杜のVR部
第43回
オススメの作品はこれだ!東京ゲームショウで体験する製品版クオリティのVR
揃いつつあるハードウェアとソフトウェアへの期待
(2015/9/18 19:59)
9月17日から20日まで開催されている東京ゲームショウ(TGS)では、VRが一つの目玉としてさまざまな企業がVRのコンテンツを出展している。本来毎週火曜日に掲載している本連載だが、今回TGSが開催されたため特別レポートをお送りする。
VR関連の展示の中でも、ハードウェア、ソフトウェアともに完成度の高い体験ができるのはもちろんハードウェアメーカーのブース。PC向けのOculus Rift、スマホ向けのGear VRの開発を進めるOculus VR(ブース番号2-N05)、そしてPlayStaiton 4向けのProject Morpheus改め“PlayStation VR”を開発中のソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE、6-S01)のブースだ。両社ともひときわ大きな体験コーナを設けている。とくにハードウェアに関しては、いずれも製品版かそれに等しいデバイスを展示しており、非常にハイクオリティな体験が可能だ。
Oculus VR社のブースでは、Oculus Riftに関しては8つのゲームから好みに合わせて選ぶことができ、Gear VRに関しては基本的にランダムで4つのコンテンツから1つを体験することになる。PlayStation VRも、19、20日の一般公開日には遊びたいタイトルを10個から選ぶことができる。展示されているコンテンツのうち、VRで遊ぶことによってとくに体験が面白くなったコンテンツを今回はピックアップして紹介しよう。
なお、両ブースとも初日である17日の段階でかなりの人気となっている。Oculus Rift、Gear VRの体験は毎朝ブースにて整理券を配布、またPlayStation VRの体験は、会場でQRコードを使った事前予約が必要となる。体験を希望する方は開場後にまず各ブースへ行くことを強く勧めたい。
- PlayStation VR | プレイステーション オフィシャルサイト
- http://www.jp.playstation.com/psvr/
「Fly to KUMA」(Oculus Rift)
これまで人気スマホゲーム「白猫プロジェクト」のOculus Rift版、Gear VR版を配信してきたコロプラはOculus Rift向け完全新作「Fly to KUMA」を展示。クマたちをスタートからゴールまで導くために、道中にある障害物を青い板やブロックを置いて防ぐ、というパズルゲームだ。ワラワラと動くクマたちは愛嬌があって非常にかわいい。任天堂の名作「ピクミン」シリーズやSCEのVR向けゲーム「THE PLAYROOM」に登場するロボットたちのように、小さな存在が多数群れているさまはかわいいものであり、VRによってそのかわいさはまるでぬいぐるみやフュギュアが、小さな着ぐるみのように目の前で動いているような感覚になる。
また、パズル自体も青い板やブロックを掴んで回したり位置を操作して配置するというもので、ステージを見渡しながら使えるものを探し、頭を捻ってプレイする、かなりやりごたえのある出来に仕上がっている。プレイヤーのカメラは頭を動かす以外は固定なので酔うこともなく、サクサクとステージをクリアしながら進んでいくことができる、いわばVR向けのカジュアルゲームとも言えるかもしれない。
「Edge of Nowhere」(Oculus Rift)
Oculus Rift製品版のローンチタイトルとしても発表されている3人称視点のサバイバルアクション。行方不明となった知り合いを捜索するために不気味な氷の世界を探索する。ガラガラ音を立てて足元の氷山が崩れたり怪物に追われる緊張感、光のない洞窟を松明で探索する際の恐怖感など、3人称視点なのでプレイヤーは主人公の背後にいる形になるが、自分も一緒になってまるで必死にサバイバルを繰り広げている気分になる演出は秀逸だ。
「EVE: Valkyrie」「Lucky's Tale」「Airmech」(Oculus Rift)
こちらの3作品は8月のCEDECにも展示され、第40回でレポートをお送りしたゲームだ。息を呑むほど超美麗な宇宙空間でドッグファイトを楽しむ本格的なスペースSTG「EVE: Valkyrie」、そして3人称視点ながら主人公のキツネと一緒に冒険をしている気分になって愛着が湧いてくる3Dアクション「Lucky's Tale」、ミニチュアの戦車などを配置して敵軍を倒すリアルタイムストラテジーの「Airmech」。いずれも『VRでそのジャンルを楽しもうとしたらどうなるか』を突き詰めた作品であり、それぞれ楽しさは異なるものだ。
RICOH THETA S × Gear VR(Gear VR)
ゲームショウということもありフル3DCGのコンテンツが多い中で、サムスンとOculus VR社が共同開発したGear VRの展示では実写のVRコンテンツが展示されていた。日本のカメラメーカー、RICOHが販売している手軽さがウリの360度カメラの新型“RICOH THETA S”との連携コンテンツだ。RICOH THETA Sで撮影した写真を、Gear VR上で操作しながら選択し、そのままWi-Fiを通じて転送、VRで楽しむことができる。手軽に360度撮影が可能なカメラと、手軽にVRを体験できるデバイスの融合により、実写のVRコンテンツの可能性を感じさせられる体験だ。
「RIGS: Machine Combat League」(PlayStation VR)
PlayStation VR向けの6人同時プレイができるロボットアクションゲーム。プレイヤーはロボットに乗り込み、3対3のチームに分かれて、ステージ中央にあるリングに入った回数を競う。もちろん武器を使った妨害が可能。また、移動に特化したモード、攻撃モード、HPを回復するリペアモードという3つのモードを切り替えながらステージを駆け抜ける。
ただでさえVRによって『ロボットを自分が動かしてる!』という感動を味わえる上に、実際に他のプレイヤーとアツい対人戦をそれもチームで行えることで、“VRにおける対人戦・協力プレイの面白さ”を味わうことができる。試合は常に実況され、観客の声援も聞こえる中で行われる。制限時間内にはハーフタイムなども設けられており、スポーツ選手になったかのような気分でプレイができる。敵の猛攻をくぐり抜け、リングに飛び込んでゴールしたときの達成感は、サッカーのシュートを決めたときと同じ感覚だ。これまでプレイしたどのVRゲームよりも闘争心が掻き立てられたことは強調しておきたい。
「体感合体『アクエリオン・EVOL』」(PlayStation VR)
ロボットアニメ『アクエリオンEVOL』の特徴的な2つのシーンを体験するというもの。ロボットアニメということもありプレイヤーは主人公機に搭乗したパイロットという設定だ。体験するシーンは、仲間の機体と合体してアクエリオンになるシーン、そして敵に向かって必殺技の無限拳(むげんパンチ)を繰り出す戦闘シーンだ。精巧に再現されたコックピットや仲間からの連絡が入る際に顔が計器の上に表示されるUIなどが、雰囲気を盛り上げる。
さらに、合体シーンではアニメで流れるシーンがあえて平面のアニメの描写のまま画面の一部に割って入ることで、『アニメの世界にいるんだ』という感覚が逆に強まるという体験になった。また戦闘シーンでは、ロボットの手と自分の手の動きがPlayStaiton Moveコントローラーによって同期。最後の無限拳を繰り出すシーンでは、パイロットである自分が照準を合わせて腕を前に突き出すことで無限拳を繰り出せる仕掛けになっており、動きが同期することによる“その世界にいる感覚”の強さを実感できる。
「THE PLAYROOM VR」「サマーレッスン」(PlayStation VR)
こちらの2つのコンテンツもすでに第36回でレビューをお送りしているものだ。しかし、「THE PLAYROOM VR」では新たに遊べるコンテンツが増えている。PlaySation VRを被ったプレイヤーが怪獣となり、それ以外の普通にテレビ画面を見ているプレイヤー(最大4人)が操作する小さなロボットたちを追いかけたりして遊ぶゲームや、猫役とネズミ役になって遊ぶだるまさんが転んだのようなゲームなど、複数のパーティゲームをプレイ可能。VRを体験しているプレイヤーと、それ以外の複数のプレイヤーで遊べるという設計が秀逸で、ワイワイと楽しめるものになっている。
また、「サマーレッスン」はVRにおけるキャラクターとのコミュニケーションをテーマにしたコンテンツ。相手を人間であるかのように感じ、ついつい感情がこもってしまうデザインに注目だ。今回は、外国人の金髪女性に英語を教えるというE3版に加えて、昨年制作された日本人の女子高生に部屋で家庭教師をするバージョンも体験可能になっている。
今回は、ハードウェア的にも性能が圧倒的なOculus VRとSCEのブースのレポートをお届けしたが、会場にはグリーの協力型VR謎解き脱出ゲーム「サラと毒蛇の王冠」など、開発者版のOculus Rift DK2を使った展示が数多くある。ソフトウェアの作り込みが秀逸なものもあるため、合わせて体験していただきたい。
17、18日の2日間は業界関係者とプレス向けのビジネスデイ、そして週末19、20日はいよいよ一般公開日となる。2016年に製品版が発売され、いよいよ盛り上がってくるVR。この連載を通じて魅力を伝えてはいるが、百聞は一体験に如かず。実際にどのような完成度に仕上がっているかは、体験しないとわからない。混雑する中で整理券や予約を取ることは難しいかもしれないが、ぜひその完成度の高さを“体験”していただきたい。