石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』

フニャフニャキャラ×物理演算で全年齢対象の格闘ゲーム「Gang Beasts」

子供から大人まで幅広い人が雑に遊べるアバウトさが魅力

 PCゲームに関する話題を、窓の杜らしくソフトウェアと絡め、コラム形式でお届けする連載「石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』」。PCゲームファンはもちろん、普段ゲームを遊ばない方も歓迎の気楽な読み物です。

「Gang Beasts」のタイトル画面

子供も遊べるPC向けの格闘ゲームはないのか?

 筆者は根っからの対戦ゲーマーである。他のゲームも好きだが、例えばリズムゲームをやっていると、『コンピュータの手のひらの上で遊ばされている』と感じる時がある(必ずしもそれが嫌なわけではない)。

 しかし対戦ゲームは、対戦相手によって遊び方が常に変化する。相手がいる限り、どれだけ遊んでも究極的なゲームの終わりはない。対戦相手がいなくなるか、ゲームの本質的な部分に飽きない限りは永遠に楽しめる。加えて、対戦相手とのコミュニケーションがあるのも楽しいし、多人数のチーム戦となればさらに楽しい。

 我が家の息子は7歳になって、そろそろ対戦要素があるものにも興味が出てきた。しかし対戦ゲームはCEROなどのゲームのレーティングが上がりやすい。対戦は暴力行為につながりやすいし、最近は映像も美しくなってリアリティが増した結果、より暴力性が高いと見られやすい。

 いま人気の対戦ゲームといえばNintendo Switchの「スプラトゥーン3」があるが、撃ち合う弾をインクにし、勝敗条件を撃破数とは別に置き、キャラクターをイカにして、殺伐としがちなアクションシューティングでありながらCERO A(全年齢対象)を実現した。見事な設計だ。

レーティングに着目すると実に見事なゲームだと思うが、もちろんPC版は存在しない

 ただ残念ながら「スプラトゥーン3」はPCで遊べない。PCで年齢制限なしに遊べる対戦ゲームは何かないかと探してみると、「Gang Beasts」という作品を見つけた。ベースは格闘ゲームなのだが、一目見て普通の対戦格闘ゲームではないとわかる。

ゲル状のキャラによる格闘ゲーム

フニャフニャのキャラ達が戦う

 本作の最大の特徴は、プレイヤーキャラクターがフニャフニャなところ。ゴムかゼリーか、人型をしたゲル状の何かを操作して戦うゲームである。なぜこんなキャラクターなのか、なぜ戦うのか、といった説明は一切ないので、気にしないでいこう。

 操作は、キャラクターの移動とジャンプのほか、左右独立したパンチ、キック、ヘッドバットが使える。また人や物を掴んだり、持ち上げたりもできる。ゲル状のものがぷるんぷるんとした動きなので、パンチに威力があるようには見えないのだが、ちゃんと意味はあるので安心して欲しい。

 ゲームの勝敗条件は、相手に攻撃して倒すことではなく、相手をフィールド外に落とすこと。体力ゲージなどはなく、とにかく最後までフィールドに残り続けた人が勝利となる。

相手をフィールドの外に落とせば勝ち

 相手を外に落とすには、掴んで引っ張る、あるいは持ち上げるという動きが重要になる。簡単に言えば、担ぎ上げた相手をフィールド外に落とせば勝ちになるわけだ。ただし担ぎ上げられた方も、相手を掴むことで落下を防いだり、道連れにして落としたりが可能だ。

フィールドも色々あって落とし方も変わる

 そこで重要なのがパンチなどの攻撃だ。これがうまく相手にヒットすると、気持ちのいい効果音とともに相手が倒れて動けなくなる。その隙に相手を掴んでフィールドの外に投げ捨てればいい。倒された方はボタン連打(に意味があるのかは不明……)で急いで起き上がり、落とされないよう相手にしがみつく。

 適当にパンチを連打しているだけでもそれっぽく戦えるが、相手に攻撃を当ててダウンさせることや、掴んで投げることを理解すると勝ちやすくなる。この成長の流れは格闘ゲームそのものだ。

とりあえず殴り合うのだが、殴り合っているようにすら見えない

真面目な物理演算でアバウトな仕上がり

 もう1つ重要なのは、本作は割と真面目な物理演算を採用していることだ。フニャフニャな体は物理演算で伸び縮みし、動きの勢いをそのまま伝える。

 本作には相手を掴んだり持ち上げたりという動作はあるが、実は投げるという動きはない。そのため、ただ相手を持ち上げても、そのままではその場に取り落とすだけになる。相手を抱え上げたら、歩いていってステージの端で離すと、その勢いで落とせる。

倒した相手を投げ捨てるには、物理演算の挙動を意識するといい

 他にもステージ内にある装置をうまく使って相手を飛ばしたり、動きを制限したりもできる。仕掛けの中には勝手に上下するエレベーター、プレイヤーに噛みついてくるサメ、全てのプレイヤーを空中に吹き上げる巨大ファンなどさまざまなものがあり、それらも物理演算にのっとった動きを考え、活用していく。

勝手に動くエレベーターで戦う。もちろん落ちたら負け
サメに食われたりもする。食われたことで負けにはならないが、脱出方法は不明

 他にも細かいテクニックはあるのだが、見た目のアバウトさのとおり、雑に遊んでいるうちが一番楽しいように思う。少なくとも小学生でも操作に戸惑うことはないし、見た目の残虐さもなく格闘要素を楽しめる。

 また対戦だけでなく、協力プレイも可能。CPU相手に力を合わせて勝ち抜いていくモードもあるので、慣れないうちはこちらで練習していくのもいい。CPUもなかなか賢く、協力プレイだけでもかなりやり込める分量がある。

CPU相手に協力プレイで戦える。キャラの数が増えてゴチャゴチャになる

 ともかく本作は見た目の暴力性を極力排しつつ、格闘ゲームのエッセンスを味わえるという点で、子供向けのゲームとしてよくできていると思う。ローカルでも最大4人で遊べるので、子供だけでなく大人のパーティゲームとしても十分楽しめる。

 遊んでもらえるとわかるが、まず思ったところに攻撃できない。当たったのも狙った感じにはならず、命中エフェクトも出ず(命中音はある)、当たった方はぐにゃっと倒れ込む。全体的に判定がとても理不尽で、ゲーマー的には納得がいかない。だがそのアバウトさのおかげで、子供から大人まで幅広い人が楽しめるゲームになっているのもわかる。見た目どおり、何とも不思議な味わいのある格闘ゲームだ。

相手を線路に落として電車に轢かせるのは全年齢対象でいいのだろうか……という一抹の不安もあるが、そんなハチャメチャ具合は面白い
【今回使用したPC】
マウスコンピューターG-Tune E4
スペックはCPUがCore i7-12650H、GPUがGeForce RTX 4060(GDDR6 8GB)、メモリが16GB DDR4-3200、ストレージがSSD 500GB(M.2 NVMe PCIe 4.0 x4)、ディスプレイが14型非光沢液晶(1,920×1,080ドット、144Hz)、OSがWindows 11 Home。重量は約1.8kgで、価格は179,800円

 なお、今回本作をプレイするにあたり、GeForce RTX 4060を搭載したマウスコンピューター製ノートPC「G-Tune E4」を使用した。本作は3Dグラフィックスを使用しているものの、比較的動作は軽量。解像度をフルHD、グラフィックスのクオリティを最高に設定しても、極めて快適にプレイできる。

著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)

1977年生まれ、滋賀県出身
ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。

・著者Webサイト:https://ougi.net/

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