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OpenAIが日本法人「OpenAI Japan」を開設、代表は元AWSの長崎氏

アジア初のオフィス、「対話」を重視

 Open AIは東京にアジア初のオフィスを開設した。本拠地であるサンフランシスコに続き、ロンドン、ダブリンでオフィスを開設。ブランチとしては3拠点目となる。

 東京オフィスでは今後、営業、技術開発、ユーザー支援の各領域で10数名を採用し、法人セールス、カスタマーサポートを充実させる。

日本法人の代表は元AWSジャパンの長崎忠雄氏

 日本法人の代表は、2月までアマゾンウェブサービスジャパン(AWSジャパン)で代表執行役員社長を務めた長崎忠雄氏。同氏は保守的だった日本の企業向け市場においてクラウド活用を推進するため、粘り強く対話してクラウド型のプラトフォームを根付かせた功労者だ。

日本法人の代表を務める長崎忠雄氏

 昨年、OpenAIのサム・アルトマンCEOが来日した際、すぐにでも日本での事業を開始する意向を示していたが、海外ブランチとして三番目になった理由は、AIの活用を日本の経済界に根付かせるため、長崎氏の能力や経験を活かしたかったからのようだ。

サム・アルトマンCEOからのビデオメッセージ

 しかし、その間、OpenAIは日本市場参入に対して何もしてこなかった訳ではない。

 日本におけるAI活用を進めるための制度整備、法整備にも積極的に議論に参加し、日本社会に適合する形でのAI活用の普及に尽力するとしている。

OpenAIの拠点

GPT-4を日本語に最適化した「GPT-4 Customized for Japanese」の提供を開始

 これが言葉だけではないことは、GPT-4を日本語に最適化した「GPT-4 Customized for Japanese」の提供を開始し、企業向けのセキュアなサービスプラットフォームChatGPT Enterpriseを積極展開することからもわかる。

 日本語カスタムモデルを使うことで、翻訳と要約のパフォーマンスはGPT-4 Turbo比で最大3倍に向上。APIでの提供も数ヶ月以内に開始する。

GPT-4 Customized for Japanese

 OpenAIのGPTは英語で基本的な処理が行われるため、日本語処理においては使用トークンが多く、速度やコスト効率の面で不利だった。

 ChatGPTを使うだけであれば、顕著には応答速度が遅くなることが問題となる。しかし、GPT-4を活用したアプリケーション開発という観点で見ると、速度、コストの両面でGPT-4を使える(許容できる)ケースが増え、応用が進みやすいという利点がある。

 単純に日本語リソースの学習量を増やすなどのカスタマイズではなく、AIモデルが日本語の文章を読解する能力を向上させることで達成しているという。さらに学習させる際にも情報の優先順位をより的確に行うことで、日本語における単語同士の関係性など学習の質が高まっている。

 日本オフィスを設立したことで、OpenAIは口語における日本語や、文化的理解やコミュニケーションのニュアンスといったより繊細な領域におけるパフォーマンスの向上も加速するだろう。また日本でのノウハウの蓄積は、今後、より大きなAIモデルへと進むときにも、日本語におけるパフォーマンスはよくなる。

 今後、こうした取り組みは他言語でも進む可能性があるが、まずは日本語での研究開発が日本で進むことに、将来的な大きな意味が生まれてくるのではないだろうか。

「顧客との対話」を重視

 記者会見で長島氏は日本オフィスにおける優先順位の高い役割に関して、日本市場に特化したロビイング以上に、顧客との対話を挙げていた。

 「東京オフィスが設立されたことで、明日から経済界との対話を日本で進められる。生成AIは、どう使いこなすのか“考えながら使う“ことでより可能性が大きく広がる(長島氏)」

 企業がAIイノベーションに取り組む際、具体的な企業ニーズについて対話し、歩調を合わせながら効率と生産性を向上させていく。顧客と対話しながら新たな技術基盤の理解を深めていく手法は、AWSにおいても粘り強く行うことで成功してきた手法だ。

 なお日本オフィス設立の先には、日本におけるデータセンター活用なども行うのか?という質問も出たが、OpenAIはマイクロソフトとクラウド利用における戦略提携を行なっている。先日、マイクロソフトが4400億円にのぼる AIサーバへの投資を発表したことが一つの答えとなるだろう。

 データセンターに直接的な投資を行なっていないOpenAIらしい回答と言えるが、そもそもの東京オフィス開設の意義を考えれば、前述したように優先順位の違いとも受け取れる。

OpenAIのポートフォリオも紹介された

 ChatGPTのユーザーが200万以上いわれる日本市場は、それだけでも大きな可能性を秘めている。

 「まだオフィス開設初日なのに、すでに多くのユーザーがいる。ユーザーがどのように使い、どんなニーズをもち、どんな問題を抱えているのか。最初の課題は、それらを見極めることだ。より多くの人に使ってもらい、フィードバックをもらい、それを活かして改良を加えていくサイクルを回していく(長島氏)」

 OpenAIの技術はGPTだけではない。スピーチエンジンや音声認識でもトップレベルにあるが、それらの日本語対応やパフォーマンス向上についても、東京オフィスに期待したい。