ニュース

「Unity 6」がリリース ~描画、ライティング、マルチプレイ、AI、モバイル・Web対応を拡充

最短4年間のサポートを設定した新しい長期サポート(LTS)リリース

「Unity 6」がリリース

 米Unity Technologiesは10月17日(現地時間)、予告通り「Unity 6」をリリースした。これまで「Unity 2023 LTS」と呼ばれていた新しい長期サポート(LTS)リリースで、高速なレンダリング、高度なライティングオプション、シームレスなマルチプレイヤーワークフロー、強化されたAI機能、モバイルWebランタイムのサポート改善などが含まれる。

 「Unity」は、リアルタイム3D(RT3D)コンテンツを開発・動作するためのプラットフォーム。最新の3Dゲームをはじめ、さまざまなシーンで活用されている。

レンダリング

 「Unity 6」では、「URP」(Universal Render Pipeline)と「HDRP」(High Definition Render Pipeline)両方のレンダリングパイプラインで最適化が行われており、パフォーマンスオーバーヘッドを削減されている。また、「GPU Resident Drawer」によりハイエンドモバイル、PC、コンソール(家庭用ゲーム機)を含むすべてのプラットフォームで、より大きく、より詳細な世界を効率的にレンダリングできるようになった。開発者の手を煩わせることなく、静的オブジェクトをCPUからGPUに転送することでCPUへの負担を減らし、全体的なパフォーマンスが改善される。

 そのほかにも、可視化されていないオブジェクトのレンダリングを避けてレンダリングの軽量化を図るGPUオクルージョンカリング、低解像度でレンダリングされたフレームをアップスケールし、高品質で時空間アンチエイリアス処理された画像を生成する空間時空間ポストプロセス(STP)といった技術が導入された。状況によっては、従来の2倍以上のパフォーマンスが得られるようだ。「Render Graph」のカスタマイズ性向上とメモリ帯域幅の大幅削減(最大50%)によるバッテリー消費の改善、「DirectX12」のグラフィックジョブの分割によるマルチスレッド環境でのCPUレイテンシ削減(最大40%)などの貢献も大きい。この多くはアセットストアからダウンロードできる「Fantasy Kingdom」デモで体感できる。

マルチプレイヤーセンター(Multiplayer Center)

 また、マルチプレーヤー機能の実装を容易にする「マルチプレイヤーセンター」が導入され、ロビーやセッション接続、ボイスチャットなど、マルチプレイに必須の機能を簡単に追加できるようになった。マルチプレイを検証するため、最大4つの独立した軽量エディタープロセスを起動する機能なども導入される。

マルチプレイヤーセンター

Web/モバイルプラットフォーム対応

 Webプラットフォーム(Unity Web)向けの改善としては、WebAssemblyのSIMDサポート、C/C++のマルチスレッド対応などが挙げられる。Webプロジェクトに課されていた2GBのメモリ制限も緩和され、従来の2倍の4GBまで扱えるようになったのもうれしいポイントだ。「Unity」プロジェクトをモバイルブラウザーで直接実行したり、WebViewを用いてプロジェクトをネイティブアプリに埋め込んだりと、「Unity」の可能性が大きく広がる。

開発者体験の向上

 「Unity 6」では、開発生産性を高める新機能も数多く導入されている。たとえば「Build Profile」ウィンドウと「Platform Browser」は、従来ならカスタムエディタースクリプトを必要とするビルド設定を大幅に簡素化する。強化されたメモリプロファイラーや、カスタムUIコントロールの作成を迅速に行えるようにする「UI Toolkit」の改善、完全に拡張可能な新しいデータバインディングシステムなども含まれる。

「Build Profile」ウィンドウ
強化されたメモリプロファイラー

 ビジュアルを面では目玉機能の一つである「Adaptive Probe Volumes」(APV)が導入され、プローブの配置を自動化し、光プローブベースの間接拡散光の反復プロセスを合理化して高速化する。Windows、Xbox Series X|S、PlayStation 5などで実用化されているレイトレーシングAPIにも対応する。AIツール群「Unity Sentis」を用いて「Unity」プロジェクトにAIモデルを組み込んだり、することも可能だ。

サポート期間とライセンス

 「Unity 6」は従来のLTSリリースよりも長く、次のメジャーリリース登場から最低2年間、全体で最短4年間のサポート期間が設けられている。長く安定したバージョンを利用したいなら、移行先としては最適だ。今後は定期的にマイナーアップデートが提供される予定で、次の「Unity 6.1」は2025年4月のリリースが見込まれている。

 また、批判を浴びていた「Unity Runtime Fee」は撤回された。入門者向けの「Unity Personal」は引き続き無料で、「Unity 6」のリリースをもって、「Made with Unity」スプラッシュスクリーンを表示するかどうかも任意となる。