石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』

WindowsなしでPCゲームを楽しむための「SteamOS」の現在地

「SteamOS 3.0」の外部展開が進むが、現在は利用できず

「SteamOS」のWebサイト

Windowsがなくても「SteamOS」でいいじゃない

 Windows PC向けのゲームを遊ぶには、Windowsが必要だ。そんなことは当たり前だと思われるかもしれないが、実はWindows以外のOSでWindows PC向けのゲームを動かす方法は存在する。

 もっとも有名なのが、「Steam」の運営元であるValveが提供している「Steam Deck」というポータブルゲーム機。これには「SteamOS」という独自OSが組み込まれており、WindowsではないがWindows PC向けのゲームが動作する。

 「SteamOS」は「Steam Deck」の発売以前から存在している。それなら、手持ちのノートPCに「SteamOS」を入れれば、WindowsなしにPCゲームを楽しめるはずでは? 特に2025年10月でサポート終了となるWindows 10を使用しており、Windows 11のアップグレードに対応できない古めのPCでは、今後の活用法の1つになり得る。

 そう思って現状を調べてみたのだが、結論から言うとこれは無理だった。この点も含めて、「SteamOS」が今どうなっているのかをまとめてみた。

「SteamOS」のダウンロードを試みるが……

 「SteamOS」については、「Steam」のWebサイトに情報が掲載されている。インストールの条件は、4GB以上のメインメモリやUEFI搭載であることなどが書かれており、ここ10年ほどで発売されたPCなら何でも対応できそうだ。

 その先を読むと、インストーラーをダウンロードするリンクが用意されている。たどってみると、「Steam Deck」のイメージファイルのダウンロードへと転送されてしまう。実際にダウンロードしてみても、説明にあるようなzipファイルではない。

 どういうことなのか調べてみると、ここで公開されていたのは「SteamOS 2.0」と呼ばれるバージョンらしい。登場から10年ほど経ち、更新もされなくなっているため、現在はインストールが推奨されていない。インストーラーがダウンロードできなくなっているのも、この辺りが理由と思われる。

ダウンロードのリンク先は「SteamOS」のイメージファイルになってしまう

「Steam Deck」のための「SteamOS 3.0」から、外部展開が始まる

 現在の「SteamOS」は、「Steam Deck」にインストールされている「SteamOS 3.0」が最新版。こちらはベースのOSが「Debian」から「Arch Linux」に移行している。

 ではこちらをインストールすれば……と思うのだが、残念ながら「SteamOS 3.0」はまだ一般公開されていない。よって、自前のノートPCに「SteamOS」をインストールするという試みはここで潰える。

 ただし、話はまだ終わりではない。「SteamOS 3.0」は「Steam Deck」に向けて作られたものだが、最近になって他社のポータブルゲーミングPCに対しても提供されることになった。他社製品で最初に登場する製品は、Lenovoの「Legion Go S」となる予定で、こちらはWindows 11版が先行する。

 またValveの発表によると、さらに他のポータブルゲーミングPCへ「SteamOS」のベータ版を提供するとしている。

 提供されるOSは「Steam Deck」と同じものであることも明言されている。これにより、比較的性能が低い「Steam Deck」から、他社のより高性能なポータブルゲーミングPCで「SteamOS」を利用できることになる。

 既にWindowsがインストールされている製品に、後から「SteamOS」を入れるメリットは薄いと思うが、処理のオーバーヘッドが減ってWindows環境よりも高速に動作するゲームもあるという話も聞く。動作しないゲームもあるというのがデメリットだが、最初から「SteamOS」をインストールした製品であれば、Windows OSが不要な分だけ安く手に入れられる可能性がある。

 「Steam Deck」における動作状況は、「ProtonDB」というWebサイトで確認できる。手元に「Steam Deck」がない方でも、現状把握として見ておくのはいいだろう。

「ProtonDB」のWebサイト。動作状況を確認できる

一般公開に期待したいが確定情報はまだない

 現状では「SteamOS」をPCにインストールする方法はないが、ポータブルゲーミングPCへの展開は始まっている。これが進んでいけば、一般のPC向けに「SteamOS 3.0」が公開される日が来る可能性はある。今のところは明確な情報はないが、動向を注視していきたい状況だ。Windows 10のサポート終了までに動きがあればよいのだが。

 ちなみに、Windows以外の環境で「Steam」のゲームを動かす方法は他にもある。「SteamOS」がLinux上でWindowsのゲームを動かすための「Proton」という機能は、他のLinux環境でも使用できる。ざっくり言えば、Linux向けの「Steam」をインストールすれば、Windows向けのPCゲームをプレイできる。もちろん全てではないが。

 こうなると簡単にインストールして終わりではなく、Linuxの知識やドライバーの用意などいろいろな手間が発生してくる。これ以外の方法も含めて、筆者が余裕のある時に試せたら改めてレポートするとして、今回は「SteamOS」の現在地がどこにあるかをお伝えして終わりとしたい。

 ちなみに「SteamOS」公式のフォーラムも存在しており、いくつかのポータブルゲーミングPCでの動作報告が上がる中で、「SteamOS」の一般公開を待望する世界中のユーザーの声が見られる。技術的な相談だけでなく、『これがあればWindowsを捨てられるのに!』といった過激な投稿もあり、混沌としていて面白い。

「SteamOS」の公式フォーラム。かなり古くからあるものだが、「SteamOS 3.0」の最新情報に関する投稿もちらほらみられる
著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)

1977年生まれ、滋賀県出身

ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。

・著者Webサイト:https://ougi.net/

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