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TeamViewer、企業向け事業戦略を解説、「TeamViewer DEX」でデジタル従業員エクスペリエンスを改善

独自のAI「TeamViewer CoPilot」も

 独TeamViewerの日本法人であるTeamViewerジャパン株式会社は、日本の事業戦略と最新ソリューションについての記者説明会を8月29日に開催した。

 特に、2025年1月に買収を完了した英1E社のDEX(デジタル従業員エクスペリエンス)ソリューションをTeamViewer製品群に取り込んだ「TeamViewer DEX」が重点的に紹介された。

 DEXソリューションとは、企業システムのユーザー体験の状況を把握して可視化し、改善につなげるものだ。TeamViewer DEXのほか、Nexthink Infinityや、SysTrack、HP Workforce Experience Platformなどがこのカテゴリーに含まれる。

TeamViewerの4つめの製品ラインナップとしてTeamViewer DEXが追加

 説明会ではまず、TeamViewerの日本市場における戦略について、TeamViewerのAPAC 地域統括プレジデントのソジョン・リー氏が説明した。

TeamViewer APAC 地域統括プレジデント ソジョン・リー氏

 リー氏は、TeamViewerのソリューションについて、4つのラインナップを紹介した。同社の昔からの製品であるリモート接続の「TeamViewer Remote」、エンタープライズ向けのリモート接続の「TeamViewer Tensor」、現場作業員が使うARなどの「TeamViewer Frontline」、そしてDEXソリューションの「TeamViewer DEX」だ。

「今回の買収によりTeamViewer DEXソリューションが完成した。TeamViewer DEXとTeamViewer Tensorをあわせて、インテリジェントなエンドツーエンド管理ツールを再定義すると信じている」(リー氏)

TeamViewerの4つのラインナップ

 日本市場のポイントとしては、コネクテッド・インダストリーズなど政府による製造業へのIT支援や、医療分野、中小企業のデジタル化などをリー氏は取り上げた。

 TeamViewerでは、日本で10年以上サービスを提供してきたあと、2018年に現地法人を設立し、25名以上が働いている。日本での顧客事例としては、ソニーのBRAVIAのリモートメンテナンス、リコーのコピー機などのリモートメンテナンス、NECのレストラン向け配膳ロボットのリモートメンテナンスをリー氏は紹介。さらに、社名を出せない事例として、自動車会社のディーラーの整備士向けARも紹介した。

そして、TeamViewerは25人だけではなく、グローバルや地域のパートナーと緊密に連携してサービスを提供していると強調した。

日本市場のポイント
日本での顧客事例

情シスの多くが、従業員からの共通した不満への対応を抱える

 続いて、TeamViewerのチーフ・コマーシャル・オフィサーのマーク・バンフィールド氏が、TeamViewer DEXについて、企業のIT部門(情シス)向けの視点から説明した。

TeamViewer チーフ・コマーシャル・オフィサー マーク・バンフィールド氏

 まずバンフィールド氏は、情シスの現状の問題として、事後対応による問題解決や、同じような問題解決のタスクの繰り返し、長い解決時間、さらにはCrowdStrikeの不具合による世界的なシステム障害のようにデバイスで何が起きているか把握できないことを挙げた。

 そして自動化とAIにより、問題が発生してから修復するリアクティブな対応から、従業員に影響を与える前に解決するプロアクティブな対応、さらには問題が発生する前に解決する予測型の対応が求められるようになっていると語った。

情シスの現状
リアクティブな対応から、プロアクティブな対応へ、さらに予測型の対応へ

 中でもキーワードとしてバンフィールド氏が取り上げるのが「デジタルフリクション」、つまり従業員がシステムやデータを仕事で活用するときに、不必要な労力を強いられることだ。

 そこで出てくるのが、DEX(デジタル従業員エクスペリエンス)という新しい概念だ。TeamViewer DEXによってできることとしてはまず、エンドポイントでのユーザーの行動からAIを利用してセンチメント分析し、異常やフリクション、不満などを特定する。また、ユーザーのコンテキストと課題を意識した洞察や、対応策の提案、などもバンフィールド氏は取り上げた。

 こうしたDEXソリューションはUEM(統合エンドポイント管理)と似ている面もあるが、UEMがセキュリティなどの面でデバイスを管理するものであるのに対し、DEXソリューションは従業員の生産性などユーザー体験を改善するものだとバンフィールド氏は説明した。

 DEXが解決する課題としては、情シスの9割が、類似のサポートチケット対応や、従業員のPCやアプリのパフォーマンスなど、共通の課題を抱えていると指摘。そして、DEX導入により生産性向上やコスト削減、IT効率化を実現できると述べた。

 さらに、TeamViewerによる1Eの買収によって両社のソリューションを統合することで、エンドユーザーのデバイスをリモートも含めて管理し、DEXツールに組み込んで問題を特定できるようになったとバンフィールド氏は語った。

DEXソリューション
UEM(統合エンドポイント管理)とDEX(デジタル従業員エクスペリエンス)の比較

 TeamViewer DEXの顧客事例としては、保険会社のRLI Insuranceや、金融会社のNationwide、同じく金融会社のBaillie Giffordの例をバンフィールド氏は紹介した。

TeamViewer DEXの顧客事例:保険会社のRLI Insurance
TeamViewer DEXの顧客事例:金融会社のNationwide
TeamViewer DEXの顧客事例:金融会社のBaillie Gifford

 最後にDEXソリューションの将来像として、AIがTeamViewerのエージェントテクノロジーを用いて自律的に問題を修正するAEM(自律型エンドポイント管理)についてバンフィールド氏は語った。

DEXソリューションの将来像

TeamViewer DEXをデモで解説

 説明会では、実際にTeamViewer DEXについてデモつきで解説された。

 まずは事後のリアクティブな対応について。ここではチャット型AIのTeamViewer CoPilot(MicrosoftのCopilotとは別物)に、障害について修復のアドバイスを受け、さらに対応内容を文書化し、その内容から何が問題になっているかの分析などもできる。

TeamViewer CoPilot
何が問題になっているかの分析

 次に、1人に起きた問題がほかの人にも起きる可能性があるため全社規模に展開するプロアクティブな対応について。

 DEXの分析ダッシュボード画面であるExperience Analyticsでは、得られた情報から、今の社内環境をスコアリング表示する。デモでは、まあまあの65点だが、トレンドのグラフを見ると、ある時点を境にスコアが下がっていた。

 これを掘り下げ、Stability(安定性)、Responsiveness(応答性)、Performance(パフォーマンス)、Sentiment(センチメント)の4項目を見ると、安定性がある時点を境に下がっていることを発見。さらに、ログを参照して、問題の発生を見つけた。

Experience Analyticsの画面。下のトレンドのグラフを見ると、ある時点を境にスコアが下がっている
Stability(安定性)、Responsiveness(応答性)、Performance(パフォーマンス)、Sentiment(センチメント)の4項目を見る

 また、Insightsの画面では、使用している従業員がストレスを感じてしまうイベントの発生がわかる。そこから、クラッシュが発生しているなどの状況がわかり、実行手順なども提案される。

Insightsの画面。従業員がストレスを感じてしまうイベントの発生がわかる
イベントの内容や対策が表示される(メッセージはWeb翻訳ツールを介したもの)

 TeamViewer Endpoint Automationの画面では、トラブル対応などルール化できる対応を自動実行できる。実行状況の表示や、ルールの編集などができ、アプリストアのように公開ルールを利用できる「1E Exchange」も用意されている。

TeamViewer Endpoint Automationの画面。ルールの実行状況などがわかる
ルールの編集

 そのほか、従業員目線の機能として、センチメント分析によって「teams」「chrome」「slowly」「crashed」などのキーワードが抽出され、次のIT施策につなげられることもデモされた。

センチメント分析により「teams」「chrome」「slowly」「crashed」などのキーワードが抽出される

 効果の検証には、ビジネスインパクトダッシュボードも用意され、どれだけコストを削減できたか、どれだけ業務にたずさわれない時間があったか、などがグラフで表示される。

ビジネスインパクトダッシュボードで効果を検証