ニュース

クロスプラットフォームアプリフレームワーク「Qt 6.5」が公開 ~3年サポートのLTS

WebAssemblyサポートを拡充、「FFmpeg」バックエンドが既定に

公式ブログのリリース記事

 アプリケーションフレームワーク「Qt」の新しい長期サポート(LTS)バージョン「Qt 6.5」が、4月3日に公開された。「Qt 6」シリーズで6番目のリリースで、グラフィックスやユーザーインターフェイスの開発、アプリケーションバックエンドなどに多くの新機能が導入されている。

 まず、Windows環境ではテーマとスタイリングが改善。ダークモードを簡単にサポートできるようになった。システムの変更通知を処理することもできるので、システムテーマの変更に追従することもできる。

 macOSでは、「QMessageBox」や「QErrorMessage」を使用するアプリケーションでモダンな中央揃えUIデザインのネイティブダイアログがサポートされた。「Qt Quick Controls」ではiOSのスタイルが完成し、ネイティブにない便利なコントロールも多数追加されている。

 プラットフォームサポートの面では、「Android 12」への対応が目玉。Androidのバージョンが古くても、期待通りに動作することを確認しているという。OS側で多くの変更があったにもかかわらず、「Qt」アプリは単一のビルドで「Android 8」から「Android 12」までデプロイできるとアピールしている。

 そのほかにも、多くの新機能が追加。既存モジュールも拡張された。

  • Qt 6.5 for WebAssembly:「Qt 6.4」での初期サポートを発展させ、ビデオレンダリングのサポートとウィジェットのアクセシビリティを追加。「Qt WebEngine」は「Chromium 108」にアップデートされ、「Chromium 110」のセキュリティパッチも含む。LinuxではX11とWaylandの両方で、「Vulkan」ハードウェアアクセラレーションによるビデオレンダリングをサポート
  • 新しい「Qt Quick Effects」モジュール:「Qt 5」の「Qt Graphical Effects」モジュールを置き換えるもので、性能を損なうことなくエフェクトを組み込める。「Qt Quick Effect Maker」ツールで複雑なカスタムエフェクトも簡単に構築できる
  • Qt Quick 3D:モデルの詳細度を明示的、または遠近などを考慮して自動で調節できるようになり、たとえばカメラから遠く離れたオブジェクトメッシュを簡略化してパフォーマンスを出せる。霧の表現、より複雑なポストプロセッシングエフェクトなども
  • 新しい「Qt GRPC Qt」モジュール:「gRPC」と「Protocol Buffer」を「Qt」に統合(テクニカルプレビュー)
  • Qt Location:テクニカルプレビューとして復帰。「Open Street Maps」をバックエンドとしてサポート。コントロールも再設計
  • Qt Core:デバイスの位置情報、Bluetooth、カメラ、マイク機能、カレンダーなどのパーミッション(利用許可)を管理
  • Qt GUI:OSネイティブのクリップボードを介してプラットフォーム固有(Windows/Mac)のデータフォーマットをやり取り
  • 「QGuiApplication」の新しい「setBadgeNumber」API:タスクバー(Windows)やドック(Mac)にある未読メッセージを表示
  • Qt Multimedia:「FFmpeg」バックエンドをWindows、macOS、AndroidおよびLinuxのデフォルトに。組み込みシステムでは「GStreamer」が引き続きデフォルトだが、「FFmpeg」を利用することもできる
Qt Quick Effect Maker - Smart Watch Demo

 「Qt」はC++言語で開発されているフレームワークで、主要なデスクトップOSから組込みOSまでの幅広いプラットフォームで動作するアプリケーションを単一のコードで開発できるのが特徴。とくに近年では組込みシステムで採用が急増しているという。