杜のVR部

第65回

VRで一緒にできることがどんどん増えていく「AltspaceVR」

Gear VR向けアプリの開発中版を体験!その課題は何か

 VRはVRヘッドマウントディスプレイを被って体験する非常にパーソナルな体験だ。隣のモニターに視界を映したとしても、体験そのものを伝えているわけでもなく、共有できるわけではない。ではVRにソーシャル性がないのかというとそうではない。VRの中で現実世界の距離と関係なく、世界中とつながることができる“ソーシャルVR”を実現しようとする動きが始まっている。

 第49回で紹介したGear VR向け「Ouclus Social Alpha」はその一歩となるものだ。今回紹介する「AltspaceVR」は、同一のVR空間内で動きまわったりするなど、より“一緒にできること”が増えたサービスだ。

どのデバイスからも、VRでなくてもアクセスできるプラットフォーム

 「AltspaceVR」は、VRのソーシャル・プラットフォームだ。そのため特定のデバイスに依存することなく、どのVRデバイスを使った場合でもアクセスができるような形を目指している。Oculus Riftは開発者版のDK2版、そして1月にはGear VR版がリリースされた。また、VRデバイスを持っていなくてもアクセス可能。

 どのデバイスでアクセスしても自分のアバター選択や、その後の部屋選択を行って、VR空間へとログインすることになる。

 今回はGear VR版のレビューをお送りしたい。Oculus Rift版およびVRデバイスを使わないPC版ではアカウントを作成し、自身のアバターを登録することができるが、Gear VR版ではゲストとしてのログインのみ。アバターを選ぶこともできない。

 部屋は目的別に色々と用意されている。“Welcome Room”という初心者向けの部屋。チェスなどのボードゲームを遊ぶことに特化した部屋など。目的別に部屋が用意されている。

Gear VRではログイン機能は未実装。ゲストでのログインとなる
部屋も色々と用意されている

 部屋ではちょっとしたミニゲームを遊ぶことができるほか、TRPG“ダンジョンズ&ドラゴンズ”などといったアナログゲームを遊ぶこともできる。また、YouTubeなどの動画を同時に見ることも可能だ。

 首の動きは現実のものが忠実にアバターにも反映されるし、声は各プレイヤーとの距離感に応じてて聴こえてくるため、臨場感がある。移動はシンプルで、移動したい先を見てタッチパッドをタップすることでテレポートできるほか、首をひねり続けるのは疲れるので、前にスワイプすると向きを変えることができる。

“Welcome Room”という多目的部屋
メニューを選ぶと色々なゲームなどが目の前に展開する
YouTubeで話題となった“Nyan Cat”も出現

できることが増えたら、人も増えるのか、課題は何か

 第49回で取り上げた「Oculus Social Alpha」は同じ部屋でゲーム実況サービスのTwitchと動画配信サービスのVimeoを見るという簡単なものだった。

 「AltspaceVR」は同じ動画配信サービスでもYouTubeを見ることができるのは大きい。また、ゲームもできるため、VRの中でできることの幅が広がった。また、機能としても移動ができなかったところから移動も可能になり、“人らしさ”も感じられるようになった。

 一方で課題も感じられる。Gear VR版はベータ版とはいえ、サービス自体はさまざまなプラットフォームからアクセスできる。しかし、まだまだ接続人数は少なく、一部屋に1、2人で空室も多い。

部屋の数は多いものの人は少ない

 体験してみて感じられる課題は2つだ。1つはアクセスする動機作り。「Altspace VR」では定期的にイベントが開催される。その際には全世界からのアクセスがあるようだ。しかし、何もないときに『さて、少し行ってみるか』という場所にはまだなっていないというのが現状だ。

 日本のスタートアップFictboxが展開している“cluster.”というサービスがあるが、こちらはVR内でのイベント開催に絞ったサービスとなっている。「AltspaceVR」も、しばらくはイベント中心のサービスになるのではないかと思われる。

並ぶイベント予定。毎日のようにイベントが行われている。ユーザーもイベントを主催可能だ
同時に1,000人まで接続が可能と謳う“cluster.”。2月には実験的に180人が集まるVRライトニングトークイベントが開催された

 またもう1つの課題は、“人らしさ”。つい最近人型のアバターが実装されたが、まだ首の動きだけでは人らしさが足りないというのが実際のところ。たとえばOuclusが最近開発者向けにリリースした、音声に合わせて唇の動きを再現する機能を利用したり、また思い通りに手が動くと非常に人間らしくなってくるかもしれない。Ouclus Rift版は、手のコントローラーであるLeap MotionやPerception Neuronなどのデバイスに対応しているとのことだ。

 すでにGear VR向けだけでも3つのソーシャルなアプリが登場している。その中ではまだまだ課題はあるが、伸びしろの大きい「AltspaceVR」。今後の機能実装などにも注目したいところだ。

ソフトウェア情報

「AltspaceVR」
【メーカー】
AltspaceVR, Inc
【開発者】
AltspaceVR
【対応ハードウェア】
Gear VR
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
0.45.35

(もぐらゲームス:すんくぼ)