週末ゲーム
第522回
このクオリティで無料! 驚異の2D対戦格闘ゲーム「E's Laf」
6年かけて開発された本格派がついにバージョン1.00に
(2013/5/17 10:36)
コンボ重視のイマドキな2D対戦格闘が無料配布!
2007年7月に開発が始まってからバージョンアップを重ね、今年4月、ついにバージョン1.00が公開された2D対戦格闘ゲーム「E's Laf」。同人・インディーズの対戦格闘ゲームは数多くあるが、本作はその中でも高いクオリティを見せつつ、最新版も無料で公開されているというのに、まず驚かされる。
ゲームはアークシステムワークスの「ギルティギア」シリーズを彷彿とさせる、スピード感とコンボを重視したアクションになっている。通常攻撃から必殺技への連携、また空中に打ち上げてからの追撃、それに対する受け側の受け身や反撃による瞬間的な読み合いがポイントとなる。
こういった説明をすると、最近の格闘ゲームに触れていない人にはハードルが高そうに見えると思うが、そこはきちんと考慮されている。まず立ちAボタンの攻撃がヒットすれば、その後はAボタンを連打するだけで、通常攻撃3発から必殺技、覚醒必殺技というコンボに自動でつながる“A連コンボ”が可能。またA、B、C、D、必殺技とタイミングよく続けてボタンを入力するだけでもコンボになる。最初はAボタンを連打、次はAが入ったらB、C、D、とコンボに繋げるのを意識していれば、不慣れな人でもそれなりのコンボを出すことが可能だ。
そこからは、各種の攻撃の特性を覚えて反撃したり、浮かせて空中ヒットさせるコンボの派生を見つけていくことで上達していく。システム的には色々あるが、まずはA連打だけでもコンボが出せると覚えていれば、それなりに戦えるというのが本作のいいところだ。
HDグラフィックスで描かれる多彩なコラボキャラクター
特殊操作などの難しい話は後回しにして、先にゲーム全体の紹介をしよう。本作はいくつかの同人・インディーズゲームの登場キャラクターを採用したコラボタイトルとなっている。
選べるキャラクターは現時点で12人。剣を使う正統派のキャラクターが多めだが、竜のような爪と翼をもつ少女や、ランドセルから飛び出す謎の精霊を操る女の子、下着にジャケットで顔は奇妙なマスク姿の男などかなり多彩。出典元のゲームはRPGなどジャンルの違うものがあり、一見しただけでは戦うようには見えないキャラクターもいて、コラボ作品らしいお祭り感が出ている。
元となるゲームを知らなくても大丈夫……というか、むしろ本作を入り口にコラボ元を調べるような存在になっているように思える。ただ現状では、ストーリー的な部分やキャラクター同士の絡みが一切ないのが惜しい。中にはキャラクター選択時のイラストがないものもあるので、今後のバージョンアップも楽しみにしたい。
グラフィックスは標準で1,280×720ドットに対応し、今時なワイド画面での表示となっている。解像度の高さだけでなくエフェクトも凝っていて、必殺技やコンボをしっかり盛り上げてくれる。……といった辺りは説明するより画面を見てもらう方が早い。
各キャラクターのカラーは標準で数十種類用意されており、キャラクター選択時に好きなカラーを選べる。さらにRGBを調整して自分の好みの色を作る機能も搭載している。
手軽さと奥深さを兼ね備えたバトルシステム
システム面では、前後移動とジャンプ、各種攻撃とコマンド入力による必殺技といった辺りは一般的な格闘ゲームと同じ。その上で本作には、他の格闘ゲームに比べて多彩なバトルシステムが用意されている。
最初に覚えたいのは“受身”。攻撃を受けて転んだ際、ABCのいずれかのボタンを押し続けると、転がるように起き上がって追撃を避けられる。また空中でダメージを受けた際も、ABCDのいずれかのボタンを押し続ければ体制を立て直す“空中復帰”となる。これで無駄なダメージを減らすとともに、追撃を避けてすばやく反撃に移れる。ダウンしそうなタイミングでボタンを長く押すだけでいいので、ガチャガチャ操作せず冷静に対応するのが大切。
次は“割り込み”。敵の攻撃をガードしている最中に攻撃ボタンを押しておくと、ガードが解けた瞬間に最速で攻撃を出せる。大技をガードした時には大ダメージを返せるチャンスなので、落ち着いて反撃を狙いたい。ちなみにガード中に必殺技のコマンドを入れておき、最後のボタンを長押しすることで、必殺技で反撃できる。ただし、その後に続く敵の攻撃の方が早い場合、ダメージを受ける上に“気絶値”が25%上昇(100%溜まると気絶となり一定時間操作不能)するので、大技での反撃には注意が必要だ。
この先は画面下部にあるガードゲージ(上側)とアクションゲージ(下側)を消費するテクニックとなる。攻撃が発生する前にキャンセルして別の行動に移る“直前キャンセル”、攻撃を強制的にカウンターヒットにしてコンボを伸ばす“フェイタルヒット”、通常は繋がらない必殺技から必殺技へのコンボを可能にする“Sキャンセル”、ガード時にお互いの距離を無理やり離す“ガード弾き”、ダメージ中に割り込んで無敵状態で反撃する“カウンターブースト”がある。
これらのゲージを使うテクニックは、いずれも“本来できないことを可能にするもの”なので、非常に強力だ。ただ各ゲージは有限なので、いつでも気軽に使えるわけではない。残りゲージと体力の状態を見ながら、いつ使うかを考えることになる。上級者同士では、これも駆け引きの要素となる……はず。残念ながら筆者もそこまでのレベルには達していないが、“受身”と“割り込み”に基本的なコンボを覚えれば、それなりに格好良く戦える。
本作独自のシステムは多岐に渡るので、一気に見ると面食らってしまう。ただ、1つずつ試して覚えていくと、それほど複雑というほどでもない。またゲージ消費技は、各キャラクターの技やコンボを覚えた後で使いどころが出てくるものなので、ゲームに慣れるまでは忘れていても構わないと思う。
そのほかシステム的に覚えておきたいこととしては、“ワンパターン”システムがある。これはコンボで同じ技を連続で使うと、2発目以降のダメージが下がるというもの。弱めの攻撃は連打しているだけで数発ヒットするが、コンボ数は稼げてもダメージは伸びないという仕掛けだ(A連コンボは特別に、個別の技として判定されている)。強くなりたければ連打ではなくコンボを見つけましょう……という仕掛けになっている。
コンボに関しては、長く開発されているゲームだけあって、インターネットで多数のコンボ紹介動画が公開されている。中にはバージョンアップで利用できなくなったものもありそうだが、参考になるはずだ。
未だ完成版とは言えないが、十分驚かされるクオリティ
ゲームモードは一般的なスタイルのアーケードモードと、倒した敵の数を競うサバイバルモード、コマンド入力やコンボを試せるトレーニングモード、ローカルでの2人対戦、インターネット経由の通信対戦が用意されている。通信対戦にロビー機能はなく、ホスト側が接続するポート番号を指定、クライアント側はホストのIPアドレスと指定されたポート番号を入力する仕組み。ホスト側がルーターを使っている場合は、ポートフォワード等による設定が必要になる。
全体の完成度としては満足の行くものになっているが、まだ不十分な部分も見える。一部のキャラクターイラストがない(キャラクターは選べる)のは明らかに未完成だし、初心者の頼みの綱であるA連コンボが未導入のキャラクターもいる。またバランス面では攻撃のダメージ差が極端なものが見受けられる。バージョン1.00とされ、素直に遊ぶ分には十分な内容とはいえ、完成と見るにはいささか厳しい。
そういった不満もないわけではないが、相当長い期間をかけて開発されているタイトルだけに、今後もバージョンアップを重ねてくれることだろう。事実、バランスに関してはバージョンごとに調整がかけられているし、キャラクターも少しずつ増えている。筆者としては、格闘ゲームとしてのシステムもさることながら、ごった煮感のあるキャラクターも大変気に入っているので、ぜひともストーリー面の導入を期待したい。
……などと細々注文を付けたくなるのも、本作が市販タイトルと比べたくなるくらいによくできていて、無料だから、同人だからと細部に目をつむる必要がないからだ。こうして少しずつゲームができあがっていく様子を見られるのもまた、フリーゲームのいいところだと思う。現状のみならず、この先も楽しみな作品だ。
ソフトウェア情報
- 「E's Laf」
- 【著作権者】
- Free 氏
- 【対応OS】
- Windows 2000/XP/Vista/7(編集部にてWindows 8で動作確認)
- 【ソフト種別】
- フリーソフト
- 【バージョン】
- 1.00(13/04/28)