週末ゲーム
第589回
弾に当たってもOK?な弾幕シューティング「SightSenmaike」
ボスと戦って“旬”を集める、郷土愛から生まれた一作
(2015/2/27 13:59)
『週末ゲーム』では、インターネット上でたくさん公開されているゲームの中から、編集部がピックアップした作品を毎週紹介していく。今回は、シューティングゲーム「SightSenmaike(サイト・センマイケ)」をご紹介する。
本作はパッケージ版がイベントや委託ショップで販売されている同人ゲームで、販売価格は1,542円(税込み)など。ステージ2までプレイできる体験版も公開されている。
攻撃を何度受けても大丈夫な弾幕シューティング
「SightSenmaike」は、豊かな水と緑に囲まれた街“千枚華(せんまいけ)”を舞台にした横スクロールシューティングゲーム。人と精霊が共存する世界で、精霊の生きる源である“幻視の光”を宿した懐中電灯を持つ“布瀬映実”が、幻視の光に溢れる千枚華の夜景へと飛び立つ。
ゲームのジャンルとしては弾幕シューティングだが、いくつか変わった部分がある。まず残機やライフといった概念はなく、代わりに“ポジティブ度”が存在する。画面上部に表示されるポジティブ度は、敵が登場してから時間が経たないうちに倒す(“鮮度”が高いうちに倒す)などで上昇するが、敵や敵弾に接触すると半減する。ただ0になることはないので、ダメージを受け続けても即座にゲームオーバーとはならない。
しかしステージの途中にあるチェックポイントを通過する際、ポジティブ度が指定された値よりも低いとゲームオーバーになる。チェックポイントから遠い時には何度ダメージを受けても構わないので、弾幕シューティングが苦手という人でも気楽に楽しめる。
シューティングが得意な人は、きっちり避けつつ敵を倒せば、ポジティブ度がどんどん上がって、チェックポイントも楽に通過できる。ただし、ポジティブ度が2、4、8と上がるごとに、敵の弾が増える。その代わりにポジティブ度が高いほど得点も高くなるという仕掛けになっている。
なおゲームモードで“EXPERT”を選ぶと、ポジティブ度が設定された目標値を下回った瞬間にゲームオーバーになる。通常モードの“ORIGINAL”と比べて急激に難易度が上がるので、腕に自信のある人向けのモードとなっている。
懐中電灯を照らして“旬”を集めよう
攻撃は大きく分けて、通常のショットと、懐中電灯を使った溜め攻撃の2種類がある。通常のショットは広めに拡散するものと、低速移動時の前方集中型の2つを使い分けることが可能。
懐中電灯を使った溜め攻撃は、チャージボタンを一定時間押してから離すと、前方に向けて広範囲に広がる“チャージフラッシュ”が発動するというもの。使用すると画面左上にある電池ゲージを少量消費するが、攻撃範囲内にいる敵に大ダメージを与えられる。また敵を倒した時に出る電池残量を回復するアイテムが、チャージフラッシュで倒した際は自動的に回収される。
チャージフラッシュは雑魚を一撃で撃破できる強力な攻撃力があるが、溜めている最中から発動後しばらくは通常攻撃ができなくなる。また敵弾を消す効果はなく、発動後は短時間ながら移動速度が遅くなる。多くの敵を巻き込めれば発動で消費した電池を回収することも可能だが、敵の弾幕に飲み込まれて回避不能な状態にもなりやすい。
加えて、チャージフラッシュにはもう1つ使い道がある。ボス戦では、ボスがときおり“旬”と呼ばれる状態になり、苛烈な攻撃を仕掛けてくる。さらにボスの周囲にはバリアが発生し、通常攻撃が跳ね返される。この時、ボスにチャージフラッシュを当てるとバリアを打ち消せる上、ポジティブ度が大幅に増えるなどのボーナスが得られる。
“旬”はチャージフラッシュを当てなくても、その攻撃が終了するとバリアとともに消えるので、通常攻撃だけで倒せないというわけではない。ボスの“旬”の中には僅かな間だけバリアが発生するものもあるので、ボスの挙動を覚えてタイミングよくチャージフラッシュを当てるのが攻略のコツだ。
また“旬”状態時にチャージフラッシュを当てると、タイトルメニューにある“旬の見どころ”にコレクションされる。チャージフラッシュを当てていない“旬”は名前が隠された状態だが発生条件は書かれているので、その情報をもとにしてすべての“旬”を集めるのが本作のやり込み要素だ。発動条件に非常に高いポジティブ度を維持することが求められるものもあるので、簡単にはいかない。
一度到達したステージは自動で記録され、その後は好みのステージを選択してそこからリスタートできるので、ゲームオーバーになっても最初のステージからやり直す必要はない。1ステージ内にチェックポイントは3つほどで、ステージ自体もそう長くはないので、リトライしやすい設計になっている。
お手軽でありつつやり込みもあり
攻撃には他に、電池を1本(50%分)消費して発動する“オーバーロード”がある。チャージフラッシュの全範囲版といった代物で、敵だけでなく弾も消せる上、無敵時間まで発生する。任意に発動できるほか、電池が2本満タンの時に敵弾に当たると、自動的に発動する。
オーバーロードはいわゆるボム的な存在だが、電池を50%使用することから最大でも2連射しかできない。また、チャージフラッシュにも電池を消費することを考えると、実質1回限りか、あるいは1回も撃てないことも多い。他に緊急回避手段はないので、電池の使いどころが攻略の鍵になっている。
プレイしていて1つ気になるのは、電池を回復するアイテムと一部の敵弾の色がどちらも黄色と同じ色になっている点だ。形は違うのだが、“黄色は避けなくていい”というイメージの刷り込みができるせいで、どうにも回避がしづらい。弾幕シューティングとしては、ここだけは惜しいなと思う。
ゲームの手触りとしては、最初はダメージを受けてもいいから何も考えずにプレイできる間口の広さがいい。そのうちにチェックポイントでポジティブ度が足りずゲームオーバーになるが、リトライも簡単なので気にならない。それでも詰まったら、敵の出現位置やボスのパターンを覚えて、チャージフラッシュとオーバーロードの使いどころを考えながら進んでいく。その先はスコアアタックと“旬”集めだ。
最初から最後まで、うまくプレイヤーの修練とやり込みが繋がっていくのが上手い。終盤のステージはかなりハードなのだが、残機がなくなって最初からやり直しということもないので、リトライがさほど苦にならない。毎日少しずつ攻略なりハイスコアなりを目指して遊べるのが嬉しい設計だ。
地域愛から生まれたシューティングゲーム
最後に少し話を変えて。本作はシューティングゲームとしても十分に面白いのだが、気になるのはタイトルだ。「SightSenmaike」という名前は英語と日本語を混ぜたようだが、意味がわかるでもなし……。では“Senmaike”とは何なのか?
ゲームの世界設定では先述の通り、『日本のどこかにある一地域、千枚華(せんまいけ)』とされている。ネットで検索してみると、“千枚華”という文字では見つからないが、“せんまいけ”は富山弁で“~しませんか”や“~しましょうよ”といった意味だそうだ。
それを踏まえてゲームを見ていると、さまざまな部分に富山に関するものが織り込まれている。会話シーンに出てくる単語はもちろん、背景が五箇山の合掌造りだったり、BGMが“こきりこ節”のアレンジだったり、ボスの頭にチューリップが生えていたりと、富山ゆかりの名所・名品とおぼしきものがあちこちに見える。
“Sight”は視力や視覚といった意味のほか、風景や観光といった意味合いも持つ。主人公がボスの精霊から“旬”を集めるというのも、精霊を富山の各地にある旬のものに見立てて、それらを集めて回っているという意味だろうか。そう言えば、説明にある『敵の鮮度が高いうちに倒す』というのも違和感のある話だったが、富山といえば新鮮という意味の言葉“きときと”が有名だ。
富山といえば、北陸新幹線の開通も間近に控え、関東からのアクセスも良好になる。本作をプレイして富山に興味を持ったら、『富山観光せんまいけ?』というのが作者が本作に込めたテーマ……でいいのだろうか。筆者は北陸に住んでいたことがあるのだが、同い年の富山の人の言葉が全く理解できなかったことを思い出した。そんな不思議な土地の富山(と言っては失礼か)に、本作を通して興味を持っていただければと思う。
ソフトウェア情報
- 「SightSenmaike」
- 【著作権者】
- Northern Mind
- 【対応OS】
- Windows XP/Vista/7/8(編集部にてWindows 8.1で動作確認)
- 【ソフト種別】
- パッケージ販売 1,542円(税込み)など(体験版あり)
- 【バージョン】
- 1.10(14/12/28)