【第478回】
思考プログラミング型バトルゲーム「ランナーズ・エクリプス」
多彩な発動条件とコマンドを組み合わせ、敵に打ち勝つ戦闘パターンを構築しよう
(12/03/16)
『週末ゲーム』では、インターネット上でたくさん公開されているゲームのなかから、編集部がピックアップした作品を毎週紹介していく。今回は、思考ルーチンを自分で構築してバトル勝利を目指す戦略性の高いゲーム「ランナーズ・エクリプス」を紹介しよう。
思考をプログラムして勝利を目指すターン制バトル
「ランナーズ・エクリプス」は、遊び手の観察力と構築力を試す戦略性の高いゲームだ。プレイヤーはとある目的のため巨大なネットワークシステムに侵入した“アバター”(電脳体)。異分子を排除しようとするセキュリティシステム“ICE”との激闘を繰り返すという筋書きでゲームが進んでいく。
次々に到来する“ICE”との戦闘は、人間の時間尺度では瞬時に終わるほど速い。そのため、プレイヤーにできることは、あらかじめ思考ルーチンを組んでおいてからバトルに突入し、ターン毎の経過を眺めることだけだ。相手に勝てる思考ルーチンを組めたなら必ず勝ち、そうでないなら必ず負けるという、ランダム性が完全に排除された詰将棋のようなゲームになっているのが大きな特徴だ。
ゲームのメインとなる戦闘画面は、上部と下部に敵と自分のステータスやコマンドが表示され、その間に戦闘の経過が表示されるという構成。ターン制の戦闘は、“起動条件”と“コマンド”で構成された“アクション”を複数設定し、そのいずれかが発動することで進んでいく。
たとえば“いつでも”+“猟犬(相手のLIFEにダメージ)”というアクションを設定すると、とくにほかの条件がなければターン毎にダメージを与える。これに加えて“自分のLIFEが50%以下で”+“自己再構成(LIFE回復)”というアクションを設定しておけば、自分のLIFE低下を条件として回復を行なうようになる。同時に設定できる“アクション”は6つまでで、全体としてひとつの思考ルーチンを構成するわけだ。
“起動条件”と“コマンド”にはたくさんの種類が用意されており、戦闘に勝つためには、同様のシステムで構築されている“ICE”の思考ルーチンのストロングポイントを打ち消しつつ、ウィークポイントを突く必要がある。戦闘に負けてもすぐ同じ相手に再チャレンジできるので、戦闘の経過をよく観察して対策を構築するのが本作のプレイスタイルだ。
戦闘に勝利すると経験値を獲得して、結構な頻度でレベルアップしていく。レベルアップすると、アバターの基本的な能力値であるLIFE(体力に相当)、RESOURCE(RPGでいうMPに相当)、POWER(攻撃力に相当)のいずれかを向上させられるほか、新たなコマンドを獲得できることもある。各能力値のバランスがその後の得意戦略に強く影響してくるので、長期的な視点でキャラクターをビルドしていく面白さもある。
敵の戦略を見極め、弱点を突く面白さ
ゲームが進むと、対決する“ICE”はどんどん強力になっていく。たいていはプレイヤーよりもレベルが高い上、その戦略も個性的だ。たとえば、シールドを展開して防御の体制を取り、ダメージに耐えながらPOWERを上げるコマンドを連発し、満を持して必殺の一撃を加えてくる相手。あるいは、こちらを麻痺させるコマンドで行動の自由を奪いながら、継続ダメージ系の攻撃でジワジワとLIFEを削りに来る相手、などなど。
双方が同じ戦略を取ればレベルが高い方が勝つのが道理なので、レベルの高い相手に勝つためには思考ルーチンの弱点を突くのが王道だ。たとえば、こちらを麻痺させてくる相手の思考ルーチンにLIFE回復系のアクション設定がなければ(反撃を想定していないタイプ)、こちらが麻痺している間に自動反撃でダメージを与える“自動人形”コマンドを展開し、あとは防御に徹することで逆にジワジワと削り倒せる見込みがある。
高レベルの大技一発で勝負を決めにくるタイプの相手なら、発動直後の1回だけ相手の攻撃を無効化する“ヴァニッシュ”や、こちらの防御力を上げるシールド系のコマンドが有効な対処方法になる。もちろん、それだけで倒すことはできないので、防御を固めた上で相手のLIFEやRESOURCEを着実に削り、自由を奪った上で倒すに至るアクションを組み込むことも必要だ。
このように、本作に多数用意されているコマンドには技と返し技の関係性が複雑に織り込まれていて、相手の出方に応じ、多数の選択肢のなかから有効な手を導き出すことができる。そこでプレイヤーに求められるのが観察力と構成力というわけだ。
軸とするコマンドを決めたら次のポイントは起動条件だが、これが意外と痒いところに手が届かない。たとえば“自分のPOWERが相手のLIFEを上回ったら攻撃”といった都合のいい条件は設定できず、限られた条件設定のなかからうまく特定の状況に反応する起動条件を見つける必要があるのだ。そのためにわざと、特定の状況を導き出すお膳立てのような思考ルーチンを組み込んでおく周到さを求められることもある。
そういった難しさもあるだけに、的確な思考ルーチンを組み上げることができれば、まさに戦略的な楽しさを味わえる。プレイを続けるほどに新たな発見があり、それが楽しくてついつい時間を忘れて遊んでしまうゲームだ。
練り込んだ思考ルーチンでネット上のライバルと対決!
“ICE”との対決を繰り返すシナリオモードをひと通りプレイしても、本作にはまだまだチャレンジできる要素がある。タイトル画面からいつでもアクセスできる“アリーナ”モードでは、オンライン上で本作のプレイヤーがエントリーしたアバターがレベル帯別に並べられ、プレイヤーの挑戦を待っているのだ。
基本的なコマンドしか習得していないレベル15以下のカテゴリーでも、攻撃をうまくいなしつつ力を蓄えて、どうしようもない一撃を加えてくる思考ルーチンや、反撃のしようがないほど的確に妨害アクションを組み合わせてくる思考ルーチンがあって、その奥深さに感心できる。
とはいえ最強の思考ルーチンというものはなくて、必ず弱点があるものだ。相手の基本戦略、その戦略のために必要となっている前提条件(彼我のLIFE、RESOURCE、POWERの値など)、特定のコマンドを実行する際に生じるスキなど、付け入るポイントを見つけて的確なカウンター戦略を考案しよう。相手に勝てる思考ルーチンを組めば絶対に勝てる、それが本作の醍醐味なのだ。
とはいえ自分よりもはるかに高レベル帯のアバターを相手にすると、手も足も出ないことがほとんどだ。鉄壁の防御と完璧な回復で絶対に死なない戦略をとる相手などは、攻略の糸口すら掴めない。まずは、返し技に相当する高レベルのコマンドを習得することが必要だ。そのためにも、アリーナで同レベル帯の相手を打ち破り、経験値を稼ぐという日々の戦いが始まるわけである。
というわけで本作「ランナーズ・エクリプス」は、独特のゲームシステムで骨太な戦略性を楽しめる良作だ。メインのシナリオモードだけでも休日を楽しく過ごせる充分なボリュームがあるので、是非お試しあれ。
- 【著作権者】
- アバラヤ
- 【対応OS】
- Windows 98以降
- 【ソフト種別】
- フリーソフト
- 【バージョン】
- 1.02(12/03/12)