ニュース

「Firefox 76」が正式公開 ~「Lockwise」にパスワードの漏洩警告や自動生成を追加

「Zoom」のビデオ会議に直接参加することも。脆弱性修正は“Critical”2件を含む11件

「Firefox」v76.0

 Mozillaは5月5日(米国時間)、デスクトップ向け「Firefox」の最新版「Firefox 76」を正式公開した。今回のリリースの目玉は、「Firefox Lockwise」の強化だ。

 「Firefox Lockwise」(about:logins)は、「Firefox」に組み込まれているパスワード管理機能。Webサイトなどで入力したログイン情報を記憶し、同期機能“Firefox Sync”で他の端末の「Firefox」と共有できる。モバイルアプリ(iOS/Android)も用意されており、「Firefox」でなくとも無償で利用が可能だ。

 「Firefox 76」では、この「Firefox Lockwise」が大幅に強化。Webサイトが攻撃を受けログイン情報が漏洩していることを検知すると、パスワード管理画面に赤い警告メッセージを大きく掲出し、ユーザーに注意を促すようになった。このメッセージが表示されたら、できるだけ早くパスワードの変更を行うべきだ。また、他のWebサイトとパスワードを使いまわしている場合にも鍵マークのついた注意メッセージを表示し、パスワードを更新するよう呼びかける。

ログイン情報が漏洩しているWebサイトを警告
パスワードの使いまわしを注意するメッセージ

 パスワードを変更する際は、「Firefox Lockwise」へ新たに追加されたパスワードジェネレーターを用いるとよいだろう。アルファベットの大文字・小文字、数字などを織り交ぜた、安全で複雑なパスワードを自動的に生成してくれるので、わざわざパスワードを何にするか悩まずに済む。「Firefox Lockwise」に覚えさせておけば、ユーザーがWebサイトのパスワードを覚えておく必要もない。

「Firefox Lockwise」に追加されたパスワードジェネレーター

 さらに、「Firefox Lockwise」に保存したパスワードを表示する際のプロセスにも改善が加えられている。以前のバージョンは基本的に認証なしでパスワードの表示や編集が可能だったが、「Firefox 76」ではOSのパスワードが要求される。席を外した隙にパスワードを盗まれるといったトラブルを未然に防止できるわけだ。Windows 10であれば“Windows Hello”が利用できるので、顔認証や指紋認証でロックを解除することも可能。

“Windows Hello”でロックを解除してパスワードを表示

 そのほかにも、動画サイトに埋め込まれたHTML5ビデオをWebページから切り離し、デスクトップ隅の小さなミニプレイヤーでビデオを表示する“Picture-in-Picture(PiP)”では、ミニプレイヤーのダブルクリックで動画を全画面表示できるようになった。もう一度ダブルクリックすればミニプレイヤーに戻るので、ほかの作業を行いながらビデオが楽しめる。WebのゲームやVRコンテンツで採用が進んでいる“Audio Worklets”がサポートされ、追加のダウンロードなしに「Zoom」のビデオ会議に参加できるようになったのも大きな改善だ。

マルチタスクしながらビデオを楽しめる“Picture-in-Picture(PiP)”

 また、Window版では「WebRender(Quantum Render)」が利用できる環境が拡充された。「WebRender」は研究用のレンダリングエンジン「Servo」の成果を取り込んだ新しいレンダリングアーキテクチャーで、マルチコアCPUとGPUの活用により描画の滑らかさを飛躍的に向上させる。NVIDIAやAMDのグラフィックスカードを搭載する環境から段階的に有効化されていたが、今回のリリースではIntelチップでも1,920×1,200以下の比較的小さなディスプレイで「WebRender」が既定で有効化された。

 なお、本バージョンにはセキュリティ関係の修正も含まれているので注意。Mozillaが公開したセキュリティ情報によると、今回修正された脆弱性はCVE番号ベースで11件。深刻度の内訳は、Mozillaの基準で4段階中最高の“Critical”が3件、上から2番目の“High”が3件、上から3番目の“Moderate”4件、最低の“Low”が1件となっている。

 デスクトップ版「Firefox」はWindows/Mac/Linuxなどに対応する寄付歓迎のフリーソフトで、現在MozillaのWebサイトからダウンロード可能。Windows版はWindows 7/8/10に対応しており、窓の杜ライブラリからもダウンロードできる。