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子供向けプログラミング教育ツール10種類を一挙紹介。PC不要の教材からゲーム感覚の教材まで
約60種類から選ばれた学習ツールが集まった“G7プログラミングラーニングサミット”レポート(後編)
2016年11月22日 06:00
12日、早稲田大学西早稲田キャンパス63号館において“G7プログラミングラーニングサミット”が開催された。後編では、さまざまなプログラミング学習ツールが展示されていた体験・展示会の様子をレポートする。
“G7プログラミングラーニングサミット”では、世界各国で開発された子供向けプログラミング学習ツールが多数デモされていた。それらのツールは、フィジカルな物体を触ってプログラミングの基礎を学ぶものと、「マインクラフト」や「Scratch」のようにマウスやキーボードを使って実際にプログラムコードを作成するものに大別できる。前者のフィジカルなプログラミング学習ツールの中には、アナログのボードゲームを使ったものも出展されており、多種多様な選択肢があることがわかる。
キーボードやマウスを使わずプログラミングが学べる“PETS”や“OSMO Coding”
今回のイベントで展示されていたプログラミング学習ツールの中でも、特に子供達に人気だったのが、(株)for Our Kidsが開発した体験型プログラミング教材“PETS”である。“PETS”は、木製の移動ロボットで、命令ブロックを上部に差し込むことで、その命令通りに移動する。直進や旋回などの命令ブロックが用意されており、3つの命令をループさせることも可能だ。プログラミングに必要な3つの基礎“順次処理”“反復処理”“分岐処理”を身に付けることができ、インターネットへの接続も不要なので、どんな場所でも利用できる。
“PETS”は、「Scratch」などのビジュアルプログラミング言語を始める前のステップとして最適であり、ブロックを差し込むだけでロボットがその通りに動くというのはとても楽しい。子供達も夢中になって遊んでいた。“PETS”は、現在ベータ版の先行予約が行なわれており、価格は組み立てキットが25,000円(税別)、組立代行品が28,000円(税別)となっている。
フィジカルなプログラミング教材としては、アメリカのTangible Play, Inc.が開発した“OSMO Coding”も素晴らしい。“OSMO Coding”は、手でブロックを並べてプログラミングを行ない、できたプログラムをiPadのカメラで読みこませて実行すると、iPadの画面に表示されるキャラクターがそのプログラム通りに移動する仕組みになっている。
ブロックもよくできており、移動ブロックの横に丸い矢印ブロックをはめ込める。この矢印ブロックは回転できるようになっているので、回転させて移動方向を決め、さらにその右側に数字ブロックをはめて、何ブロック移動するかを決めることができる。単なる移動だけでなく、ジャンプや手を伸ばして果物を取るブロックもあり、パズル感覚でプログラミングを楽しめる。
アメリカのlittleBits Electonics Inc.が開発した“littleBits”も展示されていた。“littleBits”は、磁力を利用してパーツ同士を繋げられる電子工作ツールであり、国内ではコルグが販売代理店となっている。プログラミングというよりはプロトタイピングツールの一種だが、マイコン基板と開発環境からなるシステム“Arudino”などと連携することも可能であり、フィジカルコンピューティング教材としても利用できる。
また、アメリカのRobot Turtles LLCが開発した“Robot Turtles”は、ボードゲームでプログラミングを学習できるというユニークな教材だ。最大4人までの同時プレイが可能で、命令カードを並べてプログラミングを行ない、ロボットを動かしてゴールを目指すというものだ。
独学でプログラミングを学べる「CodeMonkey」、低学年にお勧めの「アルゴロジック」や「Viscuit」
物理的なブロックなどを使わずに、純粋にPCやタブレットでプログラミング学習を行なうためのツールも多数展示されていたが、その中でも特に完成度が高かったのが、イスラエルのCodeMonkey Studios Inc.が開発した「CodeMonkey」である。「CodeMonkey」は、ゲームで学びながら、本格的なプログラミングを学習できるWebアプリであり、CoffeeScriptと呼ばれる言語を利用して猿のモンタを操り、バナナをゲットさせることが目的だ。全22ステージで260種類以上のチャレンジが用意されており、初心者でも楽しく独学が可能だ。試しに小学校6年生の娘にやらせてみたが、『やりがいがあってとても楽しかった』とのことだ。
「CodeMonkey」は、主に小学校高学年以上を対象したツールだが、小学校低学年にお勧めなのが、一般社団法人電子情報技術産業協会が開発した「アルゴロジック」だ。こちらも、プログラミングの基本となるアルゴリズムをゲーム感覚で習得できるアプリで、ブロックを組み合わせて、スタートからゴールまでキャラクターを移動させることが目的だ。
カナダのLightBot Inc.が開発した「Lightbot」も「アルゴロジック」に似たゲームで、ブロックを組み合わせてロボットを動かし、濃い青いパネルの上でライトを点灯させればクリアとなる。
合同会社デジタルポケットが開発した「Viscuit」は、命令ブロックを組み合わせる「Scratch」などとは異なり、画面に絵を描いて並べることで、動きを作るという、本当の意味でのビジュアルプログラミングが可能なことが特徴だ。それほど複雑なプログラムが作れるわけではないが、小さい子供でも楽しみながらプログラミングの基礎を学ぶことができる。
イギリスで誕生した子供向け学習プロジェクト「Night Zookeeper」を日本語化した「ことばキャンパス」も展示されていた。ことばキャンバスでは、想像力を使って絵を描き、それに文章を付け加えて、オリジナルコンテンツを作ることができる。
このほか、アイルランド発のプログラミング道場“CoderDojo”のブースでは、前回紹介した「Scratch」のほか、プログラムで絵を描く「MAKE ART」のデモが行なわれていた。また、非営利団体“Code.org”が世界的に主唱するプログラミング教育活動“Hour of Code”のブースもあった。