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AI生成による映画が劇場公開! ワンコイン映画祭も開催! 年末年始のAI動画生成が熱い

イベント・トピックを一挙紹介

AI生成による映画が劇場公開! ワンコイン映画祭も開催! 年末年始のAI動画生成が熱い

 2025年12月、生成AIによる動画制作は、単なる『技術デモ』の枠を超え、エンターテインメントの最前線へと躍り出ようとしています。 「Sora 2」のようなハイエンドなモデルが著作権方面で物議を醸しながら話題をさらう一方で、日本のクリエイティブシーンでは、劇場公開映画から「#総制作費ワンコイン映画祭」といった個人の『ネタ動画』投稿祭まで、多種多様なムーブメントが同時多発的に発生しています。

 今回は、この年末年始に絶対に見逃せない「AI動画生成・年末大トピック」をまとめてご紹介します。 『観る』『創る』『遊ぶ』、そして『未来を感じる』。あなたはどのスタイルでAI動画の波に乗りますか?

【Topic 1】観る・驚く:世界初!? 経験を積んだ声優による全編生成AIの長編映画『AIマチルダ』劇場公開

 まず最大のニュースは、AI動画がついに『映画館』という聖域に足を踏み入れたことです。 2025年12月19日(金)より、映像の全編を生成AIで制作した長編SF映画『マチルダ・悪魔の遺伝子』(英題:MATILDA - The Devil's Gene -)が、横浜シネマ・ジャック&ベティや池袋シネマ・ロサほかで一般公開されます。

『マチルダ・悪魔の遺伝子』

ここが凄い!

  • 全編AI制作:バルセロナ在住の声優・遠藤久美子氏(「あなたとコンビにファミリーマート」のキャッチーなサウンドロゴやムーニーマンなど出演作品1000作品以上)が、俳優、声優、カメラ、マイクを一切使わず、映像からセリフ音声までAIで生成。
  • 70分超の長尺:数秒の動画生成をつなぎ合わせ、ストーリーの一貫性を保ったまま70分の長編劇場作品を原作者自らを含むたった2名、4カ月で完成させ、世界の映画祭で受賞しています。

 筆者らは、この映画『マチルダ・悪魔の遺伝子』の特別上映会を12月22日に池袋で企画しています。遠藤久美子監督も来日される可能性が!

 #AIマチルダ 特別鑑賞会 で検索してみてください。

特別上映会を12月22日に開催

【Topic 2】伝説の開発者が作った「MulmoCast」

 元マイクロソフトでWindows 95/98や「Internet Explorer」などの開発に携わった伝説のエンジニア、中島聡氏らが仕掛ける国産の無料動画生成ツール「MulmoCast」と、賞金総額にも注目の「AIショートフィルムフェス」です(Windows/Mac対応)。

「台本を書けば、動画になる」国産無料ツール「MulmoCast」とAI映画祭

 「Sora」のような『テキストから映像を生成する(Text-to-Video)』ワンショットの動画生成ツールとは異なり、台本(スクリプト)を用意すると、AIが構成を考え、画像とナレーション音声を生成し、プレゼンテーション動画やショートドラマとして出力してくれる『Script-to-Video』ツールです。

主な特徴:

  • 無料:アプリ自体の利用は無料です(別途OpenAIなどのAPIキーが必要)。
  • ローカル動作:Windows/Macのアプリとして動作するため、手元でじっくり制作できます。
  • 編集可能:生成された画像や音声、字幕は後から差し替えや修正が可能です。
「MulmoCast」
「Mulmocast」で作ったサンプル動画-プロンプトは『窓の杜を紹介する動画を作って!』だけです

賞金総額90万円!「AIショートフィルムフェス」開催

 この「MulmoCast」を使った映像コンテスト「AIショートフィルムフェス」が開催されています。審査員も豪華です。開発者の中島聡氏に加え、『宇宙兄弟』『ドラゴン桜』などを手掛けた編集者の佐渡島庸平氏、映像作家のオースミユーカ氏、そして筆者(白井暁彦)も参加します。

「AIショートフィルムフェス」開催
  • グランプリ:賞金50万円
  • 各部門賞:賞金10万円(ビジュアル賞、アニメーション賞など)
    「Sora 2」で作った動画を組み合わせることも可能です。制作者の『演出意図』や『構成力』が試される、本格的で非常にクリエイティブなツールです。いままではカメラと動画編集ツールで作っていた作品を『スクリプトとAIでなんとかしよう!』という挑戦は、なんとも不思議な感覚があります。

 審査の結果発表は12月13日(土)昼、YouTubeライブで開催です。どんな新しい才能が発掘されるのか、技術と表現の融合点を目撃してください。

【Topic 3】遊ぶ・参加する:あえてチープに『#総制作費ワンコイン映画祭』

 ハイエンドな映画やツールがある一方で、AIの『ハルシネーション(幻覚)』や『不完全さ』を逆手に取った、愛すべきB級映画ムーブメントも爆発しています。 その名も「#総制作費ワンコイン映画祭」。

なぜ「ワンコイン」?

 発端は、動画生成AI「Sora 2」などにプロンプトで『予算5億円』と指示すると高品質になるなら、『予算5ドル(ワンコイン)』と指示したらどうなるか?という逆転の発想実験でした。 結果、出力されたのは『ダンボールで作ったようなサメ』や『書き割りのような背景』。このチープさが逆に『味がある』『「プロンプトの引き算の勉強になる』と話題になり、またたく間に数百作品が投稿されるお祭り騒ぎに。



参加方法

 筆者もAICUもこの祭典に「AICU賞」を新設して参戦します。雑誌掲載や上映会のチャンスも!

#総制作費ワンコイン映画祭の締め切りは12月17日
  • 募集内容:「予算5ドル」等のプロンプトで作ったユニークなAI動画
  • エントリー期限:2025年12月17日(水)まで
  • 必須ハッシュタグ:#総制作費ワンコイン映画祭

 Soar2のキャラクターカメオ機能を使ってAiCuty エレナ・ブルームさんにラップのリズムでプロモーションビデオを作ってもらいました!



 プロンプトは『@aicuty.elena 「予算5ドル」等のプロンプトで作ったユニークなAI動画を募集中。エントリー期限は12月17日まで!ハッシュタグは #総制作費ワンコイン映画祭 ポップな絵柄で 1秒ごとシーン切り替え ダイナミックな映像、マンガ風の描線、ちびキャラ、あとはお任せ、自己紹介。 ラップのリズムでポップな曲をBGMにして早口でポップに歌う カワイイフォントと色合いで歌詞を入れたショート動画』です。



【Topic 4】感じる・未来:NHKが描く火星とAIの融合『火星の女王』

最後は、公共放送NHKが放つSF超大作です。 放送100年特集ドラマ『火星の女王』。
直木賞作家の小川哲による日本の長編SF小説が原作です。人類の火星移住から40年後、火星での未知の物質の発見をきっかけに、火星と地球に生きる人々の運命を描きます。

業界視点の見どころ

 舞台は2125年の火星。当然ロケはできません。これまでのSFならフルCGやセットで作っていた風景ですが、業界では今、こうした背景制作やプロップデザインに生成AIを活用する動きが加速しています。 クレジットに『AI使用』とデカデカと出るわけではなさそうですが、SF映像表現のための、プロダクション・リデザインが進んでいます。100年後の火星を舞台にした実写ドラマの背景に、最新のテクノロジーがいかに溶け込んでいるか。ドラマ本編と、豪快なキャストとの気合の入った映像技術との融合、お茶の間の反応が気になります。

 第1回は12月13日(土)放映です。

 他にも筆者が観測している限りでは、この年末年始に数多くの映像シーンで動画生成AIが使われる準備が進んでいます。SNSでのバズ動画やホームビデオだけでなく、広告、サイネージ、ドラマ、アニメや劇場上映作品など……「AIに仕事が奪われる」と恐れるフェーズは過ぎ去りました。 映画館で、PCの前で、あるいはスマホ片手に。観る側も創る側も、この多様な『AI動画元年』の年末年始を存分に楽しんでいきましょう!

しらいはかせ(白井暁彦)X@o_ob

AICU Japan株式会社 X@AICUai 代表/作家/生成AIクリエイター/博士(工学)。

「つくる人をつくる」をビジョンに、世界各地のCG/AI/XR/メディア芸術の開発現場を取材・研究・実践・発信している。