週末ゲーム

第560回

瘴気に飲まれた廃墟へ挑むランダムダンジョンRPG「積層グレイブローバー」

探索スキルや売買交渉でトレジャーハントの楽しさを演出、“墓荒らし”達による濃厚なドラマも見所

 『週末ゲーム』では、インターネット上でたくさん公開されているゲームの中から、編集部がピックアップした作品を毎週紹介していく。今回は、ランダムダンジョン探索RPG「積層グレイブローバー」を紹介しよう。

瘴気に飲まれた廃墟へ挑む“墓荒らし”達のドラマを描いたトレジャーハントRPG

大地が瘴気に沈んだ世界で、生き残った人類が集う“積層都市バベル”が舞台
主人公のテトラ。半分に割れたロザリオを首から提げた正体不明の少女だ

 「積層グレイブローバー」は、行きすぎた魔法文明により大地が瘴気に沈んだ世界で、生き残った人類が集う“積層都市バベル”を舞台にしたダンジョン探索RPG。身分によって上層、下層に分かれたバベルのさらに底、瘴気に飲まれた廃棄区画“グレイブヤード”から遺された金品を命がけで盗掘する“墓荒らし”達のドラマが繰り広げられる。

 主人公は、ある目的のためグレイブヤードに潜っていく新米墓荒らしの少女“テトラ”。下層のスラムを拠点に、他の墓荒らし達と最大3人のパーティを組んでモンスターや仕掛けで溢れるグレイブヤードに挑んでいく。

 スラムに集う墓荒らしは皆、訳ありで癖のある人物ばかり。最初は仲間にできる人物も少ないが、テトラが墓荒らしとして成長していくにつれ徐々に周囲から認められていき、戦闘スタイルにも個性のある墓荒らし達と自由にパーティを組めるようになっていくのも本作の楽しみだ。

テトラが最初に出会う墓荒らし“エフセイ”。状態異常攻撃のエキスパートで、序盤から頼れる先輩としてパーティインしてくれる
フードをかぶった謎の墓荒らし。ベテランだが馴れ合いを嫌い、仲間に誘っても断られてしまう

 ゲームの基本的な流れは、ランダムに生成されるトップビューのダンジョンを下層へと探索していきながら、宝箱より装備品や金目の物を得てキャラクターを強化し、さらにダンジョンの下層へ進むことでストーリーが進行していくというランダムダンジョンRPGとしてオーソドックスなもの。

 しかしこれに加えてアイテム所持数の制限や探索ごとのレベルリセット、鍵開け、罠解除といった探索スキルによる成否判定、盗掘品を交渉で売り捌く“ディール”といったローグライクRPGやテーブルトークRPG的な要素を盛り込み、“トレジャーハントの楽しさ”を打ち出しているのが特徴だ。

レベル上げ戦闘の必要なし! お金を稼ぎ、装備とドーピングで強くなれ

到達した階層に応じて、ちょうどいいレベルまで上げられる“EXP成長剤”が用意されている
戦闘自体はオーソドックスなターン制コマンドバトル

 本作ではキャラクターのレベルが1回の探索ごとにリセットされる仕組みとなっており、キャラクターの強化はダンジョンで入手したり、スラムのマーケットで購入できる装備品で行う。そしてゲームを進めると途中の階層から探索が可能になるが、この際いくら装備を強化したとしても、流石にレベル1のままでは敵に歯が立たない。

 そこで探索の際に必須となるのが、スラムで売られている消費アイテム“EXP成長剤”だ。これを使うとレベルアップした状態で探索を開始できるが、探索で成果が出ず、稼いだお金がEXP成長剤の購入費を下回ったら赤字になってしまう。1回の探索でなるべく多くの金品を盗掘してくるのが重要だ。

 しかし一方で、探索中はセーブができず、戦闘に負ければ即、ゲームオーバー。グレイブヤードからの撤退はアイテムによりどこでも行えるので、HPや回復アイテムの残りなどと相談しつつ、どこで切り上げるかの判断が求められる。『もう少し探索を続けないと赤字かも、でも今敵と遭遇したら勝てなくて1時間かけた探索がパーになるかも……』といった状況での緊張感はなかなかのものだ。

 『生き抜くためには金がすべて、しかし死んでは元も子もない』という墓荒らし稼業の厳しさが、システム面でも演出されているわけだ。逆に言えば、ザコ戦を繰り返してレベル上げ戦闘をする必要はない……というか、意味がない。本作のプレイ時間は本編クリアまでで10時間ほどだが、その間は常に移り変わるダンジョンをはじめ全く同じシチュエーションというのはほとんどなく、濃厚なプレイ体験を得ることができるだろう。

お金と安全、どっちが大事? リソースの割り振りが探索のポイント

探索スキルのレベルと鍵や罠の難易度により、解除判定の成功率が変わってくる
探索スキルやキャラクター毎に異なる戦闘スキルはSPを割り振って取得

 ダンジョンの宝箱には鍵か罠、いずれかが必ず仕掛けられており、解除するには鍵開けや罠解除のスキルが必要。さらに、罠の種類などを調べるための調査スキルも必要となる。

 これらの探索スキルはキャラクターのレベルアップで入手できる“SP”を消費して取得する仕組みで、より多くのSPを振り分けて、スキルのレベルを上げると成功しやすくなる。ただし、スキルには戦闘用のものもあり、こちらもSPを消費して取得する仕組み。探索と戦闘のどちらを重視するか、限られたリソースを振り分ける戦略が求められる。

 また、解除は何度でも試みることができるが、鍵の解除にはピッキングツール、罠の解除にはリムービングツールを、解除の成功・失敗に関わらず消費する。ピッキングツールが尽きてしまったら、その後の探索で鍵つきの宝箱を見つけても諦めるしかない。一方、罠は食らう覚悟があればムリヤリ宝箱を開けることは可能。調査により耐えることができる罠だとわかれば、敢えて突っ込むのもありだろう。とはいえ基本的にはリスクが大きく、リムービングツールも欠かしたくないところだ。

 しかし、そのためにツールを潤沢に用意すると、アイテム所持数の制限により、今度は持ち帰れるアイテムが少なくなるというジレンマが。生き延びるための回復・攻撃アイテムの数なども含め、ここでも持ち込むアイテム数の調整という、リソース管理が重要となってくる。

 また、本作はシンボルエンカウントで敵シンボルはダンジョン内を徘徊しているが、オートマッピングされるマップ上ではレーダーのように敵の位置も表示してくれる。前述の通りザコ戦に大したメリットはないので、入り組んだダンジョンの構造を駆使して敵から逃げつつ探索を進めるのもテクニックだ。しかし立ち回りをミスすると一本道の前後を敵に挟まれてしまうなど、これも探索をスリリングにする要素となっている。

盗掘品を売り捌く“ディール”では、相手に合わせた交渉が重要

 こうして無事持ち帰った盗掘品をお金に換えるのが、他の墓荒らしを相手に行う売買交渉“ディール”だ。取引所で盗掘品を出品すると墓荒らしの誰かが買いに来るので、各盗掘品に設定された基準価格から釣り上げる形で価格を提示する。当然、相手がその価格で気に入らなければ値下げ価格を提示してくる。

 数値で表された、相手の商品への興味が尽きる前にどちらかが折れれば交渉成立。交渉が成立しても不成立でも基準価格の10%を手数料として取られるので、1回のディールで、なるべく高い値段で交渉を成立させるのが重要だ。

 ポイントは、相手によって興味の初期値や減り方、どの程度の高値を許容するか、強気・対等・下出という3つの交渉態度への反応などに違いがあること。ディールを繰り返すうちに相手の癖を掴んでいけば、より有利に交渉を進められるようになるのが楽しいところだ。

盗掘品を出品して売り捌くディール。こちらの思惑にピタリとはまると得した気分になるが、粘りすぎると交渉決裂も……

さまざまな仕掛けを越えた先では、強大なモンスターとの全力バトル!

“王”との戦いは熾烈。対策を取らずに勝つのは難しい

 グレイブヤードの階層を下へ下へと降りていくと、床から棘が突き出たり、マップ上に敵が表示されなくなるなど、次々と新たな仕掛けが登場し慎重な探索が求められるようになる。そして一定の階層ごとには、“王”の名を冠する強大なモンスターが
墓荒らし達の前に立ち塞がる。

 “王”はただ強いだけでなく行動パターンに特徴があり、状態異常を与えるスキルなどを駆使した戦術が重要。各“王”への対策情報はスラムで聞くことができ、“王”の撃破を目指す探索では、パーティメンバーの選定もポイントとなってくる。

 探索中はSPを探索スキルと戦闘スキルに振り分けたり、限られたアイテム所持数をツールと戦闘用アイテムに振り分けたりとバランスが求められるが、“王”との戦いの前にはSPの再振り分けが可能なほか、拠点の棚に預けたアイテムを取り出すことが可能。キャラクターごとに異なる戦闘スキルや、アイテムを駆使した全力でのバトルを存分に堪能できる。

スラムで起きる事件と、かつて少女達が交わした約束が交差していくシナリオも見所

墓荒らし同士は仲間でもあり、商売敵でもあり。思惑やポリシーが衝突すれば緊迫した場面になることも
回想シーンでは、少女二人の出逢いと約束が描かれる

 “王”を倒し、グレイブヤードを潜っていくにつれてシナリオも進行し、スラムではきな臭い事件も発生。墓荒らし達はテトラも含め正体不明、かつそれぞれ独自の価値観や矜持をもつ連中ばかりで、丁々発止、一触即発のやり取りが物語的にもスリリングだ。

 一方で、物語の節目にはとある少女二人の交流を描いた回想シーンも挟まれ、テトラの目的が少しずつ明らかになっていく。“かつて少女達が交わした約束”が、墓荒らしという裏稼業に身を投じた現在のテトラとどう関わってくるのか。スラムで起きる事件と過去の因縁、これらが収束していく終盤は疾走感のある熱い展開で、本作の大きな見所となっている。

 本作はRPGツクール製で、ターン制の戦闘システムなど大枠ではツクールの機能に準じた作りだが、ディール時のカットインなどオリジナルのイラストを駆使した演出、オリジナルを含むお洒落なBGMなどで独特の雰囲気を醸し出しており、全体的な完成度の高さも光る作品だ。ランダムダンジョンRPGが好きな人、とくにチマチマとレベル上げするよりお宝をどんどんゲットしていくのが好き!という人へ強くお勧めしたい。

お金を貯めて拠点に設備を増やすなど、やり込みが楽しくなる要素も。酒棚を設置するとステータスアップや各種耐性などの効果をもつカクテルを作成できるようになる

ソフトウェア情報

「積層グレイブローバー」
【著作権者】
てりやきトマト
【対応OS】
(編集部にてWindows 7/8.1で動作確認)
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.11(14/05/08)

(中村 友次郎)