週末ゲーム

第673回

ザコは避けろ、ボスはハメろ!探索とバトルをとことん楽しめる長編RPG「Artificial Providence 1」

ダンジョンには隠し通路や仕掛けが満載。防御結界などシステムに凝った戦闘も魅力

 『週末ゲーム』では、インターネット上でたくさん公開されているゲームの中から、編集部がピックアップした作品を毎週紹介していく。今回は、長編RPG「Artificial Providence 1」を紹介しよう。

隠し通路や仕掛けが満載のダンジョンと、ユニークなボス戦の数々を楽しめるRPG

人々を守ったり、遺跡を探索する“インスペクター”となった3人の少年少女達が主人公

 「Artificial Providence 1」は、古代文明の遺産とされる魔法生物が存在する世界を舞台に、危険な魔法生物から人々を守ったり、古代遺跡を探索する“インスペクター”となった3人の少年少女達を描くファンタジーRPG。さまざまな依頼をこなしたり、ダンジョンを探索することで物語が進んでいく。

 本作の特徴のひとつは、ダンジョンが非常に作り込まれていること。ダンジョンには隠し通路が多数あり、これによって道を塞いでいる敵を迂回したり、隠された宝箱を見付けるのがダンジョン探索の醍醐味のひとつだ。

 ダッシュ移動をしている時以外は周囲の隠し通路が光って見える仕組みだが、隠し通路がありそうな場所はほとんどの場合それとなく示唆されているので、常にゆっくり移動する必要はない。“怪しいところがあったら立ち止まってみる”といった形で、探索気分を味わえる要素となっている。

行く手を敵が塞いでいるが……
この画像の場面は序盤なのであからさまだが、多くの場合はより巧妙だ

 さらに、一部のダンジョンには移動床などさまざまな仕掛けやトラップがあり、これは雰囲気作りというレベルではなく、本気で頭を悩ませ、またときにはアクション的な操作も必要になってくる。このあたり(特にRPGにおける本気のアクション要素)が楽しめるかは人それぞれかもしれないが、苦労した先にはお宝が待っていることも多く、達成感が高いのは間違いない。

 また、本作はシンボルエンカウント方式だが、討伐系の依頼といった場合を除き、ザコ敵はできる限り避けて進むというプレイスタイルがゲーム側からも推奨されている印象だ。本作のスキルはスキルごとに使用回数が決まっており、ダンジョン探索や依頼の進行中に使用回数を回復する手段は非常に限られている。そのため、必要な時に備えて消耗はなるべく抑えるのが基本。戦闘訓練などが行える演習場では、エンカウントシンボルの避け方を実践的に学べる演習まで用意されているという徹底ぶりだ。

遺跡など一部のダンジョンには仕掛けが満載。宝箱に到達するため頭を捻る場面も
回り道や障害物を活用したエンカウント回避の方法を実践的に学べる演習

 一方で、ダンジョンの各所にはユニークなボス敵が多数待ち構えており、倒すとそれだけで十分な量の経験値や、お金に相当する“SP”を入手可能。加えてその先には、稀少なアイテムの入った宝箱も置かれている。さらに宝箱はダンジョンの至る所に配置されており、ザコ敵を避けながらアイテムを拾い集め、温存した力でレアアイテムを守るボスを倒す……という、トレジャーハントの楽しみが詰まったプレイ感となっている。

 また依頼の方は、単純な討伐や探索に限らず防衛などさまざまなタイプのものが存在し、“火竜を撃退するため、主人公達が囮になって魔法部隊の射程までおびき寄せる”という作戦のもと実際にブレスを避けながら走り抜けるアクションシーンがあったりと、さまざまな形で楽しめるものとなっている。

強力なボスの先には稀少なお宝が。なお画面左下にある青い鉱石は“レアメタル”で、武器をアップグレードする材料となる
攻撃部隊の射程まで火竜を引き付けるためブレスを避けながら囮になるなど、依頼ではさまざまな特殊状況が発生する

防御結界、状態異常、命中率……さまざまな要素が絡み合う戦闘とキャラクターカスタマイズが醍醐味

戦闘はコマンド選択型で、ウェイトゲージが溜まった順に行動する半リアルタイム方式

 戦闘はコマンド選択型で、キャラクターごとに用意されたウェイトゲージが溜まると行動可能になる半リアルタイム方式。キャラクター固有の特技や、SPを消費することで習得できる魔法といったスキルを駆使して戦っていく。

 魔法はあらかじめセットしたものを使う形で、セット可能な個数が限られるほか、魔法ごとに設定された“CP”の合計値が一定値を越えないようにセットする必要がある。依頼の内容やダンジョンの傾向などに応じたセッティングが重要だ。セット可能な数と合計CPは特定のアイテムを入手することにより限界を上げることができ、プレイを進めることで取れる戦術の幅が広がっていく。

 戦闘システムで特徴的なのは“防御結界”の存在だ。HPとは別に結界の耐久値を示す“BP”という値があり、BPが残っているうちはHPへのダメージは大幅に軽減、あるいは完全に無効化される。逆に言えば結界が切れた状態は非常に危険で、魔法やアイテムなどBPの回復手段も用意はされているが、HPよりも維持コストがシビアな印象だ。これも不要な戦いを回避するのがよい理由のひとつと言えるだろう。

 防御結界は敵も使うことがあり、敵によって結界の強度が違ったり、結界を越えてダメージを与える手段も用意されているなど、戦術上のポイントにもなっている。

魔法はセット可能な数とCP上限の範囲内でカスタマイズ。いずれもプレイを進めることで限界値が増えていき、戦術の幅が広がっていく
防御結界によりHPへのダメージを軽減あるいは無効化できる。軽減度合いはBPの残量や精神力のステータスが影響する

 また本作ではボスに状態異常が有効なことが多く、睡眠・スタン・束縛という行動を不能にするような状態異常も効くことがある。この3つは効果時間などに違いはあるが、“効果中に受けた攻撃はすべて必中かつクリティカルになる”、“HPダメージを受けると解除されるが、毒や火傷などのスリップダメージでは解除されない”といった特性は共通だ。

 “数で攻めてくる敵を眠らせて各個撃破”や“取り巻きを倒し切るまでボスの動きを止めておく”といった戦術が取れるばかりか、うまく立ち回れば“毒をかけた後に束縛して、あとはHPが0になるまで眺めているだけ”なんてことまでできてしまう。戦闘の高速化や防御の自動選択など、こうした場合に便利なキー操作も用意されている。

 もちろん上手く敵をハメられるかは状況次第だが、正攻法の火力勝負では敵わないようなボスにどういった手が通じるか試し、また逆にボスの特殊な行動にどう対応していくかなどと戦術を練っていくのが楽しいバトルに仕上がっている。さらに一部のボスは、ダンジョンの仕掛けを操作したりといった“戦闘以前の立ち回り”によって有利に戦えることもあるのが面白い。

 戦闘においては命中率も重要な要素だ。本作では物理攻撃と魔法いずれも、キャラクターの持つ基本命中率と攻撃対象の回避率、さらにスキル固有の命中率から最終的な命中率が算出される仕組みで、これは攻撃時に敵を選ぶ際に表示される。といっても普通に進めていれば低い命中率に煩わされるような場面はほぼなく、すばやい敵や小さい敵など、一部の敵の個性付けに利用されている印象だ。

 命中率を上げるスキルも複数用意されており、なかには即時発動してそのまま次の行動に移れる自己強化型のスキルもある。運任せではなく、当たらない状態からどう当たる状態に持っていくか、前述した行動不能系の状態異常の活用なども含めた戦術を楽しめる要素になっている。

ボス戦時にはキャラクターの会話という形で戦術のヒントが表示されることも
命中率を引き上げるバフの活用が重要。スキル名がオレンジ色のスキルは即時発動型で、発動後はそのまま次の行動に移れる

 そのほかキャラクターカスタマイズの面では、経験値を最大HPのほか攻撃力・精神力・敏捷性・技量という計5つのステータスへ自由に割り振れるのが特徴。上げたステータスを経験値に還元することもノーコストで自由に行うことができ、成長というよりはパラメーター調整という感覚だ。戦闘スタイルに応じたカスタマイズのほか、回避率の高いボスを倒しに行くので命中率に影響する技量の値を高めに、など状況ごとの調整も可能となっている。

 また本作には防具の概念はないが、代わりに“エクストラ”と呼ばれるアイテムを装備可能。使用可能なスキルを増やせる“技能”、パッシブスキルに相当する“特性”、ステータスを上げられる“能力”の3系統があり、魔法のCPと同様に“EP”の範囲内で組み合わせて装備できる。魔法と異なり装備できる数は系統ごとに完全固定だが、EPの最大値はCP同様、アイテムによって拡張可能。エクストラ自体もダンジョンなどでレアなものを入手でき、ユニークな性能を持つエクストラを組み合わせてキャラクターを強化する楽しみが用意されている。

経験値によるステータスの強化。1つのステータスを上げるとそのステータスを上げるために必要な経験値は増えていく
エクストラによる戦闘スタイルのカスタマイズ。名前の頭に“☆”が付いているエクストラは探索でのみ入手可能なレアもので、ユニークな効果を備えたものが多い

物語やキャラクターも見どころ。探索もバトルもとことん作り込まれた大作

 本作の主人公は、公爵令嬢ながら人々を助けるためインスペクターとなったイシュタルと、彼女の従者であり、同時に友人や家族のような存在でもあるフィエリとセディルの姉弟。彼らがインスペクターとして成長し、共に困難を乗り越えていく姿が、ときにコミカルな掛け合いも交えつつ描かれていく。立場を越えてお互いを想い合うイシュタルとセディル、それを温かく見守る(ときにからかう)フィエリという関係性も微笑ましい。

 依頼や探索を進めることで、こちらを試すような行動を取る謎の男と遭遇したり、主人公達とは別の視点で陰謀らしきものの存在が示唆されたりと、徐々に物語の核心に迫っていくのも見どころ。一つ一つの依頼自体は短めな場合が多く、ダンジョン探索と並行しながらテンポよくシナリオが展開する。

 想定プレイ時間は20時間から30時間。ゲームを進めるにつれスキルやエクストラも充実していき、これによって思うがままに強化したキャラクターと、どんどん手強くなっていくボスとの激戦をたっぷり楽しめる作品となっている。さらに本作は続編「Artificial Providence 2」も公開されており、こちらの想定プレイ時間はなんと100時間前後。ダンジョン探索やバトルをとことん楽しみたいというRPG好きなら、続編ともどもぜひ触れてみてほしい作品だ。

公爵令嬢と従者という関係だが、二人きりの時は対等な立場で話すイシュタルとセディル。敬語が抜けないセディルにたびたび突っ込むイシュタルが何ともいじらしい
3人の前に立ち塞がり、彼らを試すような行動を取る謎の男。その思惑とは……

ソフトウェア情報

「Artificial Providence 1」
【著作権者】
星潟 氏
【対応OS】
Windows
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
4.02(17/03/19)

編集部より:『週末ゲーム』は今回で最終回となります。18年間にわたるご愛読、まことにありがとうございました。