杜のAndroid研究室

第198回

少女と運び屋の旅路を描くドラマチック・アクションRPG「消滅都市」

ジャンプアクションとパーティ編成が肝のタマシイ召喚バトル

 『杜のAndroid研究室』では、スマートフォン向けOS“Android(アンドロイド)”をテーマに、窓の杜スタッフが厳選したアプリなどを紹介していく。今回は、アクションRPG「消滅都市」を紹介しよう。

 なお本作は、基本プレイ無料・アイテム課金制のオンラインゲームとして提供されており、ゲーム内でガチャなどに利用するアイテム“フクザワ”が有料販売されているが、フクザワは特定ステージの初回クリア時などにも入手することが可能だ。

都市消滅の謎を軸に、少女と運び屋の旅路を描くロードムービー風RPG

基本は横スクロールのジャンプアクション
運び屋の男“タクヤ”と少女“ユキ”の出逢いから物語は始まる

 「消滅都市」は、横スクロール型のアクションRPG。強制スクロールするステージをトラップを避けながら進んでいくという、いわゆるラン&ジャンプ系のアクションと、さまざまなキャラクターでパーティを組んで敵を倒していくRPG要素が融合したゲームだ。

 物語は運び屋の男“タクヤ”が、謎の組織から少女“ユキ”を救出する所から始まる。彼女は3年前に起きた、ある都市が丸ごと消滅する事件の唯一の生き残り。ユキは研究者だった父親から送られてきたというメッセージを頼りに都市消滅の謎を探るため、タクヤはそのユキを送り届けるという依頼を受け、二人は消滅した都市、通称“ロスト”へと向かう。

 現代日本を舞台に、青年とおっさんの中間といった風貌のタクヤと可憐な白ワンピース少女のユキがスクーター二人乗りでひたすら旅を続けて行くという、ロードムービーのような独特の風情がある作品。エレクトロ調のBGMやフキダシ風の会話画面など、演出面のスタイリッシュさも光る。

 シナリオにも力が入っており、ステージ前後のイベントシーンのほか、バトルの合間にも随時会話が挿入。タクヤ達に協力してくれる仲間達や、ユキを狙う謎の組織の面々も交え、サスペンス、SFなどさまざまなエッセンスをもつドラマが展開する。

 また、会話は一部にボイスが付いており、タクヤを杉田智和さん、ユキを花澤香菜さんと人気・実力共にトップクラスの声優が演じているのも本作の売りだ。フルボイスではないものの、ピンポイントで“いい台詞”に声がついており、イベントシーンのアクセントとなっている。

さまざまな人物がそれぞれの思惑でタクヤ達をサポートする
物語を進めるにつれて、ユキを狙う組織の目的も明らかになっていく
年齢差コンビによる、ジェネレーションギャップを感じさせる会話もちょっとした笑い所(プレイヤーの年齢によっては泣き所?)

ジャンプアクションで“スフィア”を集め、“タマシイ”で戦う召喚バトル

タクヤがスクーターを運転して“スフィア”の取得を担当、ユキが集めたスフィアで攻撃というイメージ。タクヤ達の上やその反対側に浮かんでいるのが“タマシイ”だ

 ゲームの進行はステージ攻略型。ユキは都市消滅に巻き込まれた人々の想いが具現化した存在“タマシイ”を召喚する力をもっており、事前にセットしたタマシイに攻撃をさせて敵のタマシイを倒しながら進んでいく。ステージ上には“スフィア”と呼ばれるさまざまな色の玉がランダムに配置されており、これを取得することで色に対応する属性のタマシイに力が注がれ、一定の力が溜まると攻撃ができるという仕組みだ。敵側のタマシイは時間経過でゲージが溜まり、攻撃を仕掛けてくる。

 基本的な操作は画面のタップでジャンプ、下フリックで道が上下に分かれているとき上から下へ降りるというもの。ジャンプは二段ジャンプが可能で、これらの操作を駆使して落とし穴や障害物といったトラップを避けたり、スフィアを取得する。さらに、ステージにはHPを回復できるハート型のスフィアや、一定時間トラップを無効化したりスフィアを自動吸収するといった効果をもつアイテムも配置されており、逃さす取ることで有利に攻略していくことが可能だ。

フィーバー中はトラップを気にせずスフィア取り放題。攻撃を畳みかけるチャンス!

 スフィアは同色のものがいくつか連なって配置されており、まとめて取ることで“チェイン”数が増加して攻撃力に補正がかかる。さらに、10チェイン到達ごとに“フィーバー”となり、大量に現れるスフィアをトラップなしで取得するチャンス。ただし、一度トラップに当たるとチェイン数は半分になってしまう。チェイン数が多いときほど、ミスした時の復旧が困難となるわけだ。

 さらにチェイン数が増えるとスクーターのスピードが上がり、トラップを避けるのがより難しくなる。ステージクリア時はチェイン数やクリア時間などの条件を満たすことで追加報酬を入手できるが、普通にクリアするだけなら簡単なステージでも、追加報酬を狙うと難易度が跳ね上がるのがアクションゲームとしてチャレンジしがいのあるところ。一度クリアしたステージは何度でも繰り返しプレイすることが可能だ。

ステージ10-4のプレイ動画。執筆時現在配信中の第3章までの中では、物語的にも難易度的にも折り返し地点といったところ

パーティ編成の戦略と、どのスフィアを取るかの戦術がポイント

タマシイの編制においてはリーダースキルと属性のバランスが重要
スキルは一定回数攻撃し、“READY”状態になったタマシイをタップすると発動。回復やステータス向上などさまざまな効果をもつ

 タマシイはガチャやステージクリア時のドロップなどで入手可能。最大5つまでのタマシイでパーティを編制し、ステージ出撃時にオンライン上の他プレイヤーから1つを借りて、計6つのタマシイで戦う。

 タマシイは属性やステータスの違いのほか、一定回数攻撃すると任意のタイミングで発動できる攻撃や回復などのスキル、パーティのリーダーに指定することで常時効果を発揮するリーダースキル(いわゆるパッシブスキル)などに個性があり、スキルの組み合わせや敵の属性などに応じてパーティ編制を考えるのが醍醐味だ。

 また、パーティにタマシイを入れていない属性のスフィアを取得しても攻撃上は意味がないため(チェイン数の足しにはなるが)、ステージ中、道の上下に別のスフィアがある時などは、パーティ編成に応じてどちらを取得するか咄嗟に判断するという戦術要素も。さらにこのため、コンスタントに攻撃できるようバランスのよい属性配分にするか、ボスの弱点を突くため特定属性に特化するか……といった戦略も重要となってくる。

 ちなみにこのタマシイ、ステージ開始前のロード中画面に表示されるキャラクター紹介や、敵として攻撃してくる際の技名・台詞などで、元となった人物の性格や来歴を垣間見ることができる。よく読むと『あのタマシイとこのタマシイは消滅前、兄妹だったのでは……』といった関係性が見えてくるのもちょっとした楽しみで、使い込むと愛着が湧いてくる。

ロード画面ではTipsに加えてキャラクター紹介が表示される
敵タマシイは攻撃時の掛け声などがそれぞれ個性的。中学生は色違いで複数居るが、青い彼は洋楽ロックかぶれのようだ

 タマシイはステージ出撃や合成などで経験値を溜めるとレベルが上がり、最高レベルになると“進化”によってさらに強化することが可能。進化は美大生からデザイナー、さらにトップアーティストへ……というように元となった人物が生きてきた軌跡、あるいは“こうありたい”と願った夢を辿るようなものとなっており、これも愛着が沸く一因となっている。

“彫刻家”から“造形の魔術師”へ進化。グラフィックもゴージャスに

アクションとドラマが絡み合い、どちらも存分に味わえる良作

 本作のシナリオは執筆時現在、第3章まで配信中。最初は運び屋とクライアントというドライな関係だった二人が旅を続ける中で徐々に信頼関係を築いくさまが、そして多くの困難や絶望を乗り越えていくさまが、テンポの良い会話を通じてときにコミカルに、ときに熱く語られていく。

旅を続けるうちに、タクヤとユキの関係も変化していく

 オンラインゲームのシナリオというと、とかく“サービスが続いていく”ことを前提とした良く言えば壮大、悪く言えば延々と終わりが見えない話が続いてしまいがちだが、本作では内容の濃い展開で目まぐるしく状況が動き、3章終盤の時点でクライマックスに突入。印象としては2時間映画にも通じるような、起承転結のメリハリがある物語を堪能することができた。

ロストへ近付くにつれて物語は加速
トラップも敵の攻撃も激しさを増していく
リリース以降、イベントやキャンペーンも頻繁に開催されている

 ちょっとしたノベルゲームにも匹敵するボリュームをもつシナリオが魅力の本作だが、アクション面も本格的なもの。ステージを進む度にトラップは激しく、いやらしくなっていき、安全なルートを見極める目と、とっさの指さばきが重要となる。また、ステージの構成がシナリオ演出に繋がっていたり、ソーシャルゲームにありがちなとあるシステムが実は設定上も重要な意味をもっていることが明かされたりと、ゲームだからこそ表現できるシナリオ、システムと物語の融合という面でも意欲的な作品だ。

 5月末の配信開始以来、期間限定のステージが配信されるイベントも開催されているが、こちらでも本編の補完や伏線となるストーリーが語られるなど、シナリオ面でも興味深い。1回目のイベントはリリース直後にしては難易度が高く多くのプレイヤーから絶望の声が挙がったが(筆者もその一人である)、それ以降のイベントはプレイヤーの声が反映され、“ほどほどの難易度で楽しめるメインストーリー”と“レアドロップやクリア報酬を狙える高難易度のエクストラステージ”という二本立て方式へと変更。初心者からガチのアクションゲーマーまで、幅広く満足できるようになっている。

 本作はアイテム課金制だが、ゲームを進めるために必要なのはプレイの積み重ねによるキャラクターの強化とプレイヤースキルの向上という、アクションRPGとして非常に真っ直ぐな造りが好感触。筆者の場合、タマシイ所持数の上限拡張のためにのみフクザワを購入し、ガチャにはゲーム内で入手したフクザワだけを使う、というプレイで進めているが、どのタマシイにもそれぞれの使い所があり、しっかり育てることで3章クリアまでゲームを進められている。執筆時現在、端末間でのプレイデータ引き継ぎに対応していない事だけが懸念点だが、アクションゲームやドラマチックな物語が好きならそこを差し置いてもオススメしたい作品だ。

ソフトウェア情報

「消滅都市」
【著作権者】
(株)Wright Flyer Studios
【対応OS】
Android 4.0以降(iOS版も配信中)
【ソフト種別】
フリーソフト(アイテム課金あり)
【バージョン】
1.0.3.52(14/06/24)

(中村 友次郎)