杜のVR部

第35回

VRだからこそ面白い覗き込むゲームデザイン「Herobound」

Gear VRでじっくり遊べるゼルダ風アクションゲーム

 サムスンが発売しているVRヘッドマウントディスプレイGear VRでは、専用のプラットフォームOculus StoreにてさまざまなVRゲーム・体験が配信されている。なかには有料のコンテンツもあり、Oculus VR社の審査を経たコンテンツを楽しむことができる。各コンテンツの完成度は、現在開発中のOculus Rift向けに開発されたものと比べると総じて高い。さすが市販されている製品版向けのコンテンツという印象だ。本連載でも第32回で映画関連のVR体験を取り上げている。

VRだからこそ面白い「Herobound」

 今回はGear VR向けに配信されているゲームの中でも、とくに完成度の高いアクションゲーム「Herobound」シリーズを紹介しよう。Gunfire Gamesからすでに2作がリリースされている第三者視点のアクションゲームだ。1作目の「Herobound: First Steps」は2014年12月にGear VRの発売とともにリリース。2作目の「Herobound: Spirit Champion」は2015年5月にリリースされた。遊ぶ際にはBluetoothで接続するゲームパッドが必要となる(筆者が使用しているのはMad CatzのMicro C.T.R.L.R)。

 まずは1作目の「Herobound: First Steps」から紹介していこう。この「Herobound」シリーズは、一言で言ってしまえば“VR版ゼルダの伝説”だ。主人公を動かし、剣や弓矢で敵を倒し、ダンジョンの仕掛けを解いて先へ進んでいく。集めていく宝石もゼルダの伝説の“ルピー”に似ていたり……。もしこのゲームがVRではなかったら、2015年のこの時代にプレイする3Dアクションゲームとしてはいささか退屈なゲームだろう。

ダンジョンを探索する主人公。宝石はまるでルピーのようだ
敵を倒しながら奥へと進んでいく

 しかし、このゲームは触っていて面白い。つまりVRだからこそ面白く感じられる要素が散りばめられているということなのだ。その面白さの秘密を本記事では解きほぐしていきたい。

見下ろし型ではなく、側面という絶妙なアングルに置かれた“神の視点”

 VRゲームと通常のゲームの違いは何か。それは頭を動かして視点を360度動かせるということだ。一人称視点のゲームであれば実際のキャラクターと視点が同期し没入感が増すが、三人称視点のゲームでもこの特徴をフル活用することで面白さが生まれる。

 「Herobound」では、箱庭のような目の前の3Dステージに主人公がいる。プレイヤーの視点は真上からステージを見下ろすような視点でもなければ、主人公の後ろから追尾するわけでもない。側面に配置されている。

視点は常に側面だ。壁をぶち抜いた部屋の模型を覗いている感覚
廊下を奥から覗く視点。これも側面だ

 この独特なカメラの位置は、ステージの中に居るような、外に居るような、不思議な感覚になる。実はこの視点、ステージによるが全体の約30~60%ほどがカバーされており、正面を見ただけではステージ全体を見ることができない。

主人公が視界の外にいるなんてこともしばしば起きる

VRならではの“視点”を使ったゲームデザイン

 この視点の移動はゲームをプレイする上でも重要になってくる。たとえば、ステージが100%一望できないことをうまく利用し、視点を動かすことでアイテムを発見できたりと、部屋の中をよく見渡すことがゲームを進める鍵になっている。

ステージすべては見えないので視点を下げてみると
こんなところに道と宝石が!

 また、主人公の装備である弓矢を使う際に、的を合わせるのはプレイヤーの視線になる。この的合わせは第三者視点での的合わせという一見不自然な構図だが、非常にやりやすい。これまでのアクションゲームでは、弓矢を撃つのはとにかく当てにくいという印象だったが、この照準の合わせ方であれば一発で合わせることも可能だ。また、コントローラーで主人公を動かすことができるため、歩きながら照準を合わせ、弓矢を撃つ……なんてこともできてしまう。

弓矢の的を視点で合わせる

より長時間、そして快適に楽しく遊べるゲームへの進化

 1作目の「Herobound: First Steps」は、水のダンジョンと炎のダンジョンでキーとなるアイテムを集め、火山の下にある城に乗り込むという、ゲームのシナリオとしてはいささか単純なものだった。

 2作目の「Herobound: Spirit Champion」では、1作目ではまだまだゲームとしては未完成だと感じられた点がことごとく改善されている。たとえば、敵を攻撃するときのもっさりとした感覚。1作目では主人公の攻撃にやや詰まりを感じたが、2作目ではサクサクと攻撃できるようになっている。

 また、村からスタートし、ゲーム内のキャラクターと話しながらストーリーが進行していくといったシナリオ面でも充実が図られている。さらに宝石を集めると攻撃時のアクションが増えたりといった成長要素も加わっている。

2作目「Herobound: Spirit Champion」は、シナリオが語られるところから始まる。1作目とはかなり異なる
村からスタートするのも1作目とは異なっている。村の人々との会話も発生する
新たなアクションを習得することも

 先ほど書いたようなVRならではの面白さはもちろんそのままに、まさに正統進化という形でしっかりとしたゲームとしての面白さも補ってきているのが2作目の「Herobound: Spirit Champion」だ。

 プレイしてみると、3人称視点のVRゲームのノウハウが非常に短期間で洗練されてきていることが感じられる「Herobound」。無料でプレイできるのでぜひ2作とも体験していただきたい。

プレイ動画
「Herobound: First Steps」
「Herobound: Spirit Champion」

ソフトウェア情報

「Herobound: First Steps」
【メーカー】
Oculus
【開発者】
Oculus
【対応ハードウェア】
Gear VR Innovator Edition for S6
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.3(15/06/10)
「Herobound: Spirit Champion」
【メーカー】
Oculus
【開発者】
Gunfire Games LLC
【対応ハードウェア】
Gear VR Innovator Edition for S6
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.1(15/06/02)

(もぐらゲームス:すんくぼ)