イベントレポート
体験型展示と参加型企画で盛り上がった“デジゲー博2014”会場レポート
Oculus Riftゲームの試遊やSTGスコアアタック企画が大盛況
(2014/11/17 17:37)
11月16日(日)、東京・秋葉原UDXのイベントスペース“アキバ・スクエア”にて、同人・インディーゲーム専門のデジタルゲーム展示・即売会“デジゲー博2014”が開催された。1年ぶり、2回目のデジゲー博となる今回は、会場を大田区産業プラザPiOから秋葉原の駅前へと移し、募集スペース数は約2倍、総参加サークル数は162と大幅に規模を拡大。当日は開場前に待機列ができ、始終人にあふれる盛況ぶりをみせた。
- デジゲー博 | 同人&インディーゲームオンリー展示・即売会
- http://digigame-expo.org/
乗馬フィットネス機器、100インチスクリーン……ユニークな展示が目立つ会場
国内ではさまざまな同人誌即売会が開催されているが、デジタルゲームに特化したデジゲー博の特徴として、電源が使用可能であることが挙げられる。さらに今回、2スペース参加時は机の配置を自由に動かせることを活かし、一般的な即売会では不可能な大型の機材を用いたユニークな展示が行われていた。
Oculus Rift+JOBAでドラゴン騎乗を体験
VRヘッドセット“Oculus Rift(オキュラスリフト)”専用シューティングゲーム「BLAST BUSTER」の作者として知られるHydrangeaのブースでは、開発中のドラゴン騎乗3Dシューティングゲーム「Dragoon(仮)」の試遊展示が行われていた。
イベント限定の特別仕様として、パナソニックの乗馬フィットネス機器“JOBA”に乗って実際にドラゴンへ騎乗しているような体験をできるのが特徴。会場内でもひときわ目立っており、試遊は有料(1回100円)であるにも関わらず、試遊待ちの列が常に途切れない状態だった。
Oculus Rift対応コンテンツが試遊展示、エプソンのスマートグラスMoverio用ゲームも
そのほかにもフレームシンセシスが開発中のOculus Rift用シューティングゲーム「シルエットストライカー」を出展、Nussoftが開発中のサードパーソン海産物シューティング「NEO AQUARIUM 2: ACE OF SEAFOOD」を出展など、おおよそ10前後のサークルがOculus Rift対応ゲームを試遊展示していた。
また、鑑賞型コンテンツとしては、神楽坂師団が「VR 駆逐艦 雪風」を展示。駆逐艦雪風の甲板から観艦式を行う航空母艦赤城、戦艦大和を観覧するというもので、ゲームパッドで甲板上を移動しながら、頭を動かすことで前後左右を見渡すことが可能。すれ違っていく赤城や大和を前後から眺め、スケールの大きさを体感することができた。
なお現在のところ、艦艇の3DモデルはUnityのアセットストアにあるものを利用しているが、ゲーム用のためそれほど精巧ではないという。同サークルでは、今後“戦艦大和 VR 復興計画”のクラウドファンディングを実施。集まった資金次第で、艦橋内や主砲発射の再現といったディティールを詰めていきたいとのこと。
また珍しいところでは、銀河魔法少年がOculus Riftではなくエプソンのスマートグラス(眼鏡型ヘッドマウントディスプレイ)“Moverio”対応のゲームを展示していた。奥スクロールの3Dシューティングゲームで、付属のタッチデバイスで少女の前にある狐を移動させることにより、少女を誘導して移動や射撃を行わせるというもの。Moverioの映像投影はシースルー方式となっており、周囲の景色の中にゲーム画面が浮かび上がるのはなかなか新鮮な体験だった。
100インチプロジェクターやPlayStaion 4での展示も
アクションシューティングゲーム「魔砲じかけのメイガス」を開発中のOHBA堂と東方Project二次創作・飛翔レーシングゲーム「幻走スカイドリフト」を開発中のilluCalabは、合同サークル“スーパーウルトラデリシャスオオバイルカネオアームストロング砲”として出展。プロジェクターによる100インチスクリーンを利用して両ゲームの試遊展示を行っていた。
また、新作のフライトシューティング「VERTICAL STRIKE ENDLESS EDITION -REV2-」を頒布したProject ICKXもプロジェクターによる大画面投影を実施。いずれも壁際で目立つ展示となっていた。
また、3Dアクションゲーム「巫剣神威控」のPlayStaion 4への移植が発表されているZENITH BLUEは、開発中のPlayStaion 4版を試遊展示していた。PlayStaion 4版の内容は基本的にPC版と同じで、解像度の1080p化が行われているという。
一方、PlayStation Vita向けの作品を展示するサークルも。PlayStaion 4では現状、個人が直接ゲームを配信する方法はないが(「巫剣神威控」など配信予定となっているインディーゲームの多くは、ゲーム配信サイトPLAYISMを運営するアクティブゲーミングメディア社がパブリッシャーを担当している)、Vitaは“PlayStaion Mobile”サービスで配信が可能。
Throw The Warped Code Outは近日同サービスで配信予定の「CardBoard Cat EP」をプレイアブル展示していた。ネコを操作して即死トラップだらけの屋敷から脱出するゲームで、背面タッチパッドをタップすることで罠の位置を探れるのが特徴。Vitaのハードウェアを活用した作品となっている。
ただし、PlayStaion Mobileの知名度はまだ高くはないため、幅広いプレイヤーに届けるのは難しい。そのためPon Pon Gamesは今回のデジゲー博を機に、PlayStaion Mobileで配信していたスニーキングアクションゲーム「BEHIND YOU」のWindows版をリリースしたほか、次回作のヒーリングストラテジーゲーム「オール・ユー・ニード・イズ・ヒール」もPlayStaion Vita/Windowsのマルチプラットフォームでリリースするという。
「BEHIND YOU」のWindowsへの移植は開発後に決まったが、同作品は「Unity for PlayStation Mobile」製だったため移植は容易であったという。一方、「オール・ユー・ニード・イズ・ヒール」はC#での開発だが、最初からマルチプラットフォーム対応を想定して制作しているとのこと。Windows版は.NETベースで動作する。
STGスコアアタックやスタンプラリーなどサークル合同企画が実施
同人シューティングゲームのスコアアタック企画が大盛況、東方Project作品の特別版も
今回のデジゲー博ではエンドレスシラフ主催の有志企画として、“同人シューティングゲームキャラバン in デジゲー博2014”が実施された。これは参加サークルが用意したゲームでスコアアタックを行い、合計点(ゲームにより得られるスコアが違うため、主催側で重み付け・正規化を行う)を競うというもの。参加14サークルのうち7サークル以上のプレイで粗品が進呈されるほか、上位3名は表彰も行われる。
本企画のためにスコアアタック用の特別版を用意したサークルも多いほか、インストカードの用意やサークルによる簡単なシステムの説明など初見プレイヤーへの配慮も見られ、参加サークルにはほぼ常時プレイヤーが訪れるような状況で非常に盛況となった。参加サークルのひとつMercenary代表の彼岸堂氏によると、同サークルのゲームを知らなかった人がこの企画ためブースを訪れ、プレイ後にゲームを購入してくれたケースもあったという。
また、本企画には“東方Project”でお馴染みの上海アリス幻樂団も参加。最新作「弾幕アマノジャク」の特別版「弾幕アマノジャクゴールドラッシュ」を試遊展示し、通常の出展ゾーンから企画ゾーンへと移されたサークルブースは、常に人だかりができる人気スペースとなっていた。なお、「弾幕アマノジャクゴールドラッシュ」は会場だけの特別版で頒布予定はない。
作者のZUN氏によると、企画参加は飲みの席で誘われたためとのことだが、ただステージを用意するだけでは面白くないので新しいシステムを加えよう、ということで2日で制作したとのこと。イベントの盛り上がりは予想以上で、デジゲー博については『(頒布中心の)コミケに出るのとも違って、ゲームを作るのもプレイするのも好きな人達ばかり集まっていて、楽しい』と笑顔で語っていた。
スコア登録は15時に終了となり、主催の想像を大きく超える参加者が集まったとのことで集計作業はやや手間取っていたが、15時半すぎに結果が発表。1位のプレイヤーには賞状とトロフィー、および企画参加全サークルのサイン入りゲームが贈呈された。
“ユニティちゃん”ジャンルサークルのスタンプラリー
今回のデジゲー博では、申し込みジャンルにアクション、RPGなどと並んで“ユニティちゃん”が設定され、ゲームエンジン「Unity」のオリジナルキャラクター“ユニティちゃん”をフィーチャーしたゲームを制作するサークルが集った。また、「Unity」を提供するユニティ・テクノロジーズ・ジャパン社自身も“unity-chan!@デジゲー博”としてブースを設置し、「NEVER ALONE」など自社パブリッシングタイトルの試遊展示のほか、“ユニティちゃん”ジャンルのサークルと合同でスタンプラリー企画を行っていた。
“ユニティちゃん”ジャンルの設定について、筆者はユニティ・テクノロジーズ・ジャパン社側から何らかの働きかけがあったのではないかと邪推していたのだが、同社の大前広樹氏によると特にそういうことはなく、デジゲー博準備会の方で自然にやりたいという話になったという。スタンプラリーについては、ゲーム開発者を応援する会社として何かやりたいが、コミックマーケットでは(企業と個人が別会場であることもあり)難しい。しかしデジゲー博であれば可能であろう、ということで実施したとのこと。
一方、同社はスタンプラリーの他にも、ユニティちゃんのポップなどプロモーションアイテムの提供も行っており、こちらは他のイベントでも同様の取り組みを行っているという。
新作、開発中作品の試遊や展示が多数
そのほかにも、多くのサークルが新作や開発中の作品を頒布・展示。やはり電源があることを活かし、ノートパソコンなどを利用した試遊やPVの展示が多く見られた。その中からいくつかご紹介する。
電猫遊戯
昨年サークル第1作のRPG「星樹の機神 -プラネットルーラー-」をリリースした電猫遊戯は、2作目のアクションゲーム「星樹の機神 フライングドリーマー」の体験版を頒布。試遊展示も行っていた。こちらは来年夏リリース予定とのこと。さらにその後のことになるが、RPGの2作目もすでに開発が予定されている。
同サークル共同代表の鳳泉下氏によると、「星樹の機神」は同一世界観によるシリーズ化が構想されているが、もともと最初に企画されたのは2作目のRPGの方であったという。しかしストーリーの尺が長く、8人のキャラクターから4人パーティを組んで戦うという大掛かりな作品となっており、いきなりこれを作るのは難しいという判断から、まずは前日譚にあたる「プラネットルーラー」を制作したとのこと。また、「フライングドリーマー」では3Dグラフィックを導入しているが、これも今後3Dゲームを作っていくための習作という側面もあるそうだ。
TORaIKI
TORaIKIは開発中のファンタジーRPG「アストロメイデン/アポストロ」を出展。頒布はコミックマーケット86(夏コミ)で頒布したものと同じバージョンの体験版だが、来月のコミックマーケット87(冬コミ)で頒布が予定されている新体験版の開発中バージョンを試遊展示していた。夏コミ版に比べてキャラクターが追加されたほか、ユーザーインターフェイスの改良なども施されている。
「アストロメイデン/アポストロ」は、ADVパートと、CTB(敵・味方入り交じっての順次行動)方式の戦闘パートからなるRPG。パーティメンバーでスキルの発動を繋げるコンボシステムが特徴で、立ち絵や必殺技カットインのアニメーションも魅力的な作品だ。
オイシ研
オイシ研では開発中の3DアクションRPG「GUILTY HEARTS -History of the Dark-」の最新体験版を頒布し、PVの展示を行っていた。複数のキャラクターでパーティを組み戦う作品で、操作するキャラクターを切り替えてさまざまな技を繰り出せるのが特徴。ステージ(ダンジョン)をクリアしながら物語を進めていく構成で、今回の体験版では6ステージを収録している。完成版は1年以内にはリリースしたいとのこと。
同サークルのオイシ氏はもともとストーリーを作りたくて2D RPGの習作も行っていたが、Unityに触れたことで『3Dアクションゲームを自分で作ってみよう』とも思うようになり、本作の制作に至ったという。ゲーム制作を強力にサポートしてくれるUnityに触れたのは『本当にいい機会に巡り会えた』と語った。
else undefined
else undefinedは開発中の次元転換シューティングゲーム「2D/Not2D」の最新体験版を頒布。試遊やPVの展示を行っていた。
縦スクロール(2D)と、奥スクロール(3D)を切り替えることで弾幕を避けていくシューティングゲーム。体験版ではステージ3までプレイできる。
(株)タクティカルシンパシー
フリーのノベルゲーム「箱庭のうた」などを公開中の(株)タクティカルシンパシーは、近日公開予定の新作ノベルゲーム「ヒ常識ムラ」の体験版頒布と実況動画の展示などを行っていた。
同社はもともと、ゲームやIT関連の企画・開発などを行う企業。企業としてフリーゲームを公開する狙いを伺ったところ、『楽しくなければ仕事じゃない』というモットーで、自分達も楽しんで作り、プレイヤーにも楽しんでもらえることを目指しているという。
「ヒ常識ムラ」もPC版は無償で公開。続けて予定されているAndroid/iOS版も基本的には無償配信を予定しているという。今後どういった形でプレイヤーに楽しんでもらいつつ、自分達も楽しんで開発を続けて行くかは検討中とのこと。なお、ブースでは同社作品のキャラクター設定資料集や、「箱庭のうた」の開発スタッフによる二次創作ゲームが販売されていた。