【第441回】
ダンジョン探索RPG「テール島の迷宮」
剣か魔法か? 自由度の高いキャラ育成が楽しいRPG
(11/02/18)
『週末ゲーム』では、インターネット上でたくさん公開されているゲームのなかから、選び抜いた良作を毎週紹介していく。今回は、自由度の高い成長システムや多彩なスキルが用意され、キャラクターの育成がとても楽しいRPG「テール島の迷宮」を紹介しよう。
父からの手紙が主人公たちを洞窟へと誘う
「テール島の迷宮」は、2D見下ろし画面のフィールド探索型RPG。“テール島”を舞台に洞窟や草原、雪山などのダンジョンを探索していくシンプルなゲーム展開ながら、剣、斧、杖といった武器ごとに用意された多彩なスキルや、どの能力を伸ばしていくのか自由に決められる成長システム、さまざまな効果をもつ装備品などによって、キャラクター育成をじっくりと楽しめるRPGに仕上がってる。プレイする人によって、育て方や戦闘スタイルが大きく変わるのが実に面白い作品だ。また、暖かみのあるアナログ絵画調のグラフィックや緻密に描き込まれたモンスターデザインも、プレイヤーをゲームの世界に引き込む大きな魅力となっている。
なお、本作は同人ソフトで、製品版は委託販売店や通販などで購入できる。詳細はサークルの公式サイトで確認してほしい。公式サイトでは製品版にセーブデータを引き継げる体験版もダウンロード可能。体験版ではゲームの中盤までプレイでき、特徴的な成長システムや戦闘を存分に体験できる。
主人公となるのは、魔法使いの少女“ロゼッタ・ロシュフォール”と、ロゼッタの従者で元騎士のクリスこと“クリストファー・マクブライド”の2人。物語は、行方不明になっていたロゼッタの父から届いた“テール島の洞窟の最深部に行ってほしい”という手紙に導かれ、2人がテール島に向かうところから始まる。
テール島では、薬草の採集やモンスターの討伐といった依頼をこなし、共に戦ってくれる仲間を増やしながら、洞窟の最深部を目指すことになる。最初に行けるダンジョンは洞窟だけだが、ゲームの進行に応じて草原や雪山など行ける場所が増えていく。ダンジョンは入るたびに構造や宝箱の配置がランダムに変化する仕組みで、各ダンジョンの宝箱から出てくるアイテムの種類は決まっているものの、宝箱の配置や中身は毎回入れ替わる。キャラクターを育てるためには地味に戦闘を繰り返して経験値を稼ぐ必要があるものの、ダンジョンの内容が固定されていないため、毎回新鮮な気持ちで探索できるのがうれしいところだ。
戦闘は、ダンジョンを進んでいるとランダムに開始される方式。戦闘システムはコマンド選択型だが、一度に全キャラクターのコマンドを入力するのではなく、順番が回ってきたキャラクターの行動を順次選択するタイプ。行動順は敵・味方ともに画面右上へ表示される。このとき、行動順がステータスのひとつである“WP”で決まるのが本作の戦闘のポイント。WPはキャラクターごとに異なるが、装備品の重さでも変化する仕組みで、たとえば非常に強力な武器や防具を装備しても、重すぎると全然順番が回ってこないため戦闘であまり活躍できなくなってしまう。スピードを重視するか、攻撃力や防御力を重視するか悩むのも本作の楽しみだ。
パーティのHPが全員ゼロになるとゲームオーバーとなって、拠点となる町に戻されてしまう。しかし所持金が減ったり、入手したアイテムがなくなるといったペナルティは一切ないため、全滅することをあまり恐れる必要はない。ただし、ゲームが進むとロゼッタとクリス以外に最大2人までの仲間をパーティに入れられるが、それには雇用費が必要となる。ゲームオーバーになると雇った仲間とは強制的に別れてしまうため、ダンジョンに入っていきなり全滅すると雇い損となる点は気をつけたい。
育て方は千差万別! 戦士か魔法使いかバランス型か
キャラクター育成時のポイントは、レベルアップで上昇する攻撃力や防御力といったキャラクターごとの基本パラメーターのほかに、4種類のサブパラメーターが用意されていること。サブパラメーターには物理攻撃力に影響する“STR”、HPと物理防御力に影響する“VIT”、魔法の攻撃力と防御力に影響する“MAG”、物理と一部魔法攻撃の命中率、スキルや魔法の追加効果の発生率に影響する“DEX”があり、レベルアップ時にどの数値を上げるかをプレイヤーが決められる。戦士に仕上げたいならSTRとVITを中心に、魔法にこだわるならMAGにと、キャラクターの方向性を自分で決定できるワケだ。
そして、武器の系統ごとに用意されている熟練度も、キャラクターの育成では重要となる。武器の系統は、剣、斧、杖、鞭、弓、拳の6種類があり、それぞれに該当する武器を使い続けると熟練度が上昇。熟練度のレベルが上がると“SP”を取得でき、それを使って当該武器の特殊なスキルを覚えられる。たとえば剣では、連続して敵を斬り、大ダメージを与える“連続斬り”を覚えられるといった具合だ。ただし、スキルはHPを消費して発動する仕組みで、強力なスキルほど多くのHPを消費する。乱用はピンチを招いてしまうので、回復アイテムの所持状況なども考えて使いたい。
また、魔法は“魔術書”を防具として装備することで使えるようになる仕組みで、火の魔術書を装備すれば“ファイアボール”を使えるようになるといった具合だ。本作ではさまざまなタイプの防具を3つまで装備できるため、魔術書を3つ装備して多くの魔法を使えるようにすることも可能だが、この場合は防御が手薄になるなどバランスが難しい。魔法の発動にはMPを消費するほか、詠唱を開始してから発動まで時間が必要となる。魔法も武器同様熟練度があり、熟練度のレベルがアップすると最大MPが増加し詠唱時間が短縮される。
このほか防具には、鎧や盾といったオーソドックスなもののほか、毒や睡眠といった状態異常を防いだり特殊効果をもつ装飾品もあるため、どう組み合わせるのがベストなのか悩むのもまた楽しいところ。たとえば、攻撃力や防御力の高い武器・防具はどうしてもWPが増えて行動順が遅くなるが、戦闘開始時に誰よりも速く動ける装飾品“先制の爪”を装備させてカバーするなど、うまく装備を組み合わせれば弱点をカバーできる。
このほか、ストーリーが進むと複数のアイテムを組み合わせて別のアイテムを作る“合成”が可能になったり、雇える仲間が増えたりと、プレイスタイルの幅を広げる要素がどんどん増えていく。また、敵は全体的に強く、相手の攻撃方法を把握しておかないとレベルが高くてもザコ戦で全滅……といったことも珍しくない。敵はボスも含め一度でも出会うと倒さなくても“モンスター図鑑”に記録され、攻撃の種類や各種パラメーターを確認可能となる。これを利用して、敵の特性についてはしっかりと覚えておきたい。
魅力的なキャラクターたちが織りなすストーリーも見どころ
ここまでキャラクターの育成を中心に紹介してきたが、ロゼッタとクリスがテール島の人たちと徐々に打ち解けていく展開や、ロゼッタの父がなぜ手紙を送ったのかといった謎が少しずつ見えてくるストーリーも見どころ。ロゼッタとクリスのほのぼのとしたやりとりも微笑ましい。
とはいえ、キャラクター育成の自由度が高く、プレイスタイルが人によって全然異なるのが大きな魅力であるのは確か。筆者は攻撃が必ず当たる武器と行動順を早くする装飾品を活用し、速攻で物理攻撃をたたみ掛けるスタイルでクリアしたが、本連載の担当編集は魔法ばかり使っていたという。中級以上の魔法は必ず敵に当たるので、詠唱時間が必要なのを差し引いても便利であることは間違いない。プレイスタイルに正解はないので、自分好みの戦い方を見つけてほしい。
なお本作は、昨年末のリリース以降も何度かバージョンアップが行われており、アップデートパッチを適用することで不具合修正やバランス調整のほか、クリア後のダンジョンが追加され、さらなる強敵と戦えるようになっている。キャラクターの育成が好きな人なら、ぜひプレイしてみてほしいRPGだ。
「テール島の迷宮」体験版
- 【著作権者】
- monochrome monaural
- 【対応OS】
- Windows 98/Me/2000/XP/Vista
- 【ソフト種別】
- 体験版
- 【バージョン】
- 3.3(11/02/01)