石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』

「クロノ・トリガー」+「マリオRPG」? カナダ発の2Dドット絵RPG「Sea of Stars」

懐かしさを感じるレトロな映像美に、現代アレンジされたバトルシステムを搭載

 PCゲームに関する話題を、窓の杜らしくソフトウェアと絡め、コラム形式でお届けする連載「石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』」。PCゲームファンはもちろん、普段ゲームを遊ばない方も歓迎の気楽な読み物です。

レトロ調RPGの新作がカナダから

「Sea of Stars」のタイトル画面

 今夏は世界各地で話題作となるPCゲームタイトルが続々と発売されている。筆者だと「ディアブロ IV」や「アーマード・コア6」を抱えているし、他にも「ストリートファイター6」や「Baldur's Gate 3」、「Starfield」など、ちょっと遊ぶ手が足りないという方も多いかと思う。

 そんな状況で、他とは違う話題の上り方をしている作品が「Sea of Stars」。レトロ調のグラフィックスで描かれたターンベースのRPG作品で、いわゆるJRPGと呼ばれるスタイルだ。

 開発したのはカナダのインディーゲームスタジオ「Sabotage Studio」(ゲームは日本語でプレイ可能)。“retro aesthetics and modern game design.(レトロの美学とモダンなゲームデザイン)”を掲げて開発されており、本作以前には2Dアクションゲーム「The Messenger」を開発している。

 JRPGという呼称は、日本の伝統的なコマンドバトル制RPGという意味合いだけでなく、古臭いゲームというネガティブな意味が含まれることもある。本作に関しては当然ポジティブな意味で、レトロゲームにこだわりのある開発者が今の時代に合わせて開発したものだ。

複雑すぎず、戦略性の高いバトルシステムが秀逸

ドット絵で描かれたレトロ調のRPG

 本作は2DグラフィックスをベースにしたRPG。映像的には、スーパーファミコンからPlayStationくらいのイメージだ。画面解像度はフルHDでプレイしたが、ドット絵自体の解像度はその1/3、横640ドットくらいに見える。

 主人公は「至点の子」と呼ばれる男女の2人で、最初にどちらを主人公としてプレイするかを選ぶ。邪悪な錬金術師「フレッシュマンサー」が生み出す怪物を相手に、武器と魔法を駆使して戦うファンタジーの物語だ。

主人公は男女2人。どちらかを選ぶが、2人一緒に旅をすることになる

 ただファンタジーといっても、中世ヨーロッパ風ではなく、アジアっぽさはあるが日本や中国でもない。ゲームの中にはSFっぽい装置も出てくるし、「至点の子」とされる主人公のバックボーンや目的も曖昧だ。ゲームのために作られた無国籍なファンタジー、とでも言えばいいだろうか。

SFっぽい装置もあり、明確な世界観のジャンルは見えない

 本作の注目点はバトルシステムだ。コマンド選択式のターン制バトルで、通常攻撃と魔法を選べるほか、戦闘中に貯まるポイントを使い仲間と協力で出す技「コンボ」や、敵を攻撃した時に出現する「生マナ」を消費して次の行動の効果を高める「ブースト」といった要素がある。

フィールドで敵に接触するとバトルに入る。コマンド選択式のターン制バトル
仲間と一緒に行動する強力な技「コンボ」
「生マナ」を拾って行動を強化する「ブースト」

 また攻撃や防御のときにタイミングよくボタンを押すことで、攻撃力が上がったりダメージを軽減したりする効果が得られる。敵味方の攻撃のモーションをよく見て覚え、タイミングよくボタンを押すと、より戦闘を有利に進められる。技によってはボタンのタイミングで何度も追撃をかけられるものもあり、本作ではとても重要な要素だ。

敵の攻撃の瞬間にボタンを押せると、防御してダメージを減らせる
タイミングよくボタンを押すと繰り返し攻撃できる技もある

 コマンドバトルでも様々な要素が複雑に絡み合うと、仕組みを覚えるのが面倒になったり、攻略がやたら難しくなったりするゲームもある。本作はその辺りのバランスがよく、複雑すぎない範囲で戦略性やアクション性(ボタンのタイミングだけではあるが)を入れ込んでいる。遊びやすくて頭も使えるので、序盤からやりごたえがある。

敵の頭上に出たマークに合わせた属性の攻撃を加えると、技を止められる仕掛けもある
巨大なボスも現れる。どのスキルをいつ使うかなど戦略性もある

 ほかには料理や釣りといったサブ要素にもこだわりが見える。特に料理は、様々ある食材を組み合わせることで、効果の異なるおやつ(回復アイテム)を作成可能だ。食材は釣りで手に入れたり、道中で拾ったり、商人から買ったりでき、新たな料理のレシピを拾えることもある。

料理の際には調理中の映像が表示されるなど、妙にこだわりが強い
釣りは食材を手に入れたり、お金稼ぎになったりする

 このほか音楽には、特別ゲストコンポーザーとして「クロノ・トリガー」などで知られる光田康典氏が一部の楽曲を提供。このことで本作に注目した人も多いようで、本作の映像やゲームシステムから「クロノ・トリガー」と「スーパーマリオRPG」を足したようなゲーム、という声も聞かれる。

システムは良質だが……物語は日本人とのセンスの違いか

Steamにおける評価は「非常に好評」

 本作のSteamにおける評価は、9月4日時点で1,585件のレビューのうち87%が好評で、「非常に好評」の評価となっている。ただ筆者が実際にプレイしてみた感想としては、手放しに絶賛できる内容とは言いきれない。

 JRPGに対する開発者のこだわりはシステム面において強く感じるし、特にバトルシステムは面白くまとまっていると思う。2Dのドット絵もよく描き込んであり、長年のゲームファンである筆者が見ても何ら不足は感じない。

 ただ物語はやや稚拙に感じる。序盤の展開は説明不足でプレイヤーを置いていく感じがするし、キャラクターのセリフも素直過ぎて面白味に欠ける。一言で言えば、キャラクターの魅力が足りない。対照的な見た目の主人公を2人用意したのに、それぞれの個性が薄いのが実にもったいない。

 キャラクターが真面目で淡々としていて、はっちゃけ感がないと感じるのは、日本人とのセンスの違いもあるだろう。海外のJRPGファンならこれでいいと感じるかもしれないが、日本人にはいささか物足りない。昔のRPGは主人公が一切喋らず個性を完全に消すという作品が多かったが、存在感を出すならもっと強烈な個性を出して欲しいと思ってしまう。

特徴的な外見の主人公2人が、喋ってみるとどうにも普通すぎる

 それでも評価が高いのは、ひとえに「こんなゲームを遊びたかった」というJRPGファンの熱意だと思う。今やこの手のゲームはそう数が多くないし、あったとしてもシステムが各々の好みに合うかはわからない。本作はありそうでなかった、いいところを突いたシステムが評価されているのだろう。

 そこは筆者にも理解できる。昔遊んだ懐かしさだけではなく、今遊んで面白いと感じる要素が確かにある。“retro aesthetics and modern game design.”を標榜するのも納得できる内容だ。

 本作は万人におすすめとは言えないものの、レトロスタイルのRPGが好きな方は一見の価値がある。Steamの評価が高いのも、JRPGを好まない人はそもそも触らないだろうし、好きな人が遊ぶ分にはなかなかに満足できる内容だ、と理解できる。そして何より、このような作品を海外の開発者が作ってくれたことに、日本のゲームファンとして感謝したい。

この画面を見て、面白そうと感じたら遊んで欲しい。良くも悪くもそういうゲームだ

 今回本作をプレイするにあたり、GeForce RTX 4060を搭載したマウスコンピューター製ノートPC「G-Tune E4」を使用した。解像度はディスプレイと同じフルHD。本作は2Dベースの作品で要求されるPCスペックも低いため、本機で全く問題なくプレイできた。

今回のプレイ環境
G-Tune E4
【G-Tune E4】
CPUCore i7-12650H(Pコア 4.7GHz×6+Eコア 3.5GHz×4/16スレッド)
GPUGeForce RTX 4060(GDDR6 8GB)
メモリ16GB DDR4-3200(8GB×2)
SSD500GB(M.2 NVMe PCIe 4.0 x4)
ディスプレイ14型非光沢液晶(1,920×1,080ドット、144Hz)
OSWindows 11 Home
本体サイズ約323.9×225×22mm
重量約1.8kg
価格199,800円

G-Tune E4の製品ページ

著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)

1977年生まれ、滋賀県出身
ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。

・著者Webサイト:https://ougi.net/

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