レビュー
電子帳簿保存法を順守するための個人事業主・小規模事業主向けフリーソフト「電帳Free」
2024年1月に改正され、電子取引データの保存・検索要件が厳密に
2024年2月20日 06:45
2024年1月1日より、電子帳簿保存法が改正されたことをご存じだろうか。電子帳簿保存法は、決算関係書類や各種帳簿など、税務関係帳簿や書類をデータとして保存することを認める法律だ。国税関係帳簿書類の保存義務者が対象とされており、原則として、すべての企業と個人事業主が該当する。
今回の改正により、電子取引データの改ざん防止のための措置と検索性の高さが求められることとなった。事務処理が増えることが予想されるが、それらの負担軽減を期待できるのが、(株)システムゼロの提供する「電帳Free」だ。Windows 10/11で動作する。
電子帳簿保存法について補足しておこう。電子取引データを取り扱わない企業や個人事業主は対象外とされているが、例えば、ECサイトで事業に必要な資材を仕入れた時に受領したPDFファイルの領収書も電子取引データに該当。実質的にすべての企業や個人事業主が対象と考えられる。
紙の書類をスキャンしてデータとして保存する必要はないが、“データでやり取りした文書”については、正しく保存することが求められている。国税庁の配布する電子取引データの保存方法にまとめられているので参照してほしい。
要するに、自社の会計システムを持たず、市販のソフトウェアなどで会計処理をしている中小企業や個人事業主は手間が増えることになる。もちろん各種ソフトウェアも対応していくと思われるが、無駄な出費は避けたい。電子帳簿保存法に完全順守した無償の「電帳Free」を使った簡単な事務処理の流れを紹介しよう。
利用者の登録と事務処理規程の準備
「電帳Free」のインストール直後にするべき作業が2つある。利用者の登録と事務処理規程の準備だ。まずは自社、もしくは事業主の名称、インボイスNo(未登録可)、会計期間を登録する。
続けて“事務処理規程”を登録しよう。未登録では電子帳簿保存法の要件を満たせないため、忘れずに登録しておくこと。電帳Freeのインストール先にあるテンプレートファイル(事務処理規程.doc)、もしくは国税庁のWebサイトからダウンロードしたファイルを編集して、PDFファイルとして保存する。「事務処理規程.pdf」という名前で保存する必要があることに注意。
電子取引データを登録する
電帳Freeでは、送付した文書と受領した文書のどちらも登録可能だ。v1.0.0(4)では、PDFファイル(PDF形式)、または画像ファイル(JPEG/PNG形式)のみに対応。重要な文書は改ざん防止のためにPDFファイルとして保存することが多いため問題ないだろう。ExcelやWordで作成した文書を登録したい時はPDF形式で保存してから登録しよう。
もし、取引先から受け取った文書が、ExcelやWordの形式ならPDF形式での再送を依頼するのが無難だが、スクリーンショットを撮影して登録しても、電子帳簿保存法には準拠する。その場合、元本のファイルは保存しておくこと。
基本的な作業の流れは、登録する電子取引データ(PDF/JPEG/PNG)を電帳Freeにドラッグ、[取引日]を指定し、プルダウンから該当する[取引区分]を選択して、[配布元][品名][取引金額][配布元]を入力して保存となる。
なお、[配布元]と[配布先]の右側にある[...]をクリックすると、最初に登録した自社情報を選択することもできる。[配布元][品名][配布先][メモ]に初めて入力する内容は自動的に「マスター」に登録される(後述)。
[配布元]と[配布先]は間違えやすいので要注意。文書の発行者を考えよう。こちらから送付する文書なら[配布元]は自社、[配布先]は取引先となる。相手から受け取った文書なら[配布元]は取引先、[配布先]は自社となる。
[保存]をクリック後、電子取引データが暗号化されて、電帳Freeのデータベースに保存される。削除や修正ができない状態となり、電子帳簿保存法の要件を満たす。以降、電子取引データの呼び出しや印刷(後述)は電帳Freeから行なう。
[保存]の下にある[保存しデスクトップにコピー貼り付け]は、電子取引データのバックアップに便利な機能だ。電子取引データが[取引日][取引区分][配布元][品名][取引金額][配布元]を規則的に整えたファイル名にリネームされて保存される。
ハードディスクのクラッシュなど、万が一の事態に備えて、[保存しデスクトップにコピー貼り付け]で命名されたファイルを外付けのHDDやクラウドドライブなどに保存しておくと安全だ。電子取引データが飛んだ場合、必要経費などを証明できなくなってしまう。
なお、[取引日][取引区分][配布元][品名][取引金額][配布元]の再登録は可能だが、電子取引データ(PDF/JPEG/PNG)そのものの差し替えはできない仕様だ。登録した電子取引データ自体が間違っていた場合は追加登録となる。[メモ]欄にその旨を入力しておくといいだろう。
電子取引データの表示や印刷は[一覧]画面から行なう
登録した電子取引データの表示や印刷は、画面下の[一覧]画面から操作する。ボタン名が機能を表しているので、操作に迷うことはないだろう。電子帳簿保存法の検索要件は十分に満たしている。
マスターでスムーズに登録できる
利用頻度の高い[配布元][品名][配布先]を登録しておくと、電子取引データの登録がスムーズになるだろう。[登録]画面の[...]をクリックして呼び出せる。電子取引データの登録時に入力した内容もマスターに自動登録されているため、必要に応じてメンテナンスしておこう。
各タブにある「ID」は自動的に付与されるので編集不可。新規追加する時は、最終レコードの「ID」右側のフィールドから内容を入力していく。不要なレコードは[削除]をクリックして削除しておこう。
電子帳簿保存法に完全順守した専用ソフト
国税庁の資料にある「改ざん防止のための措置」や「日付・金額・取引先で検索可能な状態」を個人で構築するのは難しい。「個人事業主・小規模事業主向け」と同社が謳うように、「電帳Free」は洗練された会計システムを持たない事業者の助けになるだろう。ドラッグ&ドロップと少しの手間で法令順守できることを考えると、導入する価値は大きい。
ソフトウェア情報
- 「電帳Free」
- 【著作権者】
- 株式会社システムゼロ
- 【対応OS】
- 編集部にてWindows 10で動作確認
- 【ソフト種別】
- フリーソフト
- 【バージョン】
- v1.0.0(4)(24/01/04)