週末ゲーム
第598回
ローグライクの楽しさが凝縮された一本道RPG「明赤の塔」
移動は進む・戻るだけ。多彩な魔法を使いこなし、極限状況を切り抜けろ!
2015年5月22日 11:00
一本道の塔をひたすら登っていくRPG
「明赤の塔」は、魔法使いの少女“クレハ”が主人公のローグライクRPG。行方不明だった母が見つかったという祖父の手紙に導かれ、クレハは50階ある塔の頂上を目指す。塔はひたすら上へと向かう一本道となっており、サイドビューの画面で移動方法は進む・戻るのみと、シンプルな作りが特徴となっている。
シンプルではあるが、だからといって簡単というわけでは全くない。前後から押し寄せる敵との遭遇自体を避ける手段がないため(敵を飛び越えて逃げる手段はいくつかあるが)、ほぼ常に、敵に囲まれながらの進行となる。一般的なローグライクRPGで言えば“常時モンスターハウス状態”のようなもので、一手ミスすれば詰みかねない、緊張感のあるプレイを楽しめるのが本作の魅力だ。
なお本作は、2013年にリリースされた同作者製の「蒼明の塔」(初出時のタイトルは「ソウメイのトウ」)のコンセプトを引き継ぎつつ、システムを一新した完全新作となる。また、執筆時現在でバージョンが0.10だがゲーム本編については全50階が実装済み。作者によると今後はバランス調整やインターフェイスの強化、おまけ要素の追加などが予定されている。
魔法を使うとクレハ自身の属性も変化。パズルのような状況を知略で切り抜けよう
ゲームの基本的な流れは通常のローグライクRPGと同じで、こちらが1手行動するごとに敵も行動する。クレハの基本的な行動は、前後への移動とその場での待機、通常攻撃、そして手持ちの魔法での攻撃だ。この魔法の使いこなしが本作における戦術の要となっている。
魔法は攻撃・回復・妨害などさまざまなタイプのものが豊富に存在し、ゲーム開始時は3種類が使用可能。攻撃魔法は範囲やダメージもさまざまで、前後数マスに攻撃できる便利なものや、“3マス先に敵がいればダメージ”など癖のあるものが揃っている。
また、多くの魔法と敵には火・水・草の属性があり、三すくみの関係で得意属性への攻撃はダメージ2倍、逆では半減となる。このあたりは定番の仕組みだが、ユニークなのは魔法を使うことで“クレハ自身もその魔法の属性に変化する”こと。通常攻撃のダメージに影響するのはもちろん、敵からの被ダメージも変化する。
クレハの初期ライフ数は6と少なく、少し油断すると不得意な属性の敵からの攻撃により、一気にライフ0でゲームオーバーとなってしまう。とくに前後を囲まれた時などは、どの魔法でどの敵へ攻撃するか、それによって自分の属性がどう変わりどれだけダメージを受けるか……といった冷静な判断が必要となるわけだ。
敵のライフ、攻撃力、属性の情報はすべてオープンになっており運の要素は皆無。パズルのような状況を知略で切り抜けていくのが本作の醍醐味だ。自分の属性を正面の敵に移すなど、他の魔法と組み合わせることで真価を発揮する魔法もあり、自由に戦術を組み立てる楽しさに繋がっている。
魔法を使うにはマナを消費し、マナは敵を倒すことで増える。強い魔法ほど消費マナも多いため、属性の乗った通常攻撃を活用するなど、マナを節約するための工夫も重要。自分と正面の敵の位置を入れ替えたり、3マス先へワープするなど移動系の魔法もあり、戦う場面と逃げる場面の見極めもポイントとなっている。
さらに塔を登っていくと、数マス先から攻撃してくる敵や状態異常を仕掛けてくる敵、遠くから目の前へ飛び込んでくるなどトリッキーな動きをする敵も増えてくる。こうした敵の行動内容も敵を選択すれば確認可能。ときにはこれを逆に利用し、目の前の相手を吹き飛ばす敵の前に立って一気に移動する、なんてテクニックも。一本道ゆえに敵との間合いを完璧に計算できるのも本作ならではの点で、周囲のすべての状況を把握し、2手先3手先を考えて行動するのが塔で生き延びる秘訣だ。
ショップやガチャで魔法を入手。プレイごとに変わる魔法でさまざまな戦術を楽しめる
塔のフロアひとつひとつは1画面に収まる程度の短いもので、その一番上まで到達すると次のフロアへ進める。この際、ランダムでさまざまなショップが登場し、寄り道することで新しい魔法などを入手することができる。
ショップの通貨は敵を倒すと手に入る“ジェム”。魔法のショップではランダムにピックアップされた魔法を選んで買えるほか、安価だが何が出てくるかわからない、いわゆる“ガチャ”的な装置もあり、いずれにせよどの魔法を手に入れるか、完全に選ぶことはできない。また、魔法の所持数に制限があるため、ときには手持ちの魔法を捨てて新しい魔法に入れ替えることも重要だ。
“身代わりを作り出す”など説明だけでは効果を実感しにくい魔法もあり、気になる魔法を試しに使ってみるという楽しみも。プレイするたびに手持ちの魔法が変わるため、常に新しいシチュエーションで攻略に挑むことができる。その上で、ある程度プレイを重ねると入手可能な魔法に応じたパターンも組めるようになり、プレイを効率化できるようになっていくのも面白いところだ。(慣れると今度は“慢心によるケアレスミス”も待ち受けているのだが……。)
そのほか、アイテムを売っているショップも登場。回復アイテムのほか、フロア全体の敵を攻撃したり状態異常を与えるアイテム、敵を倒した時に得られるマナを増やすといったパッシブ効果をもつ装備品的な位置付けのアイテムなどが用意されている。アイテムにも所持数枠があるほか重量の概念があり、持てる範囲でアイテムを厳選する必要がある。
さらに、先へ進むとライフやマナの最大値、攻撃力、魔法やアイテムの所持枠や総重量などを拡張できるショップも登場する。限られたジェムを使ってクレハをどう強化していくのか、戦略面も考え所となっている。
クレハはゲームオーバーになると、拠点の町に戻される。手に入れた魔法やアイテム、クレハの強化はすべてなくなるが、ジェムは持ち帰って貯めることが可能。拠点の町にも各種ショップがあるため、ここでクレハを強化してから塔に挑むことができる。ストイックに事前強化なしでクリアへ挑むか、万全に準備を整えて臨むかはプレイヤー次第だ。
ローグライクRPGの意志決定要素を凝縮した逸品
塔の特定のフロアにはボスが登場。高いライフと攻撃力を誇るほか、上層階のボスでは独特のギミックも仕掛けられており、正面から攻撃するだけではなかなか倒せない。状態異常や自己強化も含め、ボスに応じた魔法の編成やアイテムの準備をボスフロア到達までに整えておくのも、50階制覇のためには重要となってくる。
ローグライクRPGをプレイしていると訪れる、敵に囲まれ、一手間違えると詰む状況。本作はそこだけを抜き出したかのような場面が続く、濃厚なプレイ体験が持ち味の作品だ。正直、長時間プレイしていると気が張り詰めてしまいどっと疲れるのだが、このひりつくような緊張感や、厳しい状況を切り抜けた際の達成感は格別。中断セーブ機能があるため、適度に休みながら進めるのもよいだろう。極限状況での意志決定こそローグライクの醍醐味、という方にはぜひチャレンジしていただきたいRPGだ。
ソフトウェア情報
- 「明赤の塔」
- 【著作権者】
- Kata 氏
- 【対応OS】
- Windows XP/7/8など
- 【ソフト種別】
- フリーソフト
- 【バージョン】
- 0.10(15/04/24)