえば“%E7%AA%93%E3%81%AE%E6%9D%9C”にマウスオーバーすれば、“窓の杜”というツールチップが表示されるはずだ。
そのほかにも、選択テキストをパーセントエンコードしたり、パーセントデコードする機能を搭載。右クリックメニューの[選択範囲のエンコード/デコード]に、エンコード・デコードを行う項目が追加されている。
文書タイプごとに設定できる既定の保存フォルダ
「EmEditor」v14.1では、文書のタイプごとに既定の保存フォルダを指定できるようになった。テキストファイルは“マイ ドキュメント”フォルダに保存したいが、スクリプトファイルは他のフォルダに保存したいといった要望をかなえてくれる。
既定の保存フォルダを設定するには、文書タイプの設定ダイアログにある[ファイル]タブを開き、[新規作成]ボタンを押す。「EmEditor」で新規作成した“無題”のファイルを保存する際に、そこで指定したパスが既定の保存先になるはずだ。
ユーザー定義ガイド
“ユーザー定義ガイド”はv14.2で追加された新機能で、好みのカラム位置に縦線(ガイド)を表示しておける。このガイドは編集時のみ有効で、印刷しても出力されることはない。また、プロパティ画面の[記号]タブや、ルーラーの右クリックメニューなどから複数追加することもできる。
たとえば、一行あたりの文字数の目安として引いておくといった用途に利用するとよいだろう。また、黎明期の“Fortran”(科学技術計算向けの手続き型プログラミング言語)や“COBOL(事務処理用のプログラミング言語)”はプログラムを特定の桁に記述する必要があったが、そのような特殊な記述制限をもつドキュメントの作成にも使えるかもしれない。
特殊文字の入力機能の拡充
また、チルダやウムラウト、アクセント記号付きの文字が手軽に入力できるようになったのもv14.2における大きな改善点。
[Ctrl]+[Shift]+[I]キーで“特殊文字を入力”コマンドが利用できるようになったほか、[Ctrl]+[:]キーに続けてアルファベットを入力することでウムラウト付きの文字が入力できるなど、キーボードショートカットが拡充されている。長音記号(マクロン)が挿入できる“マクロンを挿入”コマンドも新たに追加されており、[Alt]+[-]キーが割り当てられている。
変更行の強調機能やマーカー付きスクロールバー
さらに、次期バージョンとなるv14.3では変更行の強調機能や、変更箇所や検索結果位置が一目でわかるマーカー付きスクロールバーが導入される予定だ。
現在公開されているベータ版では、ドキュメントを開いた後に編集されたり追加された行(変更行)の左端が黄色く強調表示される。変更された行のうち、保存済みの行(保存行)は暗い緑色で表される。
また、縦スクロールバーにはドキュメントのどの部分が変更されているかが簡単にチェックできるマーカーが追加される。ドキュメント全体の状態を手軽に把握するためのマップとして活用できるだろう。
マーカー付きのスクロールバーは左右に分割され、左半分では変更行の位置(黄色)と保存行(暗い緑色)、ブックマークされた行(茶色)の位置にマーカーが表示される。一方、右半分には検索テキストに一致した行(黄緑)とカーソルのある行(細い濃い青色の水平線)の位置がマーカーで示される。スクロールバーでマウスの中ボタンを押せば、その位置へスクロールして、すばやくアクセスすることもできる。
これらの機能は、設定のプロパティダイアログにある[記号]タブと[スクロール]タブでそれぞれ個別に有効化・無効化できる。強調表示やマーカーが煩わしく感じるときは、不要なオプションだけを無効化しておくとよい。
追加された膨大なコマンドを活用する
さて、「EmEditor」ではバージョンアップのたびに新しいコマンドが追加されている。よく使うコマンドに関しては、ショートカットを覚えていくことでテキストの入力効率をより高めることができるだろう。
しかし、すべて使いこなすのは難しい。とくにオプション画面の肥大化は著しい。一度設定してしまえば終わりの、あまり使わないオプションはどこにあるか探すだけでも一苦労だ。
そんな場合は、ぜひ“クイック起動”を使いこなしてほしい。
“クイック起動”はv13以降に搭載されており、[Ctrl]+[Q]キーで呼び出すことが可能。「EmEditor」に搭載されているコマンドやオプションを絞り込み検索したり、起動することができる。
さらに、キーコンビネーションのカスタマイズなども行える。v14.1.0以降ならば“すべての設定をリセット”コマンドで初期状態に戻すことができるので、自分なりの使いやすいキーコンビネーションを追及してみるのもよいだろう。
まとめ――これからの「EmEditor」に期待すること
当初は複数選択におけるカーソル表示の改善とパーセントエンコード、[1行上へ移動][1行下へ移動]コマンドの追加といった改善のみだった「EmEditor」v14だが、昨年10月のリリースから4か月間で3回の比較的大規模なアップデートを繰り返している(うち1回は正式版未リリース)。
“テキストエディター”といえばすっかりすっかり“枯れた”分野だと思われがちだが、「EmEditor」は依然アグレッシブなバージョンアップを止めていない。しかも、追加された機能はどれも割と便利で、実はまだまだやるべきことが残されていたことに今さらながら気付かされ、驚かされる。
その一方で、アップデートの煩雑さは少し気になる。「EmEditor」には自動アップデートの仕組みが備わっているが、初回セットアップのときと同じようにインストーラーを利用してアップデートする仕組みになっている。そのため、ウィザードでボタンを何度もクリックする必要がある。
最近のメジャーなオンラインソフトでは、なるべくユーザーの手を煩わせない“サイレントアップデート”のような仕組みを採用するものも多くなってきたが、それに比べると煩わしく感じてしまう。“高速リリースサイクル”によってアップデートの機会が増えれば、“サイレントアップデート”の必要性はこれまでよりも増すだろう。今後の“進化”でこの弱点が克服されることに期待したい。
また、「EmEditor」を勧める上でネックとなるのが、競合ソフトに比べて割高で複雑な料金体系だ。「EmEditor」の料金体系は“永久ライセンス”と“通常ライセンス+保守プラン”の2つに大別される。
“永久ライセンス(15,000円)”は将来にわたって無期限にバージョンアップが保証されるライセンスだ。古くからのユーザーは“永久ライセンス”を保持しているはずなので、ぜひ最新版に触れてほしい。現在、期間限定で13,000円で販売されているので、持っていない人は今がチャンスと言えるだろう。
“通常ライセンス(4,000円)”は向こう1年間のバージョンアップが保証されるライセンスだ。それ以降のバージョンアップには、毎年“保守プラン(2,000円)”の購入が必要だ。
筆者の個人的意見としては、テキストエディターは一生モノなので“永久ライセンス”の購入を勧めたい。ただし、予算次第では初期費用の安く済む“通常ライセンス+保守プラン”の組み合わせも魅力的だ。競合ソフトに比べて割高な価格に関しては、「EmEditor」の飽きなき“進化”をどれだけ評価するかにかかっているだろう。公式のフォーラムサイトでのサポートや、積極的に開かれている一般ユーザー向けの無料説明会などの付加価値をも勘案すれば、あながち高いだけではないと思えるはずだ。