【第35話】
続・初心者向けDo Not Track講座
(12/11/27)
先週の第34話にて、“Do Not Track”は『トラッキング拒否』の意思を示す仕組み・機能であり、その意思を尊重するかどうかといった判断は今のところWebサイト・Webサービス側に委ねられていると解説した。現時点の“Do Not Track”は環境として不完全なため、整うまで待たなければならないと思った人もいるかもしれないが、トラッキングを拒否する手段はそもそも“Do Not Track”だけではない。そこで今回は前回の続きとして、“Do Not Track”への理解を深めるためにも、トラッキングを拒否する別の手段を紹介したい。
ほとんどのトラッキング技術は、“Cookie”と呼ばれるファイルを通じて構築されている。そのCookieは、WebサイトおよびWebサービスがWebブラウザーとの間で何らかのデータを共有するためのファイルであり、WebサイトやWebサービスごとに作成される。そして、WebブラウザーのユーザーがどのWebページを閲覧したのか、Cookieに記録しておけば、WebサイトやWebサービスはそのユーザーの閲覧履歴を共有データとして参照できるという流れだ。
つまり、Cookieへの書き込みをブロックしたり、Cookieを削除してしまえば、トラッキングを拒否できることになる。WebブラウザーにはCookieの取り扱いを変更する機能が搭載されており、たとえば「Google Chrome」の場合、設定画面の“プライバシー”にある[コンテンツの設定]ボタンをクリックすると、Cookieを削除・ブロックしたり、例外を設定することができるほか、“シークレット”モードを使用すれば、ウィンドウを閉じるたびに全Cookieが自動で削除される。
ここで注意すべきことがある。CookieはWebサイト・Webサービスへのログイン状態を保持するために使われたりと、トラッキングを実現するためだけに利用されているわけではないので、なにも考えずにCookieを削除・ブロックするとデメリットのほうが大きくなってしまう。そのため、トラッキング技術を多用するWeb広告サービスなどでは、“オプトアウト”と呼ばれる仕組みを提供している。
トラッキングにおけるオプトアウトとは、WebサイトやWebサービスごとにCookieを無効化する仕組みであり、ほかのCookieはその影響を受けないのが特長だ。その操作も簡単で、各Webサイト・Webサービスが専用ページに設けているボタンをクリックするだけでよい。下記にGoogle社と楽天のオプトアウトを挙げておくので参考にしてほしい。ただしオプトアウトには、全Cookieを一括削除した場合に解除されてしまう性質があり、「Google Chrome」向けにはその解除を防止する拡張機能「Keep My Opt-Outs」が公開されているので、こちらも活用するとよいだろう。
このように“Do Not Track”以外の手段でトラッキングを拒否しようとすると、それなりの知識が必要になるため、決してユーザーフレンドリーとは言えなかった。その点、“Do Not Track”はとてもわかりやすく、仕組み・環境として普及することが期待されているというわけだ。