週末ゲーム

第593回

他のおばけに憑依して戦うアクション「おばけの行進曲 10th」

広大でファンシーなおばけ世界を探検。クリアしてからがゲーム本番?

 『週末ゲーム』では、インターネット上でたくさん公開されているゲームの中から、編集部がピックアップした作品を毎週紹介していく。今回は、アクションゲーム「おばけの行進曲 10th」をご紹介する。

おばけがおばけに次々と憑依

白いおばけが主人公。ただし憑依するとその姿は見えなくなる

 「おばけの行進曲 10th」は、主人公の白いおばけが、ピンクの小さなおばけ“プティング”とともに8枚のお札を探す旅に出る、サイドビューのアクションゲーム。タイトルに“10th”とあるがシリーズ10作目ではなく、前作「おばけの行進曲」から10年経って登場した2作目となる。

 主人公はおばけらしいふんわりした動きで、左右の移動とジャンプができる。攻撃はできないが丸まって体当たりが可能で、敵として現れる他のおばけに体当たりすると、憑依して体を乗っ取れる。『おばけがおばけに憑依』と言うと変な感じもするが、それは横に置いておくとして……。

 憑依すると、そのおばけが持っている能力を使用可能。おばけの種類によって異なる攻撃を駆使して直接的に戦闘ができるようになる。また鳥のおばけは滑空、魚のおばけは水中で自由に動けるなど、特有の行動ができるものもある。ただし憑依していない時よりもジャンプ力や移動速度が落ちるおばけもいるので、憑依すれば必ず能力アップにつながるとは限らない。

 憑依した状態で敵に触れるなどしてダメージを受けると、画面左上にあるスタミナが減少する。これが0になると憑依が解けて、元の白いおばけに戻ってしまう。この状態でさらにダメージを受けると、同じく左上にあるソウルパワーが減少していき、0になるとゲームオーバーだ。

 憑依は自分で解除することも可能。憑依していれば基本的にはソウルパワーの前にスタミナが減るので、憑依を解除して他のおばけに憑依する……の繰り返しで、本体である主人公はノーダメージで進んでいける。ゲームそのものの難易度はかなり低めで、筆者の場合エンディングを見るまでにゲームオーバーになったのは数回程度だったと記憶している。

主人公が他のおばけに体当たりすると、体を乗っ取って自由に動かせる
憑依したおばけによって異なる能力を発揮できる。任意のタイミングで憑依の解除も可能

自由なゲーム進行でもストーリーがしっかり楽しめる

旅のパートナーになるプティング。フワフワ浮いているだけで手助けはしてくれない

 舞台となるフィールドは広大で、左右だけでなく上下方向にもマップの繋がりがある。ゲームをある程度進めると全体マップが見られるようになり、到達していないエリアは“?”マークで隠された状態で表示される。それ以外に、城やダンジョンなど、マップ外のエリアも複数存在する。

 全体マップの入手時には僅かなエリアしか開放されておらず、『マップ広すぎ!』と言いたくなるが、実際に遊んでみるとストレスはほとんど感じない。ゲームの難易度が控えめでサクサク進行するのに加えて、新しいフィールドへ到達するのも意外と簡単だからだ。

 たとえば、空を飛べるおばけに憑依できれば、上空へ舞い上がって上方向のマップへと移動可能。また魚のおばけで滝を昇っていったりすることで到達できるマップもある。決まったルートはなく、全体マップ入手後は自分の好きなように移動して構わない。新たなマップに到達すると、そこで新たなおばけに憑依する楽しさもあって、全体マップはどんどん埋まっていく。

 またストーリー展開もしっかりしている。主人公は最初、プティングに言われるがままお札集めを始めるのだが、徐々にプティングの正体や、お札を集める理由が明らかになっていく。さらにはおばけの世界と人間の住む世界を巻き込んだ騒動にも発展し、最後は驚きの結果を迎える。右も左もわからないところから始まるのが本作の物語の面白いところなので詳しくは書かないが、とにかくエンディングを見るまではさほど難しくはなく、ストーリー展開の勢いとともにサクサクとプレイできる。

 また本作にはサポート機能として、各地に3種類の“地蔵”が存在する。1つはセーブしてくれる地蔵で、ある程度フィールドを進むと大抵現れる。ゲームオーバーになったらセーブした地点から再開となるので、少し進んだらセーブポイントがあるのは大変ありがたい。他には、地蔵のある場所を相互に瞬間移動できるマップ地蔵、過去に憑依したことがあるおばけの中から好きなものを選んで憑依できるチェンジ地蔵がある。

 お札の前には必ずボスが待ち構えているが、もし倒されてゲームオーバーになっても、直前には必ず各種の地蔵があるのですぐリトライ可能だ。ゲームの自由さとサポートの手厚さのおかげで、最後まで快適に遊び続けられる。

マップは広くて最初は途方に暮れるほど。しかし飛んだり泳いだりできるおばけによって世界が広がる。地蔵のサポートもありがたい
ストーリーはギャグありシリアスありだが、おばけらしからぬ明るいテンションで展開される

クリア後はハードなやり込み要素が充実

Gチップを取ると、おばけに新たな能力が付与される。すべて集めるのがクリア後の目標

 先述の通り、エンディングを見るまではさほど難しくないのだが、エンディング後のオマケ要素は一転して難しくなる。ネタバレになるので詳しくは言わないが、複数のダンジョンや新たなゲームモード的なものが登場し、一発ゲームオーバーの状況が多発したり、圧倒的に強力なボスキャラクターとの戦いになったりする。結果的に、エンディングを見た後の方がプレイ時間が長くなるというのが面白い。

 それ以外にもやり込み要素が充実している。新たなおばけに憑依すると“おばけ図鑑”に登録されるのだが、憑依するのが難しいレアなおばけもいくつか存在する。また、各おばけの能力をさらに引き出す“Gチップ”が各地に落ちている。拾うと新たなアクションや能力が開放され、攻撃力もアップするのだが、落ちている場所はおぼろげなヒントしかない。場所がわかっても、入手には極めて困難な操作が求められるものもあり、すべて集めるのは至難の業だ。

 本作について最も評価したいのは、プレイの自由度の高さだ。この手のゲームだと、“特定のおばけに憑依しないと突破できない仕掛け”があちこちにあったりするものだが、本作では特定のおばけなら突破が楽ということはあっても、絶対無理という場面にはほとんど遭遇しない。プレイヤーの好みのスタイルで進められる緩さが心地いいし、その場その場で調達(憑依)したおばけをどう活用するかを考えるのもまた楽しい。

 おばけと言ってもホラーテイストではなく、ビジュアルやストーリーは全体的にコミカルにまとめられている。序盤はアクションが苦手な人でも気軽にゲーム世界を楽しめて、クリア後にはハードなやり込み要素が満載というゲームバランスは実に秀逸だ。

 筆者はさほど長時間プレイしたつもりもなかったが、セーブデータを見返すと、数日かけて合計10時間以上プレイしていた。ほとんどのやり込み要素はクリアして“ゴール”は見た(最後までプレイしていただければ、ゴールの意味することがわかる)が、いくつかのGチップは未入手だし、難易度“むずかしい”で最初からやり直すという道も残っている。毎日少しずつ遊んでも楽しそうな、ボリューム満点のアクションゲームになっている。

エンディングを見ても、ゲームが終わりだと思わないで引き続き遊んでいただきたい。物語もまだまだ続いていく

ソフトウェア情報

「おばけの行進曲 10th」
【著作権者】
sam113 氏
【対応OS】
Windows Vista/7/8(編集部にてWindows 8.1で動作確認)
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.0.0(15/03/22)

(石田 賀津男)