特集・集中企画
「マルチディスプレイ」それとも「大画面」?画面を広く使うためのディスプレイ選びをメーカーに聞いてみた
より快適なマルチディスプレイ構築のためのTipsも
2024年3月28日 16:30
コロナ禍のリモートワークでは自宅のPC環境を会社と同じくらいに、そして何なら会社を上回るくらいに快適化しようと試みた方も多いはず。PC性能ももちろんだが、意外なところでディスプレイ、情報量というのが生産性に大きく関係すると多くの方が気付いたはずだ。
今回はこうした情報量を増やせるマルチディスプレイや高解像度ディスプレイにフォーカスして、マウスコンピューターでiiyamaディスプレイを担当するマーケティング本部 製品部 プロダクトマネージャーの松山 順一氏にお話をうかがった。ディスプレイのトレンドや、マルチディスプレイ構築時にどのようなディスプレイを選べばより快適か、注意すべきスペックなどを紹介しよう。
広がる「マルチディスプレイ」、そして流行りつつある「大画面&高解像度」
――ここ数年のディスプレイのサイズのトレンドについて教えてください
松山氏:数年前まで、ビジネス向けディスプレイの標準サイズは21.5型でした。場所をとらず価格的にも抑えられたので、採用しやすかったという理由ですね。
ところが最近はディスプレイ大型化が進んでいます。主流はワンサイズ上の23.8型に移ってきました。スペースよりも大画面の快適さを選ぶようになってきたということでしょう。そして現在、徐々にですが27型への移行も進んでいます。
――解像度のトレンドやマルチディスプレイのトレンドについて教えてください
松山氏:まずProLiteシリーズについてお話しましょう。ビジネス向けモデルであるProLiteですが、21.5型はフルHD(1,920×1,080ドット)しかないので、これが主流の頃は変化がありませんでした。
しかし、ディスプレイ解像度のトレンドはフルHDからWQHDへと移りつつあると感じています。
例えば、23.8型クラスでは、メインこそフルHDですが、WUXGA(1,920×1,600ドット)、WQHD(2,560×1,440ドット)といった解像度が選べるようになり売れてきていますし、27型ではフルHDもありますがWQHD、4K(3,840×2,160ドット)といった解像度が支持されてきています。
とはいえ、マルチディスプレイのニーズも高いです。
OutlookやExcel……これに加えて在宅(リモートワーク)ではTeamsのようなオンラインミーティングのニーズが高まり、1画面に表示できる情報量が業務効率を大きく左右するという認識が広まりました。
とくにフルHDパネルの場合、昨今の業務では情報量が足りないと感じるシーンが多いため、2画面、3画面とマルチディスプレイを組まれる方が多いです。21.5型はとくに、23.8型や27型でも同様の傾向にあります。しかし、一方で、置ける or 置けない、設置面積という問題もあります。
ここで新たなトレンドになりそうなのがウルトラワイドディスプレイです。
iiyamaのウルトラワイドディスプレイ「ProLite XUB3493WQSU-5」は34型ですが、横幅はフルHDの21.5型を2枚横に並べる(合計1,000mm強)よりも省スペースの817mmと省スペースなところがです。
一方、解像度はUWQHD(3,440×1,440ドット)ですので、画素数で見ればフルHDの2.4倍程度あります。フルHDパネルを2枚並べるよりも小さくて情報量が多い……となるとこれまでのマルチディスプレイ環境をウルトラワイドディスプレイ1台で置き換えようとなるわけです。実際、こうしたマルチディスプレイをウルトラワイドディスプレイに置き換えるといつたニーズがクリエイター中心に高まっています。
解像度 | 画素数 | FHD比 | |
ワイドFHD | 1,920×1,080 | 2,073,600ドット | 100% |
ワイドFHD×2画面 | 1,920(3,840)×1,080 | 4,147,200ドット | 200% |
ウルトラワイドUWQHD | 3,440×1,440 | 4,953,600ドット | 239% |
ワイドWQHD | 2,560×1,440 | 3,686,400ドット | 178% |
ワイドWQHD×2画面 | 2,560(5,120)×1,440 | 7,372,800ドット | 356% |
ワイド4K | 3,840×2,160 | 8,294,400ドット | 400% |
次にProLiteの個人(家庭)用ニーズについてです。家庭向けディスプレイではすでに21.5型や23.8型のフルHDモデルよりも27型WQHDモデルのニーズの方が多く、急成長しています。大画面、高解像度化が一歩進んだのはこちらも同様です。そして映像編集用途などを中心に、31.5型の4K、先ほどの34型UWQHDといった大画面・高解像度モデルのニーズも高まっています。
ゲーミングでマルチディスプレイするならナローベゼルに注目
ゲーミング、G-MASTERシリーズでのトレンドを紹介します。
G-MASTERはゲーミングの中でも格ゲーマーと言うよりはライトユーザー向けを中心に、サイズは23.8~27型、解像度はフルHD~WQHD解像度をメインにラインアップしています。
このほか、昨今は大画面のニーズもあり、ECでのセット販売限定モデルでは34型UWQHDのディスプレイで「湾曲」といった新たなトレンドを取り込んだモデルもご用意しています。
なお、「大画面」が意識されがちなゲーミング用途でも、マルチディスプレイのニーズは高まっています。
これはとくにナローベゼル(狭額縁)が普及したことが大きな理由ですね。ビジネスやホームと比べても、ディスプレイ間のすき間が気になることが集中力を削ぐことに繋がってしまいますので、できるだけここが狭いモデルほどよいと思います。
その上で、やはりゲーミングを意識した製品選びがポイントになります。
たとえば「あまり首を動かさなくても視界が得られるサイズ感」ということで、むやみに大画面よりもほどよいサイズ感が好まれますし、高いフレームレートでプレイすることを重視されるお客さまも多いので、解像度よりも、高いリフレッシュレートに対応していることが注目されたりします。
快適にマルチディスプレイするならデイジーチェーン対応やスタンドの調節機能もチェック
――「より快適なマルチディスプレイ環境を構築したい」という場合は、どのようなスペックに注目すべきでしょうか
松山氏:まず、ここまで紹介してきた通り、大画面、高解像度であることがなにより快適さを左右します。これは当然として、みなさん、Display Portのデイジーチェーンをご存知でしょうか。PCとディスプレイをDisplay Portで接続しますよね。そのディスプレイが通常のDisplay Port入力に加えてDisplay Port出力を備えているなら、そのDisplay Port出力から2枚目のディスプレイへと接続できます。PC-1枚目のディスプレイ-2枚目のディスプレイが数珠つなぎに接続できるため、モバイルノートPCのように出先で使ったりオフィスや自宅に戻ってきて使ったりといったときのケーブル着脱がシンプルになります。
……と言っても昨今のモバイルノートPCでDisplay Port(ミニDisplay Port)を搭載しているモデルはほとんどありません。ですが、USB Type-C(映像出力機能。PCによって同機能の対応可否は異なる)はDisplay Port Alt-Modeで映像出力していることを思い出してください。
PCから1枚目のPCまではUSB Type-Cケーブルでよいのです。そして2枚目のディスプレイについてはDisplay Portケーブルが使えますし、こちらのディスプレイはDisplay Port出力があってもなくても構わないわけです。PC側(デイジーチェーン可能な最大パネル枚数や解像度は異なる)が対応していれば、Display Port出力を持つ2枚目のディスプレイから3台目のディスプレイに映像出力することも可能です。
――デイジーチェーンは知らない方も多そうです。要チェックですね。ほかにもこうしたココに目をつけて選ぶといいよというポイントはありますか
松山氏:ではピボットはいかがでしょうか。ディスプレイを90°回転させて縦画面で使う機能ですね。プログラミングやWebデザインといった用途では横にワイドであるよりも縦長であるほうが便利です。縦2画面や1台は横、もう1台は縦といったように組み合わせて使うこともできます。ディスプレイによって「ピボット機能」をサポートする/しないがありますので、ご確認ください。
次もスタンドに関連するものですが、マルチディスプレイ時に注意して見たいスペックとして昇降機能(上下高さ調整)があります。ディスプレイの前にノートPCを置いてマルチディスプレイするというのはよくありますが、昇降幅が小さいディスプレイだと手前のノートPCの画面が被ってしまうなんて経験ありませんか。あるいはこれを解消しようとノートPCを大きく開いたら画面が見づらくなったりノートPC本体が手前に出すぎて狭くなってしまったりということありませんか。
iiyamaでは23年秋モデルから採用した新しいデザインのスタンドは、昇降幅を従来の13cmから15cmへと拡大しています。ディスプレイをより高い位置で使うことができ、ノートPC(13.3型や14型クラス)を画面が見やすい角度で置いたとしても被ることなくお使いいただけます。
シングル、マルチを問わずディスプレイの高さや角度というのは快適にPCを使う上で重要なスペックです。iiyamaでは昇降モデルを多く展開していますので、こうしたスペックにも注目して選んでいただければさいわいです。
スタンドつながりでもう一つ。新しいスタンドでは台座が従来の長方形から台形へと変更されています。台座が台形になったことで何が変わったかと言うと、この上にキーボードを置けるようになりました。
――どういうことでしょう???
松山氏:PCを使い終わった後、台座の上にキーボードを乗せて収納するといったことはよく行われています。よくキーボードの裏にチルト角を付けるための脚がありますよね。従来の長方形の台座はこの脚の間隔よりも幅広で、脚を出したままだと少し置きづらいものでした。気にならない方は気にならないかもしれませんが……。
新しい台座は台形の手前側が狭く、奥が広い形状です。フルキーボードの一般的な脚の幅であれば、スタンドの根本に近い部分まで干渉せずに置くことができます。そしてこれをディスプレイの安定感を損なわずにできたのは台形だからです。手前だけでなく奥まで狭くしたら、重量物のディスプレイ本体を支えられません。台形が最適解だったのです。
iiyamaオススメモデルはコレ
――最後にiiyamaディスプレイのオススメを教えてくれますか
松山氏:2画面、3画面のマルチディスプレイを構築したい方には23.8型で昇降機能付きのモデルを推します。一番のオススメはUSB Type-C接続に対応した「ProLite XUB2492HSN-5シリーズ」ですね。ノートPCとの親和性もよく、デイジーチェーン接続に対応しているところもポイントです。
そして23.8型で選ぶ際は、スタンドにも注目してください。昇降するのか固定なのか。自宅で使う、ノートPCと使うなら昇降アリが快適です。
そしてこれからのディスプレイはホワイトモデルにもご注目ください。もともと学校や医療などの用途では使う場所との親和性という点でホワイトモデルのニーズがありましたが、最近ではビジネスでも、たとえば受付に置いて使うディスプレイとして、清潔感あるホワイトモデルが選ばれることが増えています。ProLiteシリーズのホワイトモデルはこうしたニーズに最適です。
また、ゲーミングでも、G-TuneのゲーミングPCでホワイトモデルを展開しており、G-MASTERでもこれにマッチするホワイトモデルをご用意しています。ホワイトPCの人気に合わせ、ホワイトのディスプレイにもご注目ください。
――ありがとうございました。