杜のVR部

第41回

手元のDK2で体験できるハイレベルなVR体験「Showdown」「GE Neuro」

公開されるデモのクオリティも高くなっていることを実感

 前回の第40回では、来年いよいよ発売されるOculus Rift製品版が楽しみになる3つのVRゲームを紹介した。いずれも、製品版プロトタイプであるCrescent Bayを使った体験であり、ハードウェアの性能、ソフトウェアの完成度とも非常に高いものだった。

 しかし、2016年第一四半期とされている製品版の発売までまだ最低でも4カ月程度あり、まだかまだかと待ち構える我々の手元にあるのは昨年7月から出荷された開発者版のOculus Rift DK2だ。

 DK2でできる体験は、ハードウェア的にもソフトウェアの完成度としてもCrescent Bayで体験できるものに比べて劣るというのが実際のところだ。

 そんな中、9月3日にDK2で体験できる2つのコンテンツ「Showdown」「GE Neuro」が公開された。さっそく体験してみたが、いずれも非常に完成度が高い。ハードウェアの性能が気にはなるものの、手元にダウンロードしてDK2で体験できるコンテンツとしては最高峰の出来ではないかと思う。

近未来の戦場で弾丸が頬を切るリアリティを感じられる「Showdown VR Demo」

 まず1つ目はEpic Games社が公開したVRデモ「Showdown VR Demo」(以下、「Showdown」)だ。この「Showdown」は、Crescent Bayのお披露目の際のデモとして昨年9月のOculus VR社公式カンファレンスOculus Connectで登場。以降、GDCやSIGGRAPHなどで展示されてきた。日本国内でも、DK2での体験ではあるがCEDECなどのイベントでも体験することができた。

 街中で巨大なロボットと対峙し、応戦する戦場が舞台のVRシネマティック体験だ。ミサイルや弾丸が飛び交う中、体験者はロボットに向かって突撃していく。この体験で特徴的なのは、動きがスローモーションなこと。飛んでくる弾丸が宙を裂いて近付いてくる様子、ミサイルが着弾し、地面が脈打って爆発が起き、車がこちらに飛んでくる様子などをまじまじと見ることができる。スローだからこそ戦場の色々な場所を見ることができ、臨場感が生まれている。この、“スローだからこそ逆にリアルな体験になる”というのも面白いポイントだ。

 Epic Games社が提供するゲームエンジンUnreal Engine 4(UE4)の特徴を活かして描画されている世界は、戦場そのもの。非常にリアルな体験が可能だ。

UE4のロゴが燃え盛ってスタート。そこはもう市街戦のど真ん中だ
弾丸が空気を切り裂きながらこちらに飛んでくる
ミサイルが着弾し、地面が波打つ
車がこちらに吹っ飛んでくる
人間を襲うロボットとの対峙。果たしてプレイヤーの運命はどうなるのか

 この「Showdown」は、UE4でVRコンテンツを作るためのラーニング用のサンプルとして公開された。UE4ユーザーならば誰でも無料でダウンロードして体験できるだけでなく、内部構造、オブジェクト一つ一つに至るまでその仕掛けをすべて見ることができる。なお、『UE4ユーザーならば』と書いたが、UE4は無料で提供されているので、誰でもUE4をインストールして「Showdown」を体験することができる。Oculus Rift DK2以上(Crescent Bayを含む)だけでなく、PS4向けのProject Morpheus、HTC Viveといった他のVRヘッドマウントディスプレイでも体験でき、まさにUnreal Engine 4で開発するVRコンテンツのお手本だ。

このようにデモのシーンをすべてUE4上で見ることができる
「Showdown VR Demo」
【著作権者】
Epic Games Inc.
【対応OS】
Windowsなど
【対応ハードウェア】
Oculus Rift DK2など
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
4.9.0

美しくグラフィカルに描写された脳内の小宇宙を旅する「GE Neuro」

 2つ目に紹介するコンテンツはVRシネマの制作会社Kite and Lightningが制作した「GE Neuro」だ。グラフィックボードメーカーのAMDが制作に協力しており、同社のグラフィックボードの性能を最大限活かせるコンテンツとして作られている。Kite and Lightningは、第19回で取り上げた「INSURGENT: Shatter Reality」などを制作した、VRをメディアとしたアーティスティックな体験の制作に挑み続けている実力派の制作会社だ。

 今回のテーマは脳内の旅。最新の研究によって明らかになっている脳細胞の複雑さを美しくそして非常に楽しい体験として実現している。

 プレイヤーは、イギリス人のDJ・Reuben Wu氏の脳内に飛び込むという説明をラボで受ける。説明をしてくれるナビゲーションシステムは人の頭の見た目をしたホログラフィックで表示されており、まるでAIであるかのように軽口を飛ばしてくる。

ラボでの説明を受けるシーン、右下にいる人の頭部のインターフェイスが旅の相棒だ
ポジショントラッキングを活用しているため“Look inside(内部を見ろ)”と書かれているところに近付いてみる
いよいよ脳内への旅が始まる

 そしていよいよ頭の中への冒険が始まる。赤を基調とする生々しさは一切なく、それはまさに脳という名の小宇宙への旅そのもの。脳内へ飛び込む場面は宇宙で言うところのハイパースペース(超光速飛行)のような、光を引き延ばす表現での体験となる。

 そしてカラフルな脳内の空間が広がり、各脳細胞の中には人形のような存在が動いている。その中を旅しながら、脳細胞の機能分化、そしてつながりを解説していく。英語なので説明がわからないかもしれないが、360度の脳内映像は眺めているだけでも十分楽しめる。

脳内へ飛び込む瞬間。宇宙を航行しているようで美しい
脳内世界。脳細胞が複雑に絡み合っている。各細胞の中には人がいる
頭の中には小宇宙が広がっている
そして脳細胞の活動を示すグラフィック。光の点滅はとにかく美しい

 そして、この「GE Neuro」はその体験としてのクオリティの高さだけでなく、脳内構造をわかりやすく、そして飽きさせないように体験させ、理解させるという教育効果にも注目したいところだ。

「GE Neuro」
【著作権者】
Kite & Lightning
【対応OS】
Windows(Oculus Runtime for Windows 0.6.0.1-beta以前が必要)
【対応ハードウェア】
Oculus Rift DK1/DK2
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.0.0

 今回、紹介した2作品は筆者がこれまで体験してきたDK2向けコンテンツの中でも特に完成度が高いものだ。DK2をお持ちの方はぜひ試していただきたい。

 なお、ダウンロードできるコンテンツを体験する際に常に注意しなければいけないことだが、快適に体験するためには、それなりのグラフィックボードを搭載したPCが必要になることを補足しておきたい。「Showdown」はNVIDIA GTX680相当以上、「GE Neuro」はNVIDIA GTX 780 Ti相当以上を推奨している。

 さらに8月24日より、Oculus Riftを動作させるために必要なランタイムのバージョン0.7が公開されている。新たな動作モードが追加されておりこれまで以上に快適な動作が実現する一方で、SDKのバージョン0.6以前で作成されたコンテンツが動作しなくなっている。体験する際はランタイムのバージョンにも気をつけよう。ランタイムの最新版はOuclus VR社の公式サイトよりダウンロードできる。

Oculus Rift DK2版評価PCスペック(参考)

マウスコンピューター G-Tune NEXTGEAR-MICRO im550PA6-SP2
【CPU】
インテル Core i7-4790K プロセッサー(4コア/4.00GHz/TB時最大4.40GHz/8MB スマートキャッシュ/HT対応)
【メモリ】
16GB PC3-12800(8GB×2/デュアルチャネル)
【グラフィックボード】
AMD Radeon R9 Fury X(4GB)
【fps】
両コンテンツとも75fps
【ヘッドホン】
Creative Sound Blaster EVO Zx

(もぐらゲームス:すんくぼ)