週末ゲーム

第596回

連続行動で強敵に立ち向かえ!サイドビューバトルが熱いRPG「EmpyrealSphere」

敵・味方とも1ターンに複数回行動できる“追撃”により手に汗握る戦闘を実現

 『週末ゲーム』では、インターネット上でたくさん公開されているゲームの中から、編集部がピックアップした作品を毎週紹介していく。今回は、歯応えのある戦闘が魅力の長編RPG「EmpyrealSphere」を紹介しよう。

3つの種族から集った3人が世界を旅するRPG

独自システムのサイドビューバトルが特徴のRPG

 「EmpyrealSphere」は、1ターンに複数回行動できるサイドビュー戦闘が特徴のRPG。舞台となるのは、地上に住む人々が知らない“天上界”に天族と魔族が住むファンタジー世界。天上界で起きたある事件により、天族の王女“エリス”は地上へと転送されてしまう。そこで出逢ったのは、地上人の青年“セミル”と、任務で地上に降りていた魔族の青年“ヴァルハート”。それぞれの事情により3人はパーティを組み、他の魔族に事件を知られず天上界へ向かう方法を求めて旅立つ。

ゲーム開始時には3人それぞれの序章を好きな順番でプレイ。その結果3人が出逢って本編が始まる
エリスの“放出”を使うと手が届かない場所の仕掛けを作動させられる

 3人は、セミルがダッシュ、エリスが魔力を飛ばし遠くの仕掛を作動させたりできる“放出”、ヴァルハートが障害物を破壊したりできる“殴る”というアクションをフィールド上で実行でき、これらを活用してダンジョンの仕掛けを解いていくのも本作の楽しみのひとつだ。

“AP”の管理が戦闘の肝。連続攻撃を叩き込め

タイムライン上のマーカーが左端に到達したキャラクターから行動できる
追撃によりコンボを重ねればダメージにボーナスが付く

 本作の戦闘は、タイムラインに敵・味方のマーカーが並び、右から左へ移動するマーカーが左端に到達すると行動できる方式。マーカーの進行速度はステータスの“敏捷”に依存する。最大の特徴は行動に“AP”という値を消費し、このAPが一定以上残っている限り何度でも連続行動ができる“追撃”システムだ。

 APはターンが回ってきた時に最大値の半分の値がプラスされ、通常攻撃では5、攻撃スキルや攻撃・回復・支援魔法といった“特技”では特技ごとに決まった値を消費する。そして残りAPが5以上であれば追撃が可能。追撃という名称だが通常攻撃や攻撃スキルだけでなく魔法による回復や支援もできるので、“仲間を回復してから余ったAPで攻撃”など幅広い手がとれる。

 追撃はAPが余っていても中断することが可能。いざという時の回復に回すためAPを温存するなど、状況に応じたAP管理が重要となる。敵の行動を挟まず攻撃を続けるとコンボとなりダメージにボーナスが付くため、APを溜めて連続攻撃を仕掛けるのも有効。ただし防御および道具の使用は追撃とは排他で、“攻撃してから防御”といった組み合わせはできず守る時は守りに徹する必要がある。また、防御や道具使用で消費するAPは現在値の半分となるため、APが少ない時ほどAPのロスも少なくなる仕組みだ。

毎ターンAP全回復の“オーバーリミット”は大チャンス……だが敵も使ってくる!

特技や秘技の派手な演出も見所
ボスに大ダメージを与えれば、多くの場合反撃のオーバーリミットが待っている。ボスならではの強力な攻撃が容赦なく連発される恐怖の3ターンを耐えられるか!?

 各キャラクターは攻撃を与えたり食らったりするとゲージが溜まり、フルになると自動で“オーバーリミット”が発動する。3ターンの間ステータスが向上するほか、行動順が回ってくるたびにAPが全回復し、連続攻撃を叩き込むチャンス。さらに、ゲームが進むとオーバーリミット直後のターンで強力な攻撃技である“秘技”を使えるようになるが、発動するとオーバーリミットは即終了する。瞬間的な大ダメージと3ターンの有利、どちらを取るかという選択肢が発生するわけだ。

 APの最大値はレベルアップなどによって増えていくので、ゲーム後半になるほど複数メンバーでの大量コンボや支援魔法からの攻撃技といった連携で派手な戦いが可能になる。とはいえ、これは敵も同様。連続行動を仕掛けてくる上、ボス戦などではオーバーリミットも発生する。こちらのオーバーリミットで大ダメージを与えることが往々にして敵のオーバーリミットに繋がるため、“チャンスがピンチになる”場面も多く、攻撃を叩き込む時も先のことまで考えると全く気が抜けない。まさに“死闘”と言えるお互いに全力全開のバトルを味わえることだろう。

ノックバックで敵を牽制。ステータス振りによるキャラカスタマイズもポイント

 戦闘におけるもうひとつの特徴が、攻撃の命中時、敵のタイムラインを右に押し戻すノックバック効果だ。どの程度ノックバックするかはステータスの“衝撃力”によって変わるほか、特技によっても異なる。威力が高い特技がノックバック効果も高いとは限らないので、状況に応じて技を使い分ける戦術性に繋がっている。

 さらにゲーム後半になると、“シールド”を持つ敵が登場。衝撃力に依存する一定のダメージを与えてシールドを破るまで攻撃がほとんど通らず、シールドは破っても敵の行動順になると復活してしまう。防御すると次の行動順待ちはタイムラインの中央から始まることなどを利用してパーティメンバーの攻撃タイミングを合わせ、ノックバックも駆使して敵の行動前に集中攻撃するなど工夫しなければザコですらまともに倒すのは難しい。

 また、キャラクターのステータスはレベルアップや装備品による向上のほかに、戦闘で経験値とは別に入手する“SP”を消費して任意に向上させることが可能。本作のようなタイムライン型やCTBの戦闘システムだと敏捷を上げて行動機会を増やすのが最善手になりがちだが、衝撃力の存在により、敵の牽制に重きを置いた強化も選択肢に入ってくる。ノックバック役やメインアタッカーなど、パーティ内での役割分担も考えたキャラカスタマイズも本作の醍醐味だ。

 ほかにもAPの最大値を上げて1ターンの手数を増やしたり、状態異常や属性攻撃への耐性を上げたりなど強化できる内容はさまざま。同じステータスを上げていくと向上に必要なSPが増えていくため、それでも敢えて一点極振りか、複数のステータスをバランスよく上げていくかもプレイヤー次第だ。

シールドを持つ敵はダメージを与えてシールドを破る必要がある。この際は衝撃力が大きく影響する
SPを振り分けて任意のステータスを上げることが可能。同じステータスを上げるために必要なSPは徐々に増えていく

 タイムラインの制御や複数回行動、自由度の高いステータス振りなど、本作の戦闘を形作る要素ひとつひとつはそれほど珍しいものではない。しかしこれらの要素が“手に汗握るバトルを実現する”方向できっちり噛み合い、本作ならではの爽快感と戦略性を生み出しているように感じた。

達成感は抜群。バトルマニアに挑戦してほしい作品

船に乗れば“起こりがちなトラブル”について語り合うなど、RPGあるある的なネタも

 3人の旅は天上界へ向かうという使命を帯びたものだが、地上界が珍しいエリスやヴァルハートにとっては観光のような側面もあり、行く先々でのちょっと気の抜けるやり取りも本作の味となっている。RPGあるある的なメタ会話も挟まれ、人によって好みは分かれるだろうが筆者はニヤリとすることも多かった。

 そんな中でも、旅を続けるうちに自然と生まれてくる連帯感や、ひとまずの使命の先にある真実を知ってなお決意を新たにするなど、王道の展開も見所。セミルを一方的にライバル視する剣士“ヴォルヴ”やセミルと家族のように育った少女“フィル”など、主人公達を取り巻く人間模様も魅力となっている。

 プレイ時間はやり込みなしで公称12時間だが、筆者の場合本編クリアまでその倍ほどかかっている。加えて本編クリアには必要ない隠しダンジョンや隠しボスもあり、キャラクターの育成や戦闘を存分に堪能できる作品だ。

 ただし、プレイアビリティの面ではやや注意が必要。本作は2010年初出の作品だが、最終盤まで街などへの瞬間移動手段はなく展開上同じフィールドを何度も行き来する必要があったり(ただし一度クリアしたフィールドやダンジョンはザコ戦スキップが可能)、プレイヤーによっては本気で詰みかねないレベルのフィールドギミックが10時間以上プレイした所で出て来たり、致命的ではないが初見ではやや戸惑う不具合が若干残っていたりなど、プレイヤー向けの配慮に富んだいまどきの作品に比べると、誰にでもお勧めとは言いにくい。しかしその分、終盤の心が折れそうになるボス戦も含め、難所を越えた達成感は格別だ。戦闘も探索も歯応えのあるRPGを求めているなら、チャレンジしてみてほしい。

エンカウント方式はランダムだが、一度クリアしたダンジョンやフィールドではエンカウント前に“!”マークが表示され、キャンセルボタンを押せば“エンカウントキャンセル”で戦闘を回避できる
本作最大の難所と言える砂漠越えのフィールドギミック。敵にエンカウントすると戦闘後にフィールドの向きが回転するため、周囲の地形を覚えておき方角を把握する必要がある。時間制限あり
成り行きで始まった旅だが、共に苦難を乗り越えていくうちにお互いが信頼できる仲間となっていく
好奇心で旅を続けていたセミルは、やがて自身の覚悟を問われることになる

ソフトウェア情報

「EmpyrealSphere」
【著作権者】
RENOS 氏
【対応OS】
Windows 95/98/Me/2000/XP(編集部にてWindows 7/8.1で動作確認)
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.6

(中村 友次郎)