週末ゲーム

第658回

“TP”を削り合う戦術的なバトル。ボス戦も充実のノンフィールド・ダンジョンRPG「ONE world QUEST」

個性豊かな9つのクラスでパーティ編成。豊富な装備品によるカスタマイズも楽しい作品

 『週末ゲーム』では、インターネット上でたくさん公開されているゲームの中から、編集部がピックアップした作品を毎週紹介していく。今回は、ノンフィールド型のダンジョンを攻略していくRPG「ONE world QUEST」を紹介しよう。

9人のキャラクターで3人パーティを組み、ダンジョンを攻略していくバトル中心のRPG

ノンフィールドタイプのダンジョンを攻略していくRPG
ワールドマップは1画面にまとまっている

 「ONE world QUEST」は、9人のキャラクターで3人パーティを組み、世界各地のダンジョンを攻略していくRPG。スキルで使用するポイントを削り合うなど戦略性の高い戦闘システムや、豊富な装備品によるキャラクターカスタマイズが魅力の作品となっている。

 基本的なストーリーは選ばれた勇者とその仲間達が魔王討伐に向かうというオーソドックスなもので、会話イベントなどは要所要素でピンポイントに挟まれる程度と控えめ。ダンジョンや町は選択肢で移動するノンフィールドタイプだ。また、ワールドマップは1画面に収まっており、こちらも選択肢でダンジョンや別の地域へ移動する。一方で戦闘に関する要素は多くボス戦も多数用意されており、戦闘を中心に据えたメリハリの効いた作りが印象的だ。

 ゲームの開始時には、まず3人のキャラクターから主人公を選択。そこで選ばなかった2人を含む8人のキャラクターを仲間として3人パーティを組める。主人公以外のパーティメンバーは最初の地域にある城へ戻れば随時入れ替えが可能。クレリック、ソーサラー、アサシンといったクラス(職業)を備えたキャラクター達はそれぞれ、レベルアップで増えていく固有の特技や必殺技を持っており、さまざまな戦闘スタイルを楽しむことができる。

 ダンジョンは先のエリアへ進むか、前へ戻るかを選ぶだけの一本道で、中間地点やボスの直前には入口と相互に行き来できるワープゾーンが設置されている。ワープゾーン以外では移動するたびに戦闘が発生するが、1つのダンジョンのエリア数自体は少なめ。その分、敵はザコ戦でも油断すると苦戦するバランスだ。

 また、各ダンジョンには適正レベルが設定されており、パーティの平均レベルがそれ未満であれば、それ以上の時に比べて取得経験値が5倍になるという仕様によってレベルはサクサク上がっていく。総じてテンポがよく、ゲーム進行の密度が濃い印象だ。

 戦闘後には宝箱が登場することも。宝箱は内容が固定で一度だけ取れるものの他にランダムでドロップするものもあり、レアなアイテムや装備品を入手できるチャンスだ。こうしてパーティを強化しつつダンジョンの奥まで踏破し、ワープゾーンから一度町に戻って万全の準備を整えてボスに挑む……というのがゲームの基本的な流れとなる。

ゲーム開始時に主人公を選択。選ばなかったキャラクターも仲間として使用できる
宝箱のランダムドロップにより、ノンフィールドながら探索気分も味わえる

“TP”の制御やヘイト管理が重要となる戦闘システム。戦術性の高さが魅力

戦闘はターン制のコマンド選択型。特技や魔法、必殺技を駆使して戦っていく

 戦闘はターン制のコマンド選択型。本作の戦闘システムは、その制作ツールであるRPGツクールVX Aceのデフォルトシステムをベースとしつつ、独自要素が加わっている。その最たるものが、魔法を使うためのMPとは別に存在する“TP”の扱いだ。

 TPは通常攻撃や魔法でダメージを与えるといった戦闘中の行動により溜まっていくポイントで、これを消費して特技や必殺技を発動できる(必殺技はMPも合わせて消費)。ここまでは一般的だが、特徴的なのはダメージを食らって増えることはなく、むしろ減ってしまうこと。TPを利用する技の発動前にTPを削られて発動に必要な量に満たなくなると、技が不発になってしまう。

 一方、敵のTPもゲージ化されており、こちらの攻撃で削ることにより大技の発動を阻止するといった要素もある。さらに、TPの量は一部を除く特技や魔法、必殺技の威力にも影響し、TPが多いほど高いダメージを与えることが可能。なるべくTPを溜めてから技を出したいが、削られる前に使い切った方が安全……といったジレンマが発生する。

 TPは防御によっても増加するが、現在値が高いほど防御時の増加量は落ちていくので、ひたすら防御でTPを稼ぐのは効率的ではない。また、敵のTPを削る効果が高い技やTP上昇効果のある魔法なども存在する。こうした要素を駆使して自分達のTPをなるべく高く維持しつつ、敵のTPをいかに削って手痛い攻撃を抑えていくか、というのがバトルの肝となるわけだ。

ダメージを受けるとTPは減少する。これにより特技や必殺技の発動に失敗してしまうことも
ダメージよりもTP削りを重視した技なども存在。状況に応じて活用していく

 もう1点、ヘイト管理の要素があるのも特徴だ。敵に与えたダメージや回復魔法の効果に応じてパーティメンバーごとのヘイト値が加算され、その相対差によって敵の攻撃対象となる確率を表す“ターゲット化率”が変化するという仕組み。ターゲット化率はゲージとして表示される。

 クラスの特性や装備品によって狙われやすさ(ターゲット化率の上がりやすさ)は変化するほか、ヘイト値を制御する特技などもあり、こうした要素を把握して打たれ弱いキャラクターへ攻撃がなるべく行かないようにすることでパーティの生存力を高めることができる。いわゆるタンク型のクラスには攻守のバランスが取れたパラディン、防御特化のガーディアン、回避タイプのモンクがあり、誰か1人はパーティに入れると安定するだろう。

 防衛面では盾の活用もポイント。パラディンとガーディアンが装備できる大型盾は、狙われやすさを向上させられる上に確率でダメージを一定量カットでき、まさにパーティの盾として活躍するのに最適。ダメージカット時にはエフェクトも発生し、タンクの有り難みを実感することができる。そのほか、より多くのクラスが装備できる小型盾も存在し、こちらはダメージカットの効果はそこそこだが回避率も上昇するという形で特徴付けられている。

3人いるタンク型クラスのキャラクターの特技は、一定ターンの間HPの少ない仲間をかばう、使用ターンだけすべての攻撃を身代わりに受ける、ヘイト値を一気に上げて攻撃を引き付けるなど、同じタンク系でもそれぞれスタイルが異なる
大型盾は狙われやすさが上がり、かつダメージカットの効果も高めと頼もしい

 プレイの印象としては、防戦に回るとどんどんTPを削られてジリ貧になっていくので、役割分担をしっかりとしつつ攻撃の手を緩めないのが重要。敵・味方の行動順も考慮に入れて、TPをどう溜めてどう使うのか、タイミングを計る戦術を楽しめるバトルに仕上がっている。

組み合わせ自由の装備枠により多彩なキャラクターカスタマイズを楽しめる

4つの装飾品欄に、追加防具やアクセサリなどさまざまな装備品を自由に組み合わて装備できる

 豊富な装備品によるキャラクターカスタマイズも本作の醍醐味だ。装備枠は武器と体防具のほか、“装飾品”の枠が4つあり、ここに盾や頭装備といった追加の防具や、さまざまな効果を持つアクセサリを自由な組み合わせで装備可能。アクセサリは特定のステータスを底上げするもの、状態異常への耐性を付けるもの、特技や必殺技を使用可能にするものなどさまざまで、複合的な効果を持つものも多い。

 魔法も各属性の“ジェム”を装飾品欄に装備することで使えるようになる仕組み。特に魔法を中心に戦うクラスの場合は限られた装備枠を能力の強化と魔法の追加へどう割り振るか、またどの属性の魔法を選ぶか……といった試行錯誤が悩ましくも楽しい作りとなっている。

 また、魔法のジェムは誰でも装備できるが、多くの魔法は魔法力のステータスが一定以上の場合のみ利用可能で、魔法力の高いクラスの方が同じジェムでもより多くの魔法が使えるという仕組み。とはいえ物理系メインながらある程度の魔法力を持つクラスもあり、装備品による魔法力の底上げも利用して魔法戦士のように戦う、といったカスタマイズも可能だ。

 装備品などのアイテムはダンジョンでのドロップに加えて店売り品もさまざまなものがあるほか、町である程度の買い物をすると“宝箱券”を貰うことができ、中身がランダムの宝箱と引き換えが可能という福引きのような要素も用意されている。さらに、ある条件でランダムに登場する謎の人物が独自の限定アイテムを売ってくれるなど、アイテムコレクションも本作の楽しみのひとつ。そのほか、素材を消費して鍛冶屋で武器を作成する要素もあり、強化された武器には多くの場合、さまざまな特殊効果が付与される。

魔法は1つのジェムで4つ覚えることができるが、上位の魔法を使うには一定値以上の魔法力が必要になる
宝箱券は最大5枚まで同時に使うことで、よりレアなアイテムが出やすくなる仕組み

9人全員を入れ替えながら戦う総力戦も!エクストラボスなどやり込みも充実の作品

 本作の戦闘はやや難しめに調整されており、特に中盤以降のボス戦は、そのダンジョンの適正レベル以下で臨むとなかなかハード。毒や麻痺など一般的な状態異常のほかに“即死攻撃を受けた時に成功しやすくなる”、“自動回復といった有利な状態を付加するのを阻害される”などさまざまな特殊状態が存在し、これらを把握しなければ苦戦は必至。逆に、うまく活用すれば強力な武器となるだろう。

 そのほかターゲット化率が低いほど威力が上がるアサシン用の必殺技など、仕様を把握することで最大の効果を発揮する技や魔法があったり、特定属性の最上位魔法を同時発動すると合体魔法になったり、複数回の物理攻撃は徐々に威力が落ちていくため全体攻撃は後の敵ほどダメージを与えにくかったり(ただし影響のない技もある)……などなど、戦闘は多くの要素で成り立っている。これらを考慮しつつバフやデバフも活用し、敵の攻撃を凌ぎながらTPを溜め、うまく条件を揃えて大ダメージを叩き出せた際の達成感は、それが容易ではないからこそ抜群だ。

 さらにストーリーが佳境に入ってからは、主人公と仲間2人で計3人というパーティ編成の制限がなくなり、9人全員が同行。ターンごとに前線メンバー3人を入れ替えて戦えるようになる。“高火力の魔法を叩き込んでヘイト値が一気に上がったソーサラーを、他のキャラクターのヘイト値も上がって相対的に狙われにくくなるまで控えに回す”、“支援担当が敵を弱体化させたあと、TPを溜めて控えていたアタッカーと交代”などローテーションを考えるのも面白い。

 もちろん敵の強さも9人パーティを前提としたバランスとなっており、前線メンバーが総崩れという所からの立て直しもバトルを熱く盛り上げる。なお、控えメンバーが残っていても前線3人が戦闘不能になるとゲームオーバーなので、前線における役割分担が重要なのは9人バトルになっても変わりはない。

 本編クリアに必須ではないボス戦も多数用意されているほか、最強クラスの装備品の作成などやり込み要素もあり、キャラクターカスタマイズの戦略とバトルの戦術を心ゆくまで味わえる。手に汗握るような戦いがしたい、数々の難敵に挑戦したいという武闘派のRPGファンならぜひ触れてみてほしい作品だ。

高ダメージの追求や厳しい状況の打開など、バトルを存分に楽しめる作品

ソフトウェア情報

「ONE world QUEST」
【著作権者】
Hira2 氏
【対応OS】
Windows
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
2.00(16/11/30)