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Embarcadero、「RAD Studio 12 Athens」を提供開始 「Delphi 12」「C++Builder 12」も

「Delphi」には便利な新文法、「C++Builder」ではツールチェーンの近代化と生産性の向上を実現

「RAD Studio 12 Athens」

 米Embarcadero Technologiesは11月8日(現地時間)、統合開発環境「RAD Studio」の最新版「RAD Studio 12 Athens」の提供を開始した。「Delphi 12.0」や「C++Builder 12.0」も利用可能。30日間無料で試用できるトライアル版も用意されている。

Delphi 12.0

 「Delphi 12.0」では言語機能が強化され、255文字以上の文字列リテラルや三重引用符による複数行の文字列リテラルがサポートされた。複数行にわたる長い文字列はもちろん、SQLやHTML、JSON、XMLといったテキストフォーマットも埋め込みやすくなる。

複数行の文字列リテラル

 そのほかにもWin32/Win64互換性やNaN浮動小数点数比較のサポート強化、「NativeInt」の弱い型エイリアス定義といった新要素も提供される。「NativeInt」はCPUアーキテクチャーによって柔軟にビット数が変わる整数型だが、互換性維持のために若干仕様が変更される。関数のオーバーロードなどに影響が出る可能性があるので注意したい。

 なお、「Delphi 12.0」では「Google Play」ストアアプリの要件であるAndroid API レベル 33との互換性が確保されているとのこと。最新のAndroidアプリも安心して開発できる。

C++Builder 12.0

 「RAD Studio 12 Athens」では、「C++Builder」とC++ツールチェーンのモダナイズに重点が置かれており、「Clang」の新バージョンだけでなく、C/C++のランタイムライブラリ、STL(C++標準テンプレートライブラリ)、さらにはリンカーとデバッガーも全面的にアップグレードされる。また、コマンドラインコンパイラーとして利用可能な新しいC++ツールチェーンもプレビュー提供される。

 生産性の面においては、IDEに「Visual Assist」が統合される。これは「Visual Studio」の「IntelliSense」に相当するコーディング支援機能で、高水準なC++言語のコード補完、コードナビゲーション、名前変更リファクタリングなどを提供する。

ライブラリ

 UIライブラリに関しては、「FireMonkey」でグラフィックスライブラリ「Skia」がサポートされる。新たなグラフィックス基盤が採用されることで、さまざまなターゲットプラットフォームで高品位・高パフォーマンスのレンダリングが可能となる。

 また、「VCL」ではMDI(マルチドキュメントインターフェイス)と新しいタブUIアーキテクチャーが採用される。親ウィンドウのなかに複数のドキュメントウィンドウをもつMDIはもはや古いインターフェイスとみなされており、Microsoftもあまり積極的にサポートしていないが、依然根強い需要がある。Embarcaderoはそうしたニーズに応えるため、HighDPIやスタイリングにも対応したモダンなMDIコントロールを提供するとともに、それをタブ管理できる新しいUIを提案したい考えだ。

MDI(マルチドキュメントインターフェイス)

 そのほかにも、インストーラーの改善、RESTサーバーAPIホスティングプラットフォームである「RAD Server」の強化、主力データベースアクセスライブラリである「FireDAC」の機能拡充などを行っているとのこと。

インストーラーの改善

 なお、無償の「Community Edition」は「11.3 Alexandria」ベースで据え置かれているようだ。「RAD Studio 12 Athens」でコミュニティ版が提供されるのかは今のところ明らかではない。