特集・集中企画
“AI版コミケ”には「作りたい」という純粋な熱量が溢れていた ~HDD故障をAIで予測する同人誌、ローカルで対話可能なスマスピなど、個性豊かな作品が集結
初開催の「AIクリエイターズマーケット」レポート【AIフェスティバル 2025】
2025年12月8日 09:00
11月8日、ベルサール秋葉原(東京・秋葉原)にて「AIフェスティバル 2025」が開催された。最先端のAI技術とその創造的な活用を一般に広く伝えることを目的としたイベントで、今回で3回目を迎える。今年は、入場無料かつ会場を2フロアに拡大するなど、規模と内容の両面でパワーアップを遂げた。
イベントの目玉プログラムのひとつが「AIクリエイターズマーケット」だ。AIを用いて創作された多様な作品の展示や販売が行われる即売会で、画像や動画、音楽、マンガ、小説からアクセサリー、さらにはアプリやツールにまで幅広いジャンルの作品が目白押しとなっている。
「AIクリエイターズマーケット」は初開催ながら、今回30ものサークルが出展し、さまざまなコンテンツをブースに並べていた。筆者も会場を練り歩き、いろいろと買いまくった次第である。本稿では、筆者が興味をひかれた12ブースをピックアップしてレポートする。
- 画像認識から小説を自動生成するドラゴン型執筆マシン(他人ハウス)
- ローカル環境だけで対話可能なスマートスピーカー「のんきちゃん」(アドリブ)
- 生成AIを使って西洋古典の未訳作品を翻訳・再構築(19世紀書店)
- 動画生成AIの動画から場面を切り出して絵本を制作(VizOn)
- AIキャラクター「ポケとも」を一般ブースとして展示したシャープ(SHARP)
- 可愛い系AIイラストのキャンバス・アクスタを販売するコミュニティ(Colorful School DAO)
- VTuberの声による自動応答チャットボットをデモ展示(有限会社リフレックスラボ)
- AIでHDD故障を予測する同人誌とCardputer用ケースを販売(犬小屋研究所)
- すべて絵柄が1点もののAI生成ステッカーを販売(74STICKERBOMB)
- AIアートグランプリ受賞作家による油絵風AIアートのグッズと新作アニメ企画(はんなりアート工房)
- プロモデルの写真を学習させて統一感ある女性画像を生成(AI-TAMASHII)
- ChatGPTでオリジナルLINEスタンプを1週間で作成・販売(Gadgetouch)
今回レポートした12ブース以外にも、会場には個性豊かな出展がひしめき合っていた。AI関連の展示というと、技術や効率化の話になりがちだが、このマーケットには「作りたい」というクリエイターの純粋な熱量が溢れていたのが印象的だった。
ジャンルを問わずAIを「相棒」として使いこなし、表現を拡張しようとする試行錯誤の数々。AIが人の創造性を奪うのではなく、新たな可能性を見出すツールであることがわかる。見るだけでなく、思わず手に取りたくなる作品ばかりで、筆者の財布の紐も緩みっぱなしの一日だった。この熱気がどう進化していくのか、来年の開催がいまから待ち遠しい。それどころか、次回は筆者もブースを出展してみたいと思う。
「AIクリエイターズマーケット」ピックアップブース
画像認識から小説を自動生成するドラゴン型執筆マシン(他人ハウス)
こちらのブースでは、水晶玉を覗き込むと、覗き込んだ本人が登場する短編小説が印刷されるというサービスを行っていた。
ドラゴンが抱える水晶玉にはカメラが設置されており、撮影した動画からYOLOv5で分析して、写りがよいコマを静止画に切り出し、生成AIに画像認識させて表情や持ち物などを言語化。その情報をもとに小説を執筆させているという。
実際に体験させてもらったところ、名前と性別、職業を入力すると、あっという間に小説が出力された。ストーリーは「主人公が不思議な剣を拾いドラゴンを倒す」という内容で固定されているが、想像以上に映像情報を反映させているので驚いた。筆者はプレスパスのストラップをしていたのだが、AIがイヤホンのコードと誤認識して小説に登場させたのが面白かった。
ローカル環境だけで対話可能なスマートスピーカー「のんきちゃん」(アドリブ)
カメラに映った被写体を認識して会話できるスマートスピーカー「のんきちゃん」。これは驚くべきことに、LLMも画像認識も音声合成も、すべてのAIがローカルで動かしている。ノートPCも、CPUはRyzen 5 4600H、メモリは16GB、GPUはGeForce GTX 1650 4GBと低スペックなのに、スピーディーに動作していた。
- LLM実行環境:llama.cpp
- 画像認識:OpenCV + YuNet(顔認識。CPU)
- Qwen3 VL 2B instruct(画像認識。GPU)
- 音声認識:Fast whisper(medium。GPU)
- 音声合成:Style-Bert-VITS2(CPU)
- 類似文検索:cl-nagoya/ruri-v3-310m(CPU)
- GPIO制御:AtomS3 + notif1(ソフト)
生成AIを使って西洋古典の未訳作品を翻訳・再構築(19世紀書店)
こちらでは生成AIによる西洋古典の翻訳書・サブ読本を販売していた。従来の出版では商業的に厳しかった日本未刊行・絶版になった西洋古典の翻訳出版を行っているという。
AIに書籍の画像を渡し、FAQを考えさせて解説本を作成したり、文体を指定して翻訳させたりしている。また、児童文学風、純文学風、ラノベ風と自由に変化させられるとのこと。EPUB形式のファイルをアップロードすると、自動的に翻訳し、EPUB形式で出力するシステムも開発するなど本格的だった。
動画生成AIの動画から場面を切り出して絵本を制作(VizOn)
定年後に絵本作家になりたいと思っていたところ、AIの登場で一念発起したという作者のブース。
ユニークなのが画像生成AIではなく、動画生成AIを使っているところ。動画を生成し、狙ったシーンのタイミングで切り出している。一貫性を保つために、キャラクターの背景は別に用意している。もちろん、背景もAIで作っている。動画生成AIは「Pika」を使用。ただし、ストーリー作りにはAIを使っていないとのこと。
ちなみに、筆者が購入した絵本の価格は2,000円だったが、製作費で3,500円かかっており、赤字だとのこと。
AIキャラクター「ポケとも」を一般ブースとして展示したシャープ(SHARP)
なんと、大企業のシャープが参加。併設された「企業ブース」ではなく、こちらの「AIクリエイターズマーケット」に混じっているのが面白い。発売予定のAIキャラクター「ポケとも」を展示していた。
「ポケとも」は、生成AIにつないで自由な対話ができるのが特徴。シャープ独自の仕組みとして、ユーザーと話した内容や一緒に出かけた場所、カメラに映った被写体を記憶し、ユーザーに寄り添った会話ができる。価格は39,600円、利用料金は月額495円からと安い。
可愛い系AIイラストのキャンバス・アクスタを販売するコミュニティ(Colorful School DAO)
Colorful School DAOは「AIイラストを通じてみんなを笑顔に」をコンセプトに活動している5人のコミュニティ。今回、メインで出ていたのはharuharu0426さんと、ちょめさんのお二人。可愛い女の子のキャンバスやアクリルパネルなどを販売していた。お話を聞いたところ、haruharu0426さんはAI生成に「SeaArt AI」を利用しているとのことだった。
VTuberの声による自動応答チャットボットをデモ展示(有限会社リフレックスラボ)
リフレックスラボはもともとデザイン事務所だが、Web領域ではAIを活用した個人勢VTuberの運用サポートも手掛けている。VTuberのひじきのごはんさんの宣伝投稿をAI化するサポートから始まり、本人の音声を使ったコンテンツを本人が配信していないときでも自動的に出せれば、より活動につながるのでは、と思いついたという。
ブースでは、ひじきのごはんさんの声で、ファンとの交流を自動応答音声チャットボットで行っているデモが披露されていた。VTuberだけでなく、一般企業のFAQやサポートといったところにも活用していきたいとのこと。
AIでHDD故障を予測する同人誌とCardputer用ケースを販売(犬小屋研究所)
こちらのブースでは同人誌を販売していたのだが、Backblaze(クラウドの自動バックアップサービス)が公開しているオープンデータをもとにした、AIによるHDD/SSDの故障予測というディープなテーマをモチーフにしていた。ChatGPTを使って解析を行っており、意外と精度高く予測できるそう。Grokで生成したショートショート小説も掲載。挿絵はChatGPTで作成している。
また、M5Stack社製品のCardputerに、同社LLMボードを一体化させるケースキットも販売していた。
すべて絵柄が1点もののAI生成ステッカーを販売(74STICKERBOMB)
AIで生成した画像のステッカーを販売。ユニークなのが、すべて異なる画像になっていたこと。それぞれの絵柄で、1枚しか作らないという。
ステッカーといえば、大量生産が当たり前だが、1種類1枚を大量に作るというアプローチを試しているとのこと。ブースにはさまざまなメイドが展示されており、好みの絵柄を選ぶのが楽しい。また、耐水性もあり、意外と長持ちするそう。ほかにもハンカチやキーホルダーなどを制作しており、好評であれば、ほかのアイテムにもチャレンジしたいということだった。
AIアートグランプリ受賞作家による油絵風AIアートのグッズと新作アニメ企画(はんなりアート工房)
「第三回AIアートグランプリ」絵画部門・GALLERIA賞を受賞し、今年の「AIフェスティバル」のキービジュアルにも採用された、はんなり女史さんのブース。油絵タッチで描く幻想的なAIアートのシールやポストカード、缶バッジなどが販売されていた。
気になる新作は、6人のキャラクターたちが魔王に立ち向かっていく壮大なアニメ「星翼のシンフォニア」とのこと。YouTubeで動画生成AI「Sora」による動画も配信している。筆者は缶バッジを購入した。
プロモデルの写真を学習させて統一感ある女性画像を生成(AI-TAMASHII)
画像生成AIで作品を作っているAI-TAMASHIIさん。単にありもののAIを使うだけでなく、プロのモデルを雇って撮影したデータを学習させ、統一感のあるビジュアルの女性を生成しているという。また、複数のAIに同じプロンプトを入力したときの絵柄の違いなども比較するなど、興味深い取り組みを行っていた。
ChatGPTでオリジナルLINEスタンプを1週間で作成、販売(Gadgetouch)
テックメディア「Gadgetouch」は生成AIで作ったLINEスタンプを販売。制作したのは株式会社フォーユーで、写真をもとにChatGPTでベースのミニキャラクターを生成し、あとはプロンプトでポーズを変えて生成しているとのこと。
AIによるLINEスタンプ作成期間は約1週間。ある会社の社長さんの誕生日に、社員がLINEスタンプを作り、会社としてリリースした事例があるとのこと。














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