クリエイターが知らないと損する“権利や法律”
著作権には有効期限がある
~第4章:無断で利用できる著作物を教えて!~
2016年8月15日 07:20
オンラインソフト作者に限らず、あらゆるクリエイターが創作活動を続けるために、著作権をはじめとして知らないと損する法律や知識はたくさんある。本連載では、書籍『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』の内容をほぼ丸ごと、三カ月間にわたって日替わりの連載形式で紹介。権利や法律にまつわる素朴な疑問に会話形式の堅苦しくない読み物でお答えする。
前回掲載した“撮影禁止の建物っておかしい”の続きとして、今回は“著作権には有効期限がある”というテーマを解説する。
著作権には有効期限がある
ところで先生、著作権が自然発生するのはいいんですけど、いつまで効力続くんですか?
著作者が生きている間に加えて、死後50年存続するのが原則です。
共同著作物の場合は、全員の死後50年です。
著作権法51条(保護期間の原則)
著作権の存続期間は、著作物の創作の時に始まる。
2 著作権は、この節に別段の定めがある場合を除き、著作者の死後(共同著作物にあつては、最終に死亡した著作者の死後。次条第一項において同じ。)50年を経過するまでの間、存続する。
うお、結構長いんですね。
特許の保護期間が出願から20年なのに比べると、相当長いですね。
なお、匿名やペンネームで公表された著作物や、法人や団体名義の著作物は、公表後50年です。また、映画の著作物は公表後70年です。
著作権法52条(無名又は変名の著作物の保護期間)
無名又は変名の著作物の著作権は、その著作物の公表後50年を経過するまでの間、存続する。ただし、その存続期間の満了前にその著作者の死後50年を経過していると認められる無名又は変名の著作物の著作権は、その著作者の死後50年を経過したと認められる時において、消滅したものとする。
(※ 2項は省略)
著作権法53条(団体名義の著作物の保護期間)
法人その他の団体が著作の名義を有する著作物の著作権は、その著作物の公表後50年(その著作物がその創作後50年以内に公表されなかつたときは、その創作後50年)を経過するまでの間、存続する。
(※ 2、3項は省略)
著作権法54条(映画の著作物の保護期間)
映画の著作物の著作権は、その著作物の公表後70年(その著作物がその創作後70年以内に公表されなかつたときは、その創作後70年)を経過するまでの間、存続する。
(※ 2、3項は省略)
あ、こっちは公表からのカウントなんですか。
正確には、死亡または公表した次の年の1月1日からカウントが始まり、50年後の12月31日まで存続します。
著作権法57条(保護期間の計算方法)
51条2項、52条1項、53条1項又は54条1項の場合において、著作者の死後50年、著作物の公表後50年若しくは創作後50年又は著作物の公表後70年若しくは創作後70年の期間の終期を計算するときは、著作者が死亡した日又は著作物が公表され若しくは創作された日のそれぞれ属する年の翌年から起算する。
自分が死んでから50年後って、どんな世の中になってるか全く想像がつかないですね……死んだ後まで著作権が保護されるのはなんでです?
著作者の遺族に権利を相続するためです。
だから、著作権の相続人などがいない場合は、保護期間中でも消滅します。
権利が消滅するとどうなるんです?
その著作物は、誰でも自由に利用できるようになります。
これを『パブリック・ドメイン』といいます。公共財産です。
おお!
例えば『青空文庫』という電子図書館には、著作権保護期間が切れてパブリック・ドメインになった作品が約1万3,000点公開されています。
ボランティアが入力や校正をしており、誰でも自由に利用できます。
対価を払う必要もありません。
あ、青空文庫って見たことあります。
結構有名な作家の作品が、みんなタダで読めるんですよね。
そうですね。芥川龍之介、石川啄木、菊池寛、夏目漱石、正岡子規、宮沢賢治、森鴎外、与謝野晶子、吉川英治、などなど、みんなパブリック・ドメインです。
……すごいなあ。
ちなみに、18世紀にイギリスで著作権制度ができたときには、保護期間は公表後14年が原則でした。
それがだんだん長くなっていって、現在欧米では死後70年になっています。
あ、国によって違うんですか。
はい、著作権の国際ルールはベルヌ条約で定められており、保護期間は最低死後50年ということになっています。
160カ国以上が加盟している条約です。
ベルヌ条約7条1項
この条約によつて許与される保護期間は、著作者の生存の間及びその死後50年とする。
そんな条約があるんですね。
ベルヌ条約ができたのは1886年ですから、100年以上前からある古い条約です。
日本が加盟したのが1899年。
保護期間は、各加盟国の法律によって死後50年より長く設定することは自由で、例えばメキシコは死後100年です。
100年!?
ただし『保護期間における相互主義』といって、国をまたいだ場合は短い方に合わせることが許容されています。
もっとも、相互主義を採用するかどうかは、各国の自由です。
アメリカ、メキシコ、コロンビアなどは採用していません。
ベルヌ条約7条8項
いずれの場合にも、保護期間は、保護が要求される同盟国の法令の定めるところによる。ただし、その国の法令に別段の定めがない限り、保護期間は、著作物の本国において定められる保護期間を超えることはない。
なるほど……。
ベルヌ条約でもう1つ。日本は第二次世界大戦で連合国に負けました。
そして、戦争中に日本が連合国の著作権を保護していなかったという理由で、アメリカ、イギリス、フランスなど15カ国において戦前や戦中に創作された著作物は、日本での保護期間が最大で10年強延長されます。
これを戦時加算といいます。
70年前の戦争が、今でもまだ影響しちゃうんですね……。
次回予告
今回の続きとして次回は“〈コラム〉パクツイは非親告罪”というテーマを解説する。
原著について
『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』
(原著:鷹野 凌、原著監修:福井 健策、イラスト:澤木 美土理)
クリエイターが創作活動するうえで、知らないと損する著作権をはじめとする法律や知識、ノウハウが盛りだくさん! “何が良くてダメなのか”“どうやって自分の身を守ればいいのか”“権利や法律って難しい”“著作権ってよくわからない”“そもそも著作権って何?”といった疑問に会話形式の堅苦しくない読み物でお答えします!