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『AI搭載「Bing」は日本が1人当たりの検索数でトップ』 ~日本マイクロソフトがAIに関するプレス説明会を開催

日本マイクロソフトがAIに関するプレス説明会を開催

 日本マイクロソフトは3月16日、Microsoft AIに関するプレス説明会を「Microsoft Teams」上で開催した。この説明会では、同社のAIに関するクラウドサービスやソリューションなどの取り組みを総括しつつ、最近特に注目を集めている新しい「Bing」などのAI関連サービスが紹介された。

マイクロソフトは「責任あるAI」を提供していく

代表取締役社長の津坂美樹氏

 同社代表取締役社長の津坂美樹氏は、同社のミッションとして『地球上のすべての個人とすべての組織がより多くのことを達成できるようにすること』を掲げていると説明。その上で同社のAIへのアプローチは、「有意義なイノベーション」、「人と組織のエンパワーメント」、「責任あるAI」という3つの原則の上に成り立つとしている。

AIへのアプローチは3つの原則の上に成り立つ

 中でも重要視しているのが「責任あるAI」。『AIを組み込んだ製品の設計段階から開発、提供に至るまで責任あるコミットをしている。また開発担当や法務担当、ビジネス担当など、社内の様々な部門が参加し、あらゆる角度から確実に責任あるAIが実行できるよう取り組んでいる』と述べた。AIが人の役に立つのはもちろん、様々な角度からの信頼性も担保していくというメッセージだ。

 津坂氏は最後に『我々が提供するAIはまだまだ発展途上。利用者の方々にはたくさん使っていただき、フィードバックをいただきたい』と語った。

OpenAIとの協業などで、AIの活用を広げる

執行役員常務 クラウド&ソリューション事業本部長の岡嵜禎氏

 続いて同社執行役員常務 クラウド&ソリューション事業本部長の岡嵜禎氏から、同社のAIに関連する取り組みやサービスの全体像が説明された。

 AI関連の話題は今年に入ってから大いににぎわっている印象で、岡嵜氏も『インターネット、クラウドに続く変革をAIテクノロジーが与えるのではと多くの方が期待している』と感じているという。

 AI活用の1つとなるのがAIトランスフォーメーション。パナソニックコネクトが12,500人の社員に対して生産性向上を目的としたAI Copilot(副操縦士、サポート役という意味)を展開した事例を挙げつつ、『AIにより、お客様のDXが加速していく。お客様がAIをいかに早く取り込むかが大事と我々は考えている』と語った。

 そこに必要となるAI技術として、AIの活用方法として注目を集めるジェネレーティブAIがある。同社は2019年からOpenAIとの戦略的パートナーシップを結び、AI開発で協力しつつ、コンピューティングリソースを同社が提供することで、中長期的に取り組んでいるという。

同社のクラウドとOpenAIによるサービス

 具体的には、「GPT-3」を含むAIモデルを同社の製品に組み込むことを前提に投資しており、OpenAIが提供する「ChatGPT」のようなサービスを、同社のクラウドである「Microsoft Azure」に活用している。

 同社はこの数年にわたり、AI関連のサービスを進めてきており、コーディングを支援する「GitHub Copilot」や自然言語を解析してプログラムコードを生成する「OpenAI Codex」、営業の生産性を高める「Microsoft Dynamics 365 Copilot」などを展開している。

 さらに今年に入ってからは、「Azure OpenAI Service」の正式サービス開始や、「Teams Premium」、「Viva Sales」、「Bing」、「Edge」、「Skype」へのAI搭載など、製品への浸透が加速している。また「Azure OpenAI Service」にOpenAIの最新モデルである「GPT-4」を実装予定であることも明かされた。

今年に入ってから同社でもAI関連の発表が急激に増えている
「Azure OpenAI Service」に「GPT-4」を実装予定

新しい「Bing」は「Webの副操縦士」

マイクロソフト ディベロップメント株式会社 Bing開発統括部プロダクトマネージャーの山岸真人氏

 発表会では他にも様々なサービスが紹介されたが、その中でも長めに時間を取って説明されたのが、一般向けにも公開されている新しい「Bing」だ。マイクロソフト ディベロップメント株式会社でBing開発統括部プロダクトマネージャーを務める山岸真人氏がデモを交えて解説した。

 山岸氏は新しい「Bing」について、『リンクが羅列されていた従来の検索エンジンとは全く違う。我々はこれを「AIを搭載したWebの副操縦士」と呼んでいる。やりたかったこと、見つけたかった情報、意思決定したかったことなどを、情報としてまとめて生成することで、皆様を積極的に助けるという役割に生まれ変わった』と説明した。

新しい「Bing」を「Webの副操縦士」と呼ぶ

 新しい「Bing」には4つの大きな特徴があるという。1つ目は、通常の検索エンジンとしての品質の向上。より関連度が高く、多くの情報を提供できるとしている。

 2つ目は、情報をまとめる力を得たこと。『普段検索する際は、いろんなタグを行ったり来たりして情報をまとめていると思うが、「Bing」はWeb上でどんな情報があるかをまとめて、キーとなるトピックはリンク先を提供する』。

 3つ目は、チャットを通して話しかけるようにして検索できること。『人と相談する時は、明日は何する、どこに行く、と話しながら質問を思いついて追求することをしている。「Bing」でも話しながら質問し、出てきた回答をさらに質問してという形に対応している』。

 4つ目は、創造する力を持ったこと。『スピーチの原稿や今夜の献立などを、検索するに留まらず積極的に生成する』という。ここでデモが行われ、ベジタリアンのディナーパーティのコースメニューを尋ねた。するとチャットの形式で具体的なメニューが提案されるとともに、参考にした記事へのリンクも示されている。この後、参加者が苦手な食材があったと入力すると、別の料理を提案してくれるという。

新しい「Bing」にベジタリアンのコースメニューを聞いた

 新しい「Bing」を使えるのはWeb上の検索エンジンだけに留まらない。Windows 11のスタートボタンの隣にある検索ウィンドウや、モバイル向けの「Bing」アプリ、「Skype」のグループチャットからの呼び出し、「Edge」に「Bing」とダイレクトに会話できるボタンを搭載するなど、多彩な場面で「Bing」のAIを活用できるようになっている。

Windows 11の検索ウィンドウ
「Bing」モバイルアプリと「Skype」
「Edge」のダイレクト会話ボタン

 技術的には、「Prometheus」と名付けられた、同社が独自開発した新しい「Bing」を支える技術スタックが使われている。これにはOpenAIによる最新のGPTモデルである「GPT-4」を検索用にカスタマイズしたものが使われている。

 「GPT-4」は極めて高性能な言語処理モデルだが、元々持っていた知識(データ)がやや限定的だったという。そこで同社は、「Bing」の持つ関連度と鮮度が高い情報を抽出する力を組み合わせることで、データを補完している。これにより、『今夜のWBCのMVPは誰だと思う?』といったタイムリーなことにも答えられるようになったという。

「GPT-4」と「Bing」を組み合わせた「Prometheus」が新しい「Bing」の中身

 新しい「Bing」のプレビュー公開から約1カ月が経ち、71%のユーザーが検索結果や回答に満足したという。プレビュー登録者は世界で100万人以上だが、日本からの登録者はその1/10程度を占めている。また日本からのチャットの質問は200万件以上で、1人当たりの検索数も世界の中で日本がトップだという。日本からの関心の高さが伺えるデータだ。

日本人からの注目度が高い

 なお新しい「Bing」は現在もプレビュー版として提供されており、新規の登録も受け付けている。ポイントプログラムの「Microsoft Rewards」とも連携しており、検索するなどでポイントが貯まり、Amazonギフト券などに交換できる。「登録料なども不要なので、ぜひ登録して利用していただきたい」としている。

「Microsoft Rewards」と連携
新しい「Bing」のプレビュー版登録は、最新の「Edge」を開き、右上の[b]ボタンをクリックし、[順番待ちリストに参加]をクリック
「窓の杜」について会話してみた。AIによる自然な回答だけでなく、こちらからの回答まで複数提案してくれるのが面白い
著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)

1977年生まれ、滋賀県出身

ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。

・著者Webサイト:https://ougi.net/