週末ゲーム
第619回
ド派手な魔法をぶっ放せ!爽快横スクロールアクションRPG「ASTLIBRA mini外伝」
多彩なアクションやアイテム集め、キャラカスタマイズも楽しいハクスラ系の良作
(2015/11/27 18:10)
『週末ゲーム』では、インターネット上でたくさん公開されているゲームの中から、編集部がピックアップした作品を毎週紹介していく。今回は横スクロールアクションRPG「ASTLIBRA mini外伝 ~幻霧の洞窟~」を紹介しよう。
パン屋の娘がランダムダンジョン“幻霧の洞窟”に挑む
本作は、作者のKEIZO氏が開発中の長編アクションRPG「ASTLIBRA ~生きた証~」の外伝。ランダムダンジョンを攻略し、要所で待ち受けるボスを倒すことでストーリーが進行する形式で、爽快なアクションを気軽に楽しめる作品となっている。
物語の舞台となるのは、とある平和な城下町。ここでは依頼を受けて魔物退治などさまざまな仕事をこなす“ギルド”の者達が、人々から英雄として慕われていた。しかしあるとき、ギルドの英雄達は突然消息を絶ってしまう。
そんな中、とある事件をきっかけにしゃべる犬“ポリン”と知り合ったパン屋の娘は、ポリンの頼みでギルドの英雄達を探すため“幻霧の洞窟”へ向かうことに。入った者の記憶を頼りに幻を映すと言われる洞窟は、英雄の記憶を反映してさまざまな魔物がはびこる場所となっていた。パン屋の娘は戸惑いつつも、ポリンの導きにより洞窟の奥へと進んでいく。
ゲームの基本的な流れは、サイドビューのフィールドがランダムに繋げられたダンジョンを、ひたすら敵を倒しながら下へ下へと降りていくというもの。ダンジョンはいくつかの階層に分かれており、階層ごとに風景や出現する魔物ががらっと変わるのも特徴だ。各階層の最後にはボスが待ち構えている。
ダンジョンは基本的に一方通行だが、アイテムにより脱出することが可能。脱出した際や倒されてしまった場合は町へ帰還しレベルが1に戻るが、装備品を集めたり、敵を倒すと手に入る“フォース”という小さな宝石の欠片のようなものでステータスの初期値を上げたり魔法を覚えることで、徐々に強くなりダンジョンの奥へと到達できるようになっていく。ダンジョンはある程度進むとチェックポイントがあり、途中から攻略を再開することが可能だ。
コマンド入力で魔法発動。大量の敵をなぎ倒す爽快感は格別
本作の一番の見所は、豊富に用意された技や魔法によるド派手なバトルだ。主人公はボタンやカーソル操作の組み合わせにより、盾を構えて攻撃を防ぐガードやガード状態から突撃するシールドバッシュ、敵1体へ多段ヒットするサークルスラッシュ、後方へ飛び退くバックステップなど、さまざまなアクションを繰り出せる。使える技はゲームの進行に応じて増えていき、テクニカルなバトルを楽しめる。
そして、攻撃を当てることで溜まっていく“ST”を消費して発動できるのが強力な魔法攻撃。魔法は火・水・土・風・聖・闇の6属性に分類され、各属性1つずつセットが可能。たとえばカーソル上→横+魔法ボタンで上空の広範囲に電磁ボールを発射する闇属性の“ダーク”など、コマンド入力で6つの魔法を使い分けられる。
STはしばらく放っておくと自然に減っていくため、温存する意味はない。いわゆるMPを消費するタイプとは違い、“テンションを上げて大技をぶっ放す”というイメージで遠慮なく使いまくるのがお得。敵に囲まれたような時こそ、連続攻撃やシールドバッシュで一気にSTを溜めるチャンスとなる。
ダンジョンを進んでいくと大量の敵がわらわらと押し寄せてきたり、驚くほど大型の敵が立ち塞がったりするが、こうした敵の数々を魔法でなぎ倒していくのが本作の醍醐味。エフェクトやSEも派手なものとなっており、爽快感は抜群だ。敵を倒すとお金やフォースがばら撒かれ、これを集めるのもなかなか気持ちよい。
さらに、敵を倒した際はアイテムや宝箱がドロップすることもあり、宝箱には強力な装備品などレアアイテムが入っている場合も。宝箱はダンジョンの各所にも配置されており、敵を倒しつつアイテムを集める、ハック&スラッシュが楽しい作品となっている。
アクションの幅を広げるキャラクターカスタマイズ。さまざまな装備を使う楽しみも
犬のポリンは主人公のあとを付いてくるが、特に支援攻撃などは行わない。その代わり魔法の力で主人公をサポートしてくれる。具体的には主人公のアクションを増やしたり、いわゆるパッシブスキルのような形で恩恵を得ることが可能だ。
ポリンの力を使うには、ゲーム中のさまざまな場面で手に入る“魔導クリスタル”が必要。個々の能力ごとに指定された数のクリスタルが必要になるが、何度でも付け外しができるので、クリスタルの数の範囲内で自由にキャラクターカスタマイズの試行錯誤が可能となっている。
ポリンの力には敵の残りHP表示など基本的なものから、ダッシュや二段ジャンプなどアクションを増やすもの、攻撃を受けた際のノックバックをなくす、クリティカル発生率を上げるなど戦闘を有利にするもの、敵が固有アイテムを落としやすくなるなどダンジョン探索に役立つものなどバラエティに富んだものが用意されている。
さらに、シールドバッシュで敵を打ち上げられるようになる、バックステップ時に元いた場所を爆破するなど、既存のアクションに効果を追加するものも。状況やプレイヤーの戦闘スタイルに応じて、クリスタルの数という制限の中でどうキャラクターをカスタマイズしていくか考えるのが悩ましくも楽しいシステムだ。
キャラクターカスタマイズでは装備品もポイント。たとえば盾なら防御力だけでなく、ガード時にどれだけ敵の攻撃に耐えられるかを示すガードゲージの長さにも違いがある。また、肩鎧は防御力のほか最大HPと最大STの補正値も注目すべき点で、ダンジョンに入るたびにレベル1からとなる本作では特に影響の大きい装備品だ。
さらに、武器と盾には重量が設定されており、装備の総重量と素早さのステータスにより攻撃速度が変化。ハンマーなど“強力だが重い”武器が表現されているのも面白い。装備した武器と盾は主人公の見た目にも反映され、これもさまざまな装備品を使ってみる楽しさを補強している。
そのほか武器、盾、肩鎧には“熟練度”が設定されており、装備して戦い続けると熟練度が上昇。最大まで上げることでポリンが新たな力を習得したり、魔導クリスタルなどのアイテムを入手可能。色々な装備品を集め、使うことがキャラクターの強化に繋がるため、アイテム集めが楽しくなるという仕掛けだ。
中盤以降は歯応えもなかなか。状態異常の恐ろしさを実感
こうしたさまざまなアクションや能力を駆使して、大量の敵をなぎ倒しながらサクサク先へと進めるのが本作の魅力だが、中盤以降は強力な一撃を放ってくる敵や、危険な状態異常を付与してくる敵なども現れ、歯応えのある内容となっている。特に状態異常はなかなか恐ろしい。
その筆頭は“猛毒”。RPGにおいて対応をスルーされがちな状態異常ナンバーワンではないかと思われる毒だが、本作の毒はいわゆるスリップダメージではなく致死毒だ。頭上に表示されるカウントが0になると残りHPに関係なく即座に倒れてしまうため、それまでにアイテムなどで治療しなければならない。
しかしアイテムは使用から効果発動までにタイムラグがあり、その間に攻撃を受けると使用がキャンセルとなるため、敵に囲まれた時などは大ピンチ。スリップダメージを受ける出血(こちらが一般的なRPGの毒に相当)と同時に受けたりもしたらパニックに陥ること必至だ。一定時間動けなくなる石化も恐ろしく、(ポリンは居るが実質的には)一人でダンジョンの奥地へ赴く緊張感を存分に味わえる。
ダンジョン攻略中に倒されても得られたお金やアイテムは残るが、その探索で得たフォースが半減してしまう。できれば倒されることなくダンジョンを脱出したいところだが、脱出用のアイテム“ユグドラシルの泉”は周囲に敵が居ると使えない。消費アイテム版の“ユグドラシルの雫”なら使えるが、こちらも使用から発動までのタイムラグは他のアイテムと同様にあるため、絶体絶命に陥ってからでは間に合わないこともある。引き際を見極めることもときには重要だ。
やり込み要素も充実、キャラクター強化や強敵とのバトルを存分に楽しめる作品
主人公であるパン屋の娘は直接しゃべる台詞のない、いわゆる無口系主人公だが周囲の反応や感情を表すフキダシなどから、家族想いな面や、戸惑いつつも戦う決意を固めていく様子などが伺える。そんな彼女が冒険を進めるうちに“幻霧の洞窟”の真実に触れていくストーリーも見所。アクションが中心の作品であるためシナリオは要所要所で挟まれる形ではあるが、短い中にも驚きの展開や、切なくも胸が熱くなるシーンなどもあり、内容の濃い作品となっている。
短編外伝という位置付けの本作だが、クリアまでのプレイ時間は10時間程度とアクションRPGとしてのボリュームは十分以上。加えてメインシナリオのラスボスを超える強敵と戦える場所もあり、さらなるキャラクター強化やレア装備集めを追求するやり込みも楽しみのひとつだ。
また、ゲームを進めると利用可能になる“アストレイアの天秤”も、追求しがいのあるカスタマイズ要素となっている。アイテムを乗せるとステータス強化や重量軽減、HPの自然回復などアイテムごとに設定された恩恵を受けられるが、各アイテムには“カルマ”の重さが設定されており、左右に乗せたアイテムの重さの合計がバランスよいほど高い効果を発揮する。ユニークなカスタマイズ要素であると共に、作品名“ASTLIBRA(アストリブラ)”の由来とも思われ、ストーリー上でも重要な役割を果たす。本編との繋がりも気になるところだ。
格調高くまとめ上げられた画面デザインも秀逸で、アクションのみならず、メニュー操作といったインターフェイスにおいても操作への反応などに手触りの良さを感じさせる。アイテムごとに選択したときのSEが違うといった細かいこだわりも雰囲気作りに一役買っている印象だ。
これだけ作り込まれた作品の本編がどれほどのものになるのかも楽しみだが、本作だけでストーリーも独自に完結しており、単体の作品として遊べるものとなっているので、アクションRPGが好きならぜひ触れてみてほしい。
ソフトウェア情報
- 「ASTLIBRA mini外伝 ~幻霧の洞窟~」
- 【著作権者】
- KEIZO 氏
- 【対応OS】
- Windows 98以降
- 【ソフト種別】
- フリーソフト
- 【バージョン】
- 1.05(15/11/26)