レビュー
Webブラウザー上から遠隔PCを操作可能なリモートデスクトップ「TeamViewer Remote」
非営利の利用は無料。音声の送信やファイル転送機能も備える
2023年5月29日 09:45
独TeamViewerが提供するリモートデスクトップソフト「TeamViewer」が「TeamViewer Remote」と名称変更し刷新された。従来版とは各所が変更されているようなので、改めて使い方を見ていきたい。
他人のPCをヘルプできる「セッション」機能を搭載
「TeamViewer Remote」は、WindowsやmacOSといったPCのみならず、AndroidやiOS、ChromeOSなどにも対応し、プラットフォームの垣根を超えての操作が簡単に実現できる。今回は2台のWindows PCを使ってリモートデスクトップを試した。
利用方法は、Webブラウザー上で使えるWebクライアントと、インストール作業を伴うデスクトップクライアントの2種類が用意されている。いずれも非営利の利用であれば無料で利用できる。
まずはWebクライアントで試してみた。「TeamViewer Remote」の公式ページにある[今すぐ無料で試す]ボタンから遷移するページで、[Webクライアントへアクセス]のボタンがあるのでクリックする。
アカウントの作成を促されるので、氏名とメールアドレスを入力して作成するか、MicrosoftまたはGoogleのアカウントを使用する。アカウントを作成したら、同じページからサインインする。
「TeamViewer Remote」におけるリモートデスクトップの使用方法は、大きく分けて「セッション」と「リモートアクセス」の2つがある。「セッション」は他人のPCで操作を助ける際などに使う一時的な接続、「リモートアクセス」は自分が所有するPCに継続的に接続するもの、と考えるといい。
「セッション」を利用するには、リモート接続する側のユーザーが[セッションを作成]を選択する。新たに[セッションを作成]のウインドウが表示されるので、下段にある[メールによる招待]欄に、リモート接続される側のユーザーに通知できるメールアドレスを入力する。その後、右下の[保存]ボタンをクリック。
すると入力したメールアドレスに、「TeamViewer」からのセッション招待メールが届けられる。内容は英文で「○○さんがあなたを助ける準備ができました」といった旨のテキストとともに、[Join session]のボタンがある。このボタンを押すとWebブラウザーが開き、アプリケーションのインストールを促される。今回はWindows PCなので[For Windows]のボタンをクリック。ファイルがダウンロードされるので実行する。
実行されると新たなウインドウが開き、ライセンスへの同意の後、「サポーターによるセッションの開始を待機中」という表示が出る。
この状態になると、リモート接続する側の画面には「ユーザーがセッションを開始するために待機しています」という通知が届く。その下にある[セッションを開始]のボタンをクリックすると、「招待したユーザーの参加を待っています」というメッセージ画面に切り替わる。
再びリモート接続される側の画面では、「○○がセッションを開始しました」という画面が表示される。ここで[参加]ボタンをクリックすれば、リモート接続する側の画面に、接続される側のデスクトップが表示される。これで接続は完了だ。
「セッション」での作業のポイントは、リモート接続する側からセッションを開く手続きを行うところ。リモート接続される側はメールの指示に従ってファイルをダウンロードし、インストールするだけで、リモートデスクトップ接続を受けられる。「PCの使い方に困ったので助けて欲しい」という場面で、最小限の作業でリモートデスクトップによるヘルプを実現できる。
「リモートアクセス」の利用には、デスクトップクライアントのインストールが必要。リモート接続される側のPCに「TeamViewer Remote」をインストールする。そして[リモートアクセスを設定]を選択し、デバイス(PC)をアカウントに追加する。追加されたデバイスは、[デバイス]画面でリスト表示されるようになる。
追加したデバイスの電源を入れ、「TeamViewer Remote」のデスクトップクライアントを起動した状態にしておくと、他のデバイスで「TeamViewer Remote」にログインし、[デバイス]画面のリストから選ぶことで、リモートデスクトップ接続ができるようになる。
用途としては、出張などで自宅のPCを直接触れなくなる状況で、自宅PCにあらかじめ「TeamViewer Remote」をインストールした後にデバイスをアカウントに追加しておく。すると出張先で別のPCから自宅PCにリモートデスクトップ接続ができる。出張先ではWebインターフェイスが使えるので、他人のPCを借りるなどして、デスクトップクライアントをインストールすることなくリモートデスクトップ接続ができる。
相手のPCに音声を送信可能
「TeamViewer Remote」にはリモートデスクトップ接続以外に、いくつかの機能が搭載されている。その中から3つを紹介しよう。
まず1つ目は、リモート接続する側から音声を送る機能。画面左上にある[通信]タブから[通話]を選び、[マイク]にチェックを入れると、マイクの音声を相手のPCに届けられる。相手のデスクトップを直接操作しながら、音声で説明を加えることも可能だ。
2つ目は、ファイル転送機能。画面左上の[ファイルおよびその他]タブでファイル転送ウインドウを開ける。ここでは互いのPCのファイルリストが表示され、ファイルの送受信ができる。
3つ目はメモ機能。画面左上の[操作]タブから[メモを残す]を選ぶと、新たにメモのウインドウが表示され、テキストを自由に入力できる。このメモウインドウはリモートデスクトップ接続を切断しても残り続ける。出張先から自宅のPCにメモを残し、家族に見てもらったり、帰宅後の作業のリマインダーなどに活用できる。
Webクライアントの便利さとデスクトップクライアントの安定性
最後に通信品質や動作状況も見ておこう。テスト環境は2台のPCを同一LAN内に置き、一方は2.5GBASE-Tの有線接続、もう一方はWi-Fi 6での無線接続となっている。
動作に関しては、Webブラウザーなどの一般的なアプリケーションの動作に問題ないのはもちろん、3Dゲームも正しく動作し、マウスやキーボードを使った操作にも対応できた。ただ本体の処理負荷が大きくなると、操作にも若干の遅延が発生するようで、快適にプレイできるかどうかはリモート接続される側のPCの処理能力によっても変化しそうだ。
3Dゲーム以外の低負荷な環境では、Webクライアントだと0.1~0.2秒程度の操作の遅延が感じられた。デスクトップクライアントで接続した場合はほぼ遅延を感じなかった。
またWebクライアントの場合、[半角/全角]キーによるIMEの動作切り替えが効かないほか、文字入力に反応しないことがあった。また3Dゲームを動作させた際にも、Webインターフェイスでは画面が時々暗転することがあったが、デスクトップクライアントでは表示の問題は見られなかった。
Webクライアントはインストール作業を必要としない点がメリット。デスクトップクライアントは精度や操作遅延で有利なようだ。差はわずかだが、もし表示や操作で不都合を感じるならデスクトップクライアントも考慮する、といった形で使い分けると良さそうだ。
リモートデスクトップには、ほかにもWindowsの標準機能(Pro版のみ)やChromeリモートデスクトップなどがある。それらに対する「TeamViewer Remote」のメリットは、導入が簡単で手間が少なく、他人の招待など柔軟な運用ができる点だ。特にこれまでリモートデスクトップを使ったことがないという人にはおすすめしたい。
1977年生まれ、滋賀県出身
ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。
・著者Webサイト:https://ougi.net/
ソフトウェア情報
- 「TeamViewer Remote」
- 【著作権者】
- TeamViewer Germany GmbH
- 【対応OS】
- 64bit版を含むWindows 10/11およびWindows Server 2019/2022
- 【ソフト種別】
- フリーソフト(非営利の利用のみ)
- 【バージョン】
- 15.42.5(23/05/23)