週末ゲーム

第547回

ブレードとロックオンで敵を一掃するアクションシューティング「アスタブリード」

爽快感、戦略性、やり込みの全てを網羅した最高級の完成度

 『週末ゲーム』では、インターネット上でたくさん公開されているゲームの中から、編集部がピックアップした作品を毎週紹介していく。今回は、ハイスピードロボットアクションシューティングゲーム「アスタブリード(Astebreed)」をご紹介する。

 本作は同人ゲームとして頒布されており、執筆時現在は委託販売店や通販で購入可能。ダウンロード配信サイト“PLAYISM”でも販売されている。また、公式サイトでは体験版をダウンロード可能だ。

ブレードとロックオン攻撃による圧倒的な爽快感

スクロール方向は、縦・横・奥行型と動的に変化する

 「アスタブリード」は、ロボットを操って戦うアクションシューティングゲーム。攻撃はワイドとフロントという2種類のショットに、ブレードを使った近接攻撃の3つ。さらにショットはボタンを押したままにすることで敵をロックオンし、ボタンを離すと機体の周囲にある光点“ルーキス”で敵を一斉攻撃可能。“ルーキス”は数十個あり、一度に多数の敵をロックオンして一気に撃墜したり、装甲の堅い敵に集中して攻撃を仕掛けたりできる。

 ブレードは近距離にいる敵に大ダメージを与えられる。ブレード攻撃を連打すると、機体の周囲に高速でブレードを振り回す連続攻撃も可能。基本的に敵との接触ではダメージを受けないため、密着しての連続攻撃がかなり強力だ。

 敵の攻撃は大きく分けて3種類あり、紫、黄、赤で色分けされている。紫の敵弾は、こちらのショットやブレードで相殺可能。黄の敵弾はショットとは干渉しないが、ブレードで打ち消せる。赤の敵弾は相殺できない。

 本作では序盤からかなり多数の敵が出現し、それをロックオン攻撃で一掃したり、敵弾の中をブレードで切り抜けつつ敵に大ダメージを与えるという、派手な戦いが繰り広げられる。スピード感はかなりのもので、最初は目がついていかないほどだが、“何となくロックオンしたりブレードを振ったりしていると敵が全滅する”というお手軽な爽快感がある。

 自機はロボットでかなり大きいが、当たり判定は見た目よりかなり小さい。また機体にはシールドゲージがあり、これがゼロにならなければ撃墜されない。さらに敵の攻撃は少々食らっても、数秒間攻撃を受けなければ徐々にシールドゲージが回復する。必死に弾除けするタイプのシューティングではなく、少々アバウトでも敵をガンガン倒せるところが売りの作品だ。

多数の敵をロックオンして一気に片づける
群がる敵や弾はブレードで叩き斬る
ものすごい数の敵に囲まれることもあるが、意外と簡単に対応できる
赤い敵弾だけは相殺できないが、少々当たっても何とかなる

緻密な戦術や発想力が求められる奥深さも

ボスなどの堅い敵には、フロントショットのロックオンが重宝する
ロックオンに頼らず、ショットを使った方が楽な場面も

 お手軽に爽快なところは本作最大の魅力だが、シューティングやアクションゲームのファンを納得させる仕掛けも用意されている。難易度は3段階あり、2段階目のNORMALでも後半のステージはなかなかの歯ごたえ。HARDになると弾幕が激しくなるのに加え、ダメージ回復量に制限がかかるため、アバウトな操作では途端に手詰まりしてしまう。ただしコンティニュー回数に制限はないので、ステージ内にいくつか用意されたチェックポイントから何度でもトライ可能。

 操作面でもいくつかのテクニックがある。まずロックオン攻撃は、ワイドショットを押したままにすると、自機を中心として円形の範囲がロックオンされる。群がる雑魚を一掃したい時には効果的だ。フロントショットを押したままにした場合は、近くの敵に向けて直線的にロックオン範囲が広がる。ワイドショットのロックオンよりも重複ロックオンが早く進むため、ボスなどの堅い敵を狙う際には重宝する。移動しながらフロントショットでロックオンした場合は、その方向にロックオン範囲が広がる。

 ブレードでは、方向ボタンを押しながらブレードを出すことで、その方向に突進攻撃を仕掛けることが可能。敵に与えるダメージも大きく、雑魚は大抵一撃で沈められる。さらに突進中は無敵状態で高速移動するため、敵や弾に囲まれた際の緊急移動としても使える。

 このほかの攻撃方法として、EXアタックがある。機体の下部に出る黄色いゲージが満タンになると発動できるもので、自機の周囲の敵や弾を一掃可能。また敵をロックオンした状態で発動させると、ロックオンした全ての敵にブレード攻撃を連続で仕掛けられる。さらに1体の敵に全てのロックオンを集中した状態で発動させると、その敵にブレード攻撃を集中して繰り返し大ダメージを与えることが可能だ。EXアタックのゲージは時間経過で回復するほか、敵弾をブレードで相殺することでも溜まる。

ブレードの突進は移動にも使える。ただし敵弾に突っ込まないよう注意
通常のEXアタックは赤い敵弾も相殺できるので、危険な時に使うのがベター

 これらのテクニックを駆使してステージをクリアするのが最初の目標となる。後半のステージではボスがかなり強力で、NORMALでも初見で倒すのは至難の業。筆者も1体のボスを倒すだけで数十回コンティニューを繰り返したこともあった。一見、どうやっても倒せないような強烈なボスも、特定の攻撃を活用することで一気に突破口が開ける場面が多く、一種の謎解き気分で攻略法を見つける手探り感がある。

 スコアランキングはオンラインにも対応し、他のプレイヤーとスコアを競える。またプレイ中に特定の条件を満たすことで得られる実績要素も数十種類用意されているので、プレイ中に色々なことを試してみるのも楽しみのひとつだ。

一部のボスは攻略法を見つけないと詰まってしまう
スコアランキングはオンライン対応。他のプレイヤーのプレイデータも参照できる

細部まで練られた設定が生み出す重厚な世界観

フィオが“アーセントート”とともにファイルーンの手から脱したことで、物語が動き出す

 シューティングゲームとしての面白さもさることながら、本作は世界観やストーリーも秀逸だ。筆者はゲームが面白ければ世界観にはこだわらないタイプなのだが、本作では珍しく世界観も気に入っている。ゲーム中にはイラストをふんだんに使ったシナリオパートも組み込まれているし、ステージの途中もキャラクター同士の掛け合いがしょっちゅう見られる。セリフはフルボイスで、プレイ中はドラマチックな演出が満載だ。

 ストーリーは、火星やスペースコロニーを含む地球圏と、それを侵略する異星文明“ファイルーン”の争いが繰り広げられるSFもの。ファイルーンに拉致され、現実改竄装置“ルーキス”の試験運用機“アーセントート”に組み込まれた少女フィオが、機体とともにファイルーンの元から脱出。“アーセントート”に人類の技術を組み合わせて完成させた機動兵器“クロスブリード”に、主人公の少年ロイが乗り込む。

 フィオには双子の姉であるエストがおり、フィオは姉を助け出すためロイとともに戦う。エストとの再会、そしてタイトルでもある“アスタブリード”とは……。戦いの中で、いくつものドラマが展開される。

一部のステージの合間には、シナリオパートも挿入される。シューティングゲームの割にはなかなかのボリュームがある
プレイ中もキャラクター達がたびたび会話する。フルボイスでかなり賑やか

 ファイルーンは“ルーキス”を生み出すことを渇望しているが、それには知的生命体が必要であり、機械だけの文明となってしまったファイルーンにはそれが不可能……といった細かい設定もある。ゲームをプレイしているだけだと、会話がいまひとつ理解できない場面も多いのだが、ゲームクリア後に開放されるデータベースで世界観や人物設定などを参照可能。一通りプレイした後に一読し、再度プレイするとなかなか趣深い。

 データベースは他にも、敵機を含む登場機体の3Dモデルを鑑賞する機能も搭載。世界観をたっぷり堪能できる。

世界観の解説や、登場機体のモデルデータなどを参照するデータベースも充実している

一目でわかる完成度の高さと、それを裏切らない面白さ

巨大な敵をカメラワークでより強大に見せる演出も素晴らしい

 長々と語ってきたが、本作についてはまず体験版をプレイしていただくのが一番手っ取り早い。3Dグラフィックスで描かれたビジュアルはとても精細で、演出やUIを含めて相当な作り込みが感じられる。画面を見ているだけで、並のゲームではないことはわかっていただけるはずだ。

 ゲームシーンでも3D表現をうまく使っており、スクロール方向が縦・横、さらには画面奥に進むタイプへと動的に変化する。ゲーム的な面白さに加え、ビジュアル的な演出効果もあり、ゲームへの没入感はシューティングゲームとしてはかなり強い。先述のストーリーやセリフによる演出も、ゲームシーンの印象をうまく高めてくれている。

 ゲーム全体における圧倒的なクオリティの高さと、ブレードやロックオンを組み合わせた独自のテイストは、これまで遊んだことがない手ごたえを感じさせてくれた。シューティングゲームファンは弾幕好きや爽快感重視などタイプが分かれると思うが、本作はそんなことを気にせず、『いいから黙って遊んでみろ!』と言いたくなる逸品だ。

ゲーム内容だけでなく、ビジュアル面も一級品。隙のない作品に仕上がっている

ソフトウェア情報

「アスタブリード」
【著作権者】
えーでるわいす
【対応OS】
Windows XP/Vista/7/8(編集部にてWindows 8.1で動作確認)
【ソフト種別】
ダウンロード販売 2,000円(税込み)など(体験版あり)
【バージョン】
1.15

(石田 賀津男)