ニュース

Apple M1にネイティブ対応した「Thunderbird 91」が正式公開 ~v78系統に代わる新版

マルチプロセス(e10s)のデフォルト有効化やメールの「リダイレクト」への対応なども

「Thunderbird」v91.0

 オープンソースのメールソフト「Thunderbird」の最新版「Thunderbird 91.0」が、8月11日(米国時間)に正式リリースされた。「Thunderbird 78」系統からのメジャーバージョンアップで、ベースが「Firefox 91」ベースとなったほか、多くの新機能が導入されている。

 なお、「Thunderbird 78」から「Thunderbird 91」への自動アップデートはまだ提供されていない。「Thunderbird 91を利用するには、「thunderbird.net」からインストーラーをダウンロードして手動でインストールする必要があるので注意したい。

「Thunderbird 91を利用するには、「thunderbird.net」からインストーラーをダウンロードして手動でインストールする必要がある

マルチプロセス(e10s)モード

 「Thunderbird 91」の目玉は、標準でマルチプロセス(e10s)モードによる動作となった点だ。「Firefox」ではかなり以前に採用されているものだが、「Thunderbird」でもようやく標準採用されることになった。

 「e10s」は、これまで単一であった「Thunderbird」のプロセスを複数に分割する。アプリの一部分がクラッシュしても他に影響が及ばなくなるため、安定性の向上が期待できる。また、応答性の改善やセキュリティの強化も見込めるという。

メール機能の改善

 インターフェイス関連でも、添付ファイルを追加する画面が新しくなるなど、さまざまな改善が施された。主な変更点としては、メール作成画面で空のCC/BCC行を表示できるようになった点や、To/CC/BCCフィールドにアクセスするためのキーボードショートカットが新設された点、受信者アドレスにおける非ASCII文字のサポートなどが挙げられる。

添付ファイルを追加する画面が新しく

 また、新機能としてメッセージのリダイレクト機能が導入された。これは転送とよく似ているが、自分(中継者)を介さず、あたかも元の送信者から直接送られたかのように装える点が異なる。リダイレクトで作成されたメッセージはタイトルに「Fwd:」という接頭辞が追加されず、本文にも変更は加えられない。返信先(Reply-To)には元の送信者が設定されるため、受信者が返信した場合は自分ではなく、元の送信者に直接メッセージが届けられる。このコマンドは、メッセージツールバー右端のメニューから利用可能だ。

転送とよく似た「リダイレクト」機能
左側が「転送」したメッセージ、右側が「リダイレクト」したメッセージ

 そのほかにも、「noreply@example.com」のような存在しない可能性の高いメールアドレスへの返信を警告する機能や、メッセージの受信者数が閾値を超えたときに警告する機能が追加された。とくに後者は顧客のメールアドレス漏洩を防止するのに役立つだろう。また、「PDF.js」ビューワーが統合され、「Thunderbird」でPDFファイルのプレビューが行えるようになった。「OpenPGP」や「CardDAV」への対応、カレンダー機能も強化されている。

「noreply@example.com」のような存在しない可能性の高いメールアドレスへの返信を警告

システム要件の変更

 「Thunderbird 91」では、Apple Silicon搭載のMacデバイスがネイティブサポートされた。M1チップでの動作速度改善が期待できる。

 なお、新しいシステム要件は以下の通り。OS X Mavericks(10.9)、Yosemite(10.10)、El Capitan(10.11)のサポートが打ち切られているので注意したい。

  • Windows:Windows 7以降
  • Mac:macOS Sierra(10.12)以降
  • Linux:GTK+ 3.14以降

セキュリティ関連の修正

 「Thunderbird 91.0」で修正されたセキュリティ問題は、CVE番号ベースで9件。深刻度の内訳は、Mozillaの基準で4段階中上から2番目の「High」が6件、上から3番目の「Moderate」が2件、最も低い「Low」が1件。「Thunderbird」は初期設定でJavaScriptが無効になっているため、「Firefox」ほどリスクは高くないが、任意コード実行の問題なども解決されており、できるだけ早い対応が望ましい。