REVIEW(12/05/22)

「Excel」テンプレートで「Office IME 2010」向けの“オープン拡張辞書”を作ろう

インストール・配布・バージョンアップが手軽に行えるのが魅力

“オープン拡張辞書”“オープン拡張辞書”

 “オープン拡張辞書”は、「Microsoft Office IME 2010」(以下、「Office IME 2010」)向けの追加辞書を手軽に作成・共有するための機能で、ユーザー自身でも手軽に作成可能。旧バージョンの「Microsoft Office」ユーザーでも「Office IME 2010」は利用できる上、次世代OS“Windows 8”の標準IMEにも“オープン拡張辞書”機能は搭載されるようなので、注目しておいて損はない。

“オープン拡張辞書”とは?

 “オープン拡張辞書”ファイルには、DCTX形式とDCTXC形式の2種類がある。DCTX形式はXMLをベースとしたテキストになっており、DCTXC形式はそれをCAB方式で圧縮したもの。前者はテキストエディターなどで簡単に編集可能で、後者はファイルサイズが小さく、また、インターネットでの配布に適しているのが利点と言えるだろう。

 “オープン拡張辞書”の利点は、なんといってもインストールの容易さにある。辞書ファイルをダブルクリックするだけで、簡単に「Office IME 2010」へインストールできるので、従来まで広く行われてきたテキストファイルのインポートよりもわかりやすい。

インストールはワンクリックインストールはワンクリック

 また、アップデートも非常に簡単。辞書ファイルには固有のID(GUID)が割り当てられ、それによって同一の辞書かどうかを識別できるため、更新した辞書ファイルを配布してインストールしてもらうだけでアップデートが完了する。辞書ファイルにはバージョンナンバーを付与することも可能だ。

 辞書ファイルは単一ファイルになっているので、配布も容易だ。Webページや共有フォルダ、オンラインストレージに配置して共有したり、メールに添付して送付したりといったように、状況に合わせて柔軟に配布方法を選択できる。

辞書ファイル内の単語に説明文やURLを追加して変換候補ウィンドウで参照辞書ファイル内の単語に説明文やURLを追加して変換候補ウィンドウで参照

 そのほかにも、さまざまな利点がある。たとえば、辞書ファイル内の単語に説明文やURLを追加して、利用時に変換候補ウィンドウのポップアップウィンドウからそれを参照することが可能。また、電子署名の付与にも対応しており、第三者によって改竄されていないことを保証することもできる。

 なお、デジタル署名が付与されていない場合や、信頼されていないデジタル署名が付与されている場合は、収録単語数(10,000語まで)や使用できる品詞(名詞のみ)に一部機能に制限があるので注意。

“オープン拡張辞書”を作成しよう

 冒頭にも紹介したとおり、“オープン拡張辞書”はユーザーが作成可能。公式で用意されている「Microsoft Excel」テンプレートが利用できるので、「Microsoft Excel」の操作に慣れたOfficeユーザーにとっては難しくないだろう。テンプレートファイルは、Microsoftのダウンロードセンターからダウンロード可能。

 利用するには、“PackageForDLC\IME Open Extended Dictionary Excel Tool.zip”をダウンロード・解凍し、“IME Open Extended Dictionary Builder.xltx”を開く。初回利用時はカスタマイズツールのインストール作業を行う必要があるが、ダイアログに従って作業を進めていくだけでよい。

初回利用時はカスタマイズツールのインストール作業を行う必要がある初回利用時はカスタマイズツールのインストール作業を行う必要がある

 辞書の作成は簡単で、辞書の名前やバージョンといった基本情報を入力して、単語と読みを登録していくだけ。追加でコメントやURLを加えておくと、変換候補を選択する際のポップアップウィンドウでそれを表示させることができる。実際の表示がどうなるかは、先ほどのダウンロードセンターのページからダウンロードできるマニュアル“PackageForDLC\Open Extended Dictioniary Tool-Japanese.xps”に詳しいので適宜参照してほしい。

基本的に単語と読みを登録していくだけ基本的に単語と読みを登録していくだけ

 単語の登録が終わったら、[エラーチェック]ボタンででエラーがないか確認して、[辞書の作成]ボタンでDCTXファイルを出力する。DCTXCファイルを同時に出力することも可能。辞書ファイルが完成したら、ダブルクリックしてインストールしてみよう。「Office IME 2010」のプロパティ画面の[辞書/学習]タブにある“システム辞書”欄に作成した辞書が追加されるはずだ。

[辞書の作成]ボタンでDCTXファイルを出力[辞書の作成]ボタンでDCTXファイルを出力

インストールして“システム辞書”欄に追加されていれば成功。“辞書の設定”の“一般”にチェックを入れておけば、通常の変換辞書とシームレスに統合されるインストールして“システム辞書”欄に追加されていれば成功。“辞書の設定”の“一般”にチェックを入れておけば、通常の変換辞書とシームレスに統合される

“オープン拡張辞書”を公開しよう

 辞書ファイルを作成したら、ぜひインターネットで公開してみよう。辞書ファイルの作成は多少地味な作業だが、プログラミングが苦手でも実用的なコンテンツをインターネットに公開できるのが魅力でもある。長編小説のキャラクター名を網羅した辞書や、オンラインゲームのコマンドをすばやく呼び出すための辞書、特定の業界向けの用語の解説つき辞書などを作成すれば、多くの人に喜ばれるのではないだろうか。

 公開先は自分のWebサイトをもっている場合はそこでよいし、もしWebサイトを持っていない場合でも、“SkyDrive”などの無償オンラインストレージにアップロードして公式フォーラムの紹介スレッドへ投稿することができる。

 当該スレッドでは、すでに顔文字の辞書や携帯電話の絵文字の辞書といったいくつかの魅力的な辞書が入手可能。辞書ファイルの作者でなくても、一見の価値がある。

「Microsoft Office IME 2010 オープン拡張辞書作成用 Excel テンプレート」

【著作権者】
Microsoft Corporation
【対応OS】
(編集部にてWindows 7で動作確認)
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.0(09/12/28)

(柳 英俊)