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AIミーティングアシスタント「tl;dv」が日本市場に本格参入、TeamsやZoom、Meetとシームレスに連携

「単なる会議の文字起こしツールではない」、会議の効率化と生産性向上を支援

tl;dvのレコーディングボットを設定すると、会議の録画、議事録生成、要約を行っていくれる

 AIミーティングアシスタント「tl;dv(ティーエルディーヴィー)」を開発、販売する独tldx Solutionsが、日本市場に正式参入すると発表した。2025年内には、日本法人を設立する予定であり、カスタマーサポートやカスタマーサクセス、セールス、マーケティングなどの体制を順次拡充していく計画も明らかにした。同社がドイツ以外で現地法人を設立するのは日本が最初になる。

オンライン会議を自動で記録、要約、分析するAIソリューションTeamsやZoom、Meetとシームレスに連携

 「tl;dv」は、オンライン会議を自動で記録、要約、分析するAI ソリューションで、世界で200 万人以上が利用し、会議に関するデータを、組織の資産として活用できるようにするのが特徴だ。

 オンライン会議の録画および文字起こし、AI要約機能では、Google MeetやMicrosoft Teams、Zoomとシームレスに連携し、会議の内容を自動的に記録して、高精度な文字起こしと、AIによる要約を作成することができる。文字起こしは、日本語を含む30以上の言語に対応。Business プランおよび Enterprise プランでは、音声認識モデルにOpenAIのWhisperを利用でき、複数言語の同時文字起こしが可能になる。

英語での会議の内容をすべて英語で文字起こし、それを日本語で要約するといった使い方もできる

 また、AIによる要約では、セールス会議と全社オールハンズミーティングなど、それぞれの会議スタイルにあわせたまとめ方ができるほか、社内用語の学習などにより、企業ごとに最適化した方法でまとめることができる。

会議の参加者の発言時間や質問時間、「あのー」といったつなぎ言葉の多さなども分析できる

 このほか、HubSpot や Salesforceなどの営業支援ツールとの直接統合に加えて、5000以上のITサービスやツールとのAPI連携が可能であり、オンライン会議の録画データや文字起こし、要約を企業内の業務ワークフローに自動的に組み込み、業務を効率化できる。

 営業部門向けなど、組織ごとに最適なカスタマイズも可能で、MEDDICやBANTなどの主要なフレームワークへの対応のほか、オブジェクションハンドリング用のプレイブックを用意して、柔軟性を高めている。

過去の会議データから情報を収集、意思決定に利用可能

 さらに、AI ジェネレーターでは、単一の会議または複数の会議の記録に対して、抽出したい情報をAIに尋ねることで、蓄積された過去の会議データから情報を収集。ビジネスにおける意思決定や戦略策定に役立つ洞察を導き出すことができる。また、抽出された結果を、任意の頻度でレポートとして、メールで共有かることも可能だ。

レポートをまとめる際には、AIが会話を確認し、情報を要約する

 また、AIコーチングハブは、職種や目的別に用意されたプレイブックをもとに、会議の質やチームメンバーのパフォーマンスを客観的に分析。強みや改善点を可視化し、個人やチームの能力育成に活用できる。加えて、AIオブジェクションハンドリングにより、顧客からよく聞かれる質問内容などを抽出し、理想的な回答を生成するといったこともできる。

 たとえば、営業部門では、営業スキルの向上に活用でき、商談状況を分析して、顧客に話をしている内容や使っているキーワード、顧客との対話の時間比率などを分析し、それをもとに、対話の仕方や営業提案の内容の改善を図ることができるという。

AIによってまとめられたレポート

「単なる会議の文字起こしツールではない。『会議』を『機会』に変える」

 Japanカントリーマネジャーの溝口宗太郎氏は、「tl;dvは、単なる会議の文字起こしツールではない。オンライン会議の効率化と生産性を革新し、『会議』を『機会』に変えることができる。過去に蓄積した会議のデータから洞察を得て、チーム力の強化につなげ、次のチャンスを生み出す資産として活用できる」とした。

tldx Solutions GmbH Japanカントリーマネジャーの溝口宗太郎氏

 tl;dvは、無料プランのほか、Proプラン(年額3万6920円、月額4900円)、Business プラン(年額7万2960円、月額1万180円)を用意。今後は、 Enterprise プランも提供することになる。

 また、新たに日本市場向けに、「お友達紹介プログラム」を開始。紹介者は、被紹介者の月額利用料の25%を毎月複利で報酬として獲得することができるほか、被紹介者は、Proプランを6カ月間、3割引きで利用できる。

 今回の説明会では、tl;dv の2025年の製品ロードマップについても公表。新たな機能として、MCPを通じて、AnthropicやChatGPTと直接接続して、LLM上で、独自のエージェント型フローやプロンプトを実行可能できるようにするほか、日本市場向けにカスタム学習した文字起こしモデルを供給。Whisperを活用することで、さらに高精度な文字起こしを実現するとともに、セキュアな環境で学習しながら、社内固有の用語や略語も、より正確にAIが認識、変換できるようになるという。

 さらに、OktaおよびSCIMの統合を進め、シングルサインオンの環境で、より安全にプロビジョニングを行い、ユーザーの自動登録や削除も可能にすることで、tl;dvへの安全なアクセスが可能になる。

 また、tl;dv のスマホ向けのモバイルアプリを開発し、対面での会議も高精度に記録できるようにするほか、主要な日本の生産性向上ツールとの連携により、ワークフローにおける統合を目指すという。

 アルトシュタットCEOは、「今後は、エージェント機能を強化していくことになる。また、日本に根ざした企業として、日本のパートナーが持つソリューションとの統合も図っていく」と述べた。

tldx Solutions GmbH共同創業者兼CEOのラファエル・アルトシュタット(Raphael Allstadt)氏

ドイツ発、すでに200万人以上が利用

 tldx Solutions GmbHは、ドイツ・アーヘンに本社を置き、2020年に、チューリッヒ工科大学の卒業生など3人が、共同創業者となって設立。会議における知識を効率的にデジタル化し、組織内での共有化を容易にすることをミッションに掲げている。

 tldx Solutions GmbH共同創業者兼CEOのラファエル・アルトシュタット氏は、「チューリッヒ工科大学で数値モデリングを学び、AIの応用に取り組んできた。その後、欧州のバーガーキングなどの大手企業で働いたが、共通しているのは、毎日多くの会議に出席しなくてはならないということであった。だが、会議はブラックボックス化しており、出席していないと重要な情報を取り逃すことになり、ビジネスにも影響する。また、全員が揃う時間を設定するために、多くの労力をかけている。これは多くの会社に共通したものであり、課題となっている点である。そこで、学生時代に学んだ数値モデリングを活用し、AIで会議の文化を変え、効率化し、パワフルにしていくことを目指した。tldx Solutionsは、すべての組織のなかを、知識がスムーズに流れる世界を作ること、すべての会話が記録され、思い出すことができ、組織の知恵へと変換される世界を実現することを目指している」と語った。

 2022年4月からサービスを提供しているtl;dvは、全世界で200万人以上のユーザーが利用しており、2024年度の売上高は前年比5倍の成長を記録。ARR(年間経常収益)は8桁に達している。

 日本国内でも今回の正式な市場参入を前に、すでに10万人以上の登録ユーザーがあり、過去1年間で、12倍の成長を遂げているのに加えて、400万件の議事録をAIで生成。ARRは7桁に達しており、先進国のなかで最も高い成長率になっているという。また、日本における顧客満足度が高いという結果も出ていることにも触れた。

 アルトシュタットCEOは、「日本には根回し文化があり、ビジネスにおいては、会議が重要な役割を果たしている。そこで意思疎通を行い、連携をとっている。だが、日本では、議事録作成の多くが手作業で行われており、効率化を図ることができるポテンシャルがある領域でもある。また、ドイツと日本は、企業文化に親和性があり、セキュリティおよびプライバシーへの意識が高いという共通点がある。また、顧客のニーズを聞き、それに対して想定を超えて努力をするといった姿勢も同じだ。日本は今後の戦略においても極めて重要な市場となる。AI による業務の効率化や DXへの関心が高まっていることも、日本市場参入の大きな後押しになった」と語った。

国内登録ユーザー150万人を目指して組織を拡大

tldx Solutions GmbH共同創業者兼CEOのラファエル・アルトシュタット氏と、tldx Solutions GmbH Japanカントリーマネジャーの溝口宗太郎氏

 tl;dv では、GDPRをはじめとするEU やドイツのセキュリティプライバシー基準に準拠。SOC2の認証も受けているという。今後は、日本の個人情報保護法(APPI)への対応も進めていく考えだ。

 2025年2月1日付で、Japanカントリーマネジャーに就任した溝口宗太郎氏は、日本市場向けには、2027年末までに、日本法人の従業員数を30人体制にするほか、登録ユーザー数を現在の15倍となる150万人、ARRで15倍を目標に掲げた。

 「既存のtl;dvユーザーに安心して使ってもらうための支援体制を整えるとともに、tl;dvを知らない多くのユーザーに触れてもらう機会を増やす」とし、「2025年は、成長のための足場固めに注力する。組織を膨張させるのでなく、着実な成長を目指していく。コミュニティ・アンバサダー施策を展開し、日本語への完全なローカライズ、日本市場向けサポート組織の運用開始を目指す」と、2025年の基本方針を示した。

 また、「製品の力によって成長するPLG(プロダクトレッドグロース)と、営業組織主導によって成長を遂げるSLG(セールスレッドグロース)の両輪が必要である。これは、種をまかなければ、水をやっても花は咲かないのと同じである。外資系企業の日本法人は、SLGだけに注力することが多いが、tl;dv ではPLGも日本法人直下で推進することになる。まずはPLGを最大化するための取り組みを開始する」と述べた。

 溝口氏は、日本マイクロソフトで、Windows のプロダクトマーケティングに従事し、Windows 7からWindows10までの複数世代の製品ローンチを、中核メンバーの一人として牽引。その後、SAP ジャパンやSlack、Miroを経て、今回、tldx Solutions GmbHのJapanカントリーマネジャーに就任。同社の日本におけるビジネスを統括することになる。

 溝口氏は、「tl;dvのサービスをはじめとした様々なコンテンツやサービス、インフラのローカライズを進めるほか、、日本市場ならではの商習慣や業務にあわせたテンプレートも用意する。国内固有のSaaSとの連携により、業務に深く入ることも目指したい。日本のお客様を支援するチーム体制の強化を進め、日本のお客様の生産性向上を支援していく。今後は、国内における販売パートナーの拡充にも取り組む」などと抱負を述べた。