【第23話】
Twitterクライアントは本当に終わるのか
(12/09/04)
Twitter社がAPIの新仕様であるv1.1を発表して以降、それがクライアント開発者・ユーザーの間で物議を醸しており、『サードパーティ製のクライアントは全滅するのではないか』『Twitter社はサードパーティ製のクライアントを締め出そうとしている』といった声が上がっている。実例を挙げると、「P3:PeraPeraPrv」の作者が開発終了を発表したほか、「Janetter」の作者も将来への不安をブログで綴っている。
実際のところどうなのか、v1.1での変更点を簡単におさらいしておこう。まず、クライアントのユーザーに直接関係するのが、クライアントに許される1時間あたりのリクエスト回数だ。これまでリクエストの種類に関係なく最大350回だったものが、リクエストの種類ごとに最大60回とした上で、ツイートを表示するといった、使用頻度が高い種類のリクエストは最大720回まで拡大した。これは基本的に上方修正と考えてよいが、ツイートの投稿やリツイートが最大60回のリクエストなのか、それとも最大720回のリクエストなのか、Twitter社はいまのところ発表していないので、前者だった場合はクライアント上での投稿回数が以前より大幅に制限されることになる。
開発者とユーザーのどちらにも関係し、今回のv1.1で一番の肝と思われる変更は、ツイートの表示スタイルが厳格化されることだ。クライアントは今後、投稿者のユーザーIDや名前、アイコンはもちろん、タイムスタンプや文中のリンクに加えて、リプライ・リツイート・お気に入りのボタンなども、Twitter公式サイトのデザインに準拠する形で表示しなければならない。これを守らなかった場合は、クライアント単位でTwitterの利用許可が取り消されることになる。
たとえば、各ツイートを1行に収めて表示するようなシンプル系のクライアントはこのルールから外れるため、デザインを変更しなければならず、それが譲れない場合は開発終了を強いられる。つまり、多くの人が心配する“終わるパターン”に陥るわけだ。逆に多機能を謳うクライアントであれば、上述のことがすでに守られているか、もしくは若干の修正で済むはずなので大きな問題にはならないだろう。
残りの変更は主にクライアント開発者に関わるもので、ユーザー数の制限に注目すると、各クライアントはユーザー数が10万人を超える場合にTwitter社の承認が必要になり、未承認の状態では新規ユーザーがそのクライアントを利用できない。ただし、すでにユーザー数が10万人を超えているクライアントの場合は、その2倍まで承認を申請する必要がない。この承認の詳細は現在のところ明らかになっておらず、v1.1のルールを守っていたら認められるのか、それとも有料になるのかは不明だ。とはいえ、Twitter社が承認を一方的に断るようなことは、こうして新仕様を発表しているだけに考えにくい。
ユーザー数の制限については、iOS用の定番クライアント「Tweetbot」ですでに動きがあった。有償で販売される予定の同Mac OS版がパブリックテストとして先日まで無償公開されていたが、今回の仕様変更をうけて公開が急遽中止された。同ソフトの作者によると、テスト段階で獲得したユーザー数が正式版の公開時にリセットされないため、たとえば、テストに参加したユーザーが正式版を購入しなかったら、その分のユーザー数が丸損になるとのこと。ユーザー数が10万人を超えた場合の承認が不透明なため、不要なユーザー数が増えないように同Mac OS版の公開が中止されたというわけだ。
今回の一件が混乱を招いた要因は、Twitter社が十分な情報を発信していないことにある。それが少ない情報を過大解釈させる結果につながり、『Twitterクライアントは終わった』というところまで発展してしまった。ただし、すでにはっきりわかっていることもあり、ツイートの表示スタイルは統一化される。これにより、クライアントからひとつの個性が奪われ、ユーザーも選択する自由を奪われたことは確かだが、一人の人間のツイートが現実の発言よりも影響力をもつようになってしまった現在、Twitter社の主張にも一理ある。海外では、v1.1の撤回を求めるための署名活動を行っているWebサイトも登場しており、Twitter社が開発者やユーザーの声にどう応えるのか、今後の動きに注目していきたい。