#モリトーク

ファイルを管理しない時代へ

(12/08/28)

「Clover」「Clover」

 ファイラーをはじめとする、ファイル管理に関連するソフトといえば、かつてはオンラインソフトの花形的な存在だった。そのピークは、Windows XPが登場し、ハードディスクの容量も急増し始め、一世を風靡した「Google デスクトップ」が公開された時期あたりだろうか。しかしその「Google デスクトップ」も2009年にアップデートがストップし、2011年には終焉を迎えた。

 もちろん現在でも、ファイル管理に関連するソフトには一定の需要があり、窓の杜が先週の記事で取り上げた「Clover」は読者から多くの関心を集めた。同ソフトは、エクスプローラにタブ切り替え機能を追加するもので、それはエクスプローラに一番欠けている機能であるため、その注目度の高さもうなずける。また、「FenrirFS」や「秀丸ファイラーClassic」といった、新作のファイル管理ソフトも最近になって誕生したほか、「まめFile」のような老舗のファイル管理ソフトも開発が継続している。

 ここで興味深いデータを紹介しよう。マイクロソフト社のWindows 8開発ブログによると、「TeraCopy」や「QTTabBar」など、有名なエクスプローラ用アドオンおよびファイル管理ソフトをインストールしているユーザーは、全体の0.45%に過ぎないという。この数字が単純に需要の規模を示しているとは限らないが、以前と比べれば、その需要が減少しているのは間違いなく、とくにここ数年はその傾向が顕著に現れていると感じる。

 最大の理由は、パソコンの作業が“ローカル”から“Web”へと移行したことにあるだろう。たとえばWebメールを利用すると、メールだけでなく、あらゆるファイルも添付ファイルとして管理できるほか、データ保全の信頼性もローカルで多重に保存するより楽に手に入る。また、「Google Chrome」や「Firefox」をはじめとするWebブラウザーは、ブックマークなどの各種データをクラウド技術で自動的にバックアップ・同期する。つまり、Webを中心としたホームユースなら、もはやローカルでファイルを細かく管理する必要性があまりないのだ。

Windows 8に搭載される“SkyDrive”アプリ(開発ブログより引用)Windows 8に搭載される“SkyDrive”アプリ(開発ブログより引用)

 さらにWindows 8では、オンラインストレージの“SkyDrive”が統合される。そして、Windows 8専用のソフトである“Windowsストアアプリ(旧名称はMetroスタイルアプリ)”にはSkyDriveへアクセスする仕組みが提供されるため、あらゆるアプリがクラウド上のデータを相互に利用できるようになる。しかも、“Windows Live ID”を使ってWindows 8にログインしておくと、アプリがSkyDriveへアクセスするときに、その都度サインインを求められることもない。

 そうなれば、ユーザーはデータの存在を意識することなく、アプリが勝手にデータを管理する時代になるというわけだ。これはあくまでホームユースの場合であって、ビジネスユースやクリエイティブな用途では、これまでと同様にユーザーがファイルを管理する時代はまだまだ続く。ファイルを管理しない時代、それがコンピューターの最終形ではないだろうか。

(中井 浩晶)