【第32話】
ガジェットの繁栄と衰退、そして復活
(12/11/06)
「Yahoo!ウィジェット」および同サービスが来月12日で終了する。米Yahoo!で公開されていた英語版の「Yahoo! Widget Engine」も今年4月11日付けですでに終了しているため、これで完全終了となる。同ソフトの前身である「Konfabulator」は、ガジェット・ウィジェット実行環境の元祖と言われており、そのほかのOSやソフトにも大きな影響を与えてきた。
その代表例がWindows Vista/7のガジェットであり、「Google デスクトップ」や「Opera」もWindows Vistaのそれを先取りする形でウィジェットの仕組みを取り入れたほか、その後を追うように「Adobe AIR」も登場した。これらのガジェット・ウィジェットはWebの技術がベースとなっており、開発には高度なプログラミングの知識が不要なため、Webコンテンツ制作者なども手軽に参入できることが特長だ。
窓の杜でも数多くのガジェット・ウィジェットを紹介し、そのなかにはユニークなものもあったが、時計や天気予報などのアクセサリー系が中心だった。ガジェット・ウィジェットはその性質上、CPUやメモリの使用率を表示するシステムモニターに適しており、読者の関心もその傾向があっただろう。
ところで、本記事のタイトルに“繁栄”と綴ったものの、筆者の本音を言えば、ガジェット・ウィジェットが“繁栄”と表現できるほど盛り上がったという実感はあまりない。なぜなら、誰もが使っているような定番ものがあったわけでもなく、アクセサリー以上の価値を見出したものも少ない上、日本国内では企業の販促ものが目立ったからだ。いま改めて考えてみると、ガジェット・ウィジェットの人気は、Windows Vista発売の前後をピークにした、ほんの一瞬のことだったのかもしれない。
たとえば、「Google デスクトップ」の開発は2009年にストップしていたので、同ウィジェットの実質的な活動期間は3年にも満たなかったであろう。また、「Opera」のウィジェットは今年6月公開のv12で廃止されている。そして、大々的に発表されていないため知らない人も多いと思うが、Windows Vista/7用のガジェットも事実上サポートが終了しており、継続利用する場合には注意が必要であると、マイクロソフト社は警告している。
このように「Adobe AIR」だけを残し、その姿を消すことになったガジェット・ウィジェットだが、そのコンセプトは、Web技術による開発も可能なWindows 8のWindows ストアアプリへと引き継がれている。つまり、マイクロソフト社は一度衰退したものを復活させることになるが、今回はアプリ開発者にも積極的にアピールし、ハードウェア業界も巻き込んでいるので、世界的にヒットするアプリが日本人の手によって生まれるような盛り上がりを期待したいところだ。