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日本最強のAIハッカーが誕生。たった5時間のハッカソンでASIの破壊に挑むゲーム、量子コンピューターに挑む対戦アプリなど力作揃う
「全日本AIハッカソン2025」決勝戦レポート【AIフェスティバル 2025】
2025年12月3日 09:00
2025年11月8日、東京・ベルサール秋葉原で「AIフェスティバル 2025」が開催された。
「AIフェスティバル」は「AIをもっと身近に、もっと楽しく」をテーマに、サードウェーブが主催しているイベントであり、今回が3回目となる。「AIフェスティバル 2025」では、落合陽一氏による特別講演をはじめ、AIアートグランプリ最終審査会、AIクリエイターズマーケット、AIワークショップなど、さまざまなイベントが行われた。ここではその中から、「全日本AIハッカソン2025」決勝戦の様子をレポートする。
2025年3月から全国5カ所で地方大会を開催、勝ち抜いてきた全10チーム
「全日本AIハッカソン2025」は、その名の通り、AIを活用したハッカソンであり、プログラミング知識のない初心者でも、生成AIにコーディングをしてもらうことで、作品を作り上げることができる。昨年の「AIフェスティバル 2024」では、入賞者の表彰式のみが行われていたが(全日本AIハッカソン自体はその前から開催)、今回は「AIフェスティバル 2025」の開催中に、ハッカソンの決勝戦が行われることとなり、チームでお題に取り組む様子が来場者からも見えるようになっていた。
今回の「全日本AIハッカソン2025」は、プログラミングの経験がある人を対象にした「一般部門」とプログラミング未経験者が対象の「ビギナー部門」の2部門で実施された。まず、2025年3月から全国5カ所(東日本、西日本、九州、北海道、中日本)で地方大会が開催され、それぞれの部門で最優秀賞となったチームが決勝戦に進んでいる。
筆者も東日本大会の東京大会のビギナー部門に参加したのだが、ビギナー部門は、その場で与えられるお題に対して30分ほどの制限時間内で生成AIを駆使してお題に沿った作品を作り、プレゼンするというものだ。生成AIを活用したプログラミングは「バイブコーディング」や「AI駆動プログラミング」などと呼ばれるが、SEやプログラマーではない筆者でも、生成AIと対話しながらプログラミングを行うことで、短時間で作品を作ることができ、とても楽しかった。
地方大会を勝ち抜き、決勝戦へ進んだチームの名称は以下の通りだ。
- 【東日本大会】
一般部門優勝:囲碁将棋部
ビギナー部門優勝:診断AI's - 【西日本大会】
一般部門優勝:たい焼きテクノロジーズ
ビギナー部門優勝:クロスジェネレーション - 【九州大会】
一般部門優勝:タコスなちょす
ビギナー部門優勝:わいわいハッカソンズ - 【北海道大会】
一般部門優勝:0次会
ビギナー部門優勝:さんかくすう - 【中日本大会】
一般部門優勝:かもみ
ビギナー部門優勝:ねこアボカドV
この10チームで決勝戦が行われた。面白いのは、地方大会では一般部門とビギナー部門を分けて審査が行われていたのだが、決勝戦では一般部門とビギナー部門を分けずに審査を行うことだ。もちろん、ビギナー部門にアドバンテージが与えられるわけではなく、一般部門もビギナー部門も分け隔てなく、一律に審査が行われた。生成AIを活用することで「ビギナー部門でも一般部門からの出場者に負けない作品が作れるだろう」という主催側の目論見によるものだが、最終プレゼンを見たところ、その目論見は見事に達成されていた。
決勝戦のお題は「井」? それとも「#」? 制限時間は5時間
決勝戦では、10:30~15:30までの5時間が開発時間として与えられ、その間は休憩も含めて自由に行動できる。また、中間発表と最終発表の順番決めが12時過ぎに行われ、映像や音声出力、Wi-Fi確認の時間も用意された。
ベルサール秋葉原2Fの一部が開発スペースとして用意されていたが、特にパーティションなどで区切られてはおらず、AIフェスティバルへの来場者から様子が見える形になっていた。
AIハッカソンの地方大会では、その場で「希」や「禅」、「光」といった漢字一文字のテーマが発表され、そのお題から連想される作品を作るという流れでハッカソンが実施された。決勝戦でもその流れは同じだが、与えられたテーマが「井」のような記号であった。これまでと違い、漢字の「井」と捉えることもできるし、マルバツなどのマス目の区切りにも、音楽記号の「♯」のようにも見える。どう解釈するかは、各チーム次第だ。
中間発表は、審査員の一人である千代田まどか(ちょまど)さんが、それぞれのチームに進捗を聞くという形で行われた。すでに動作しているプロトタイプを紹介するチームもあれば、まだアイデア出しの段階だというチームもあり、進捗状況はバラバラであった。中間発表後、チームの代表者が運営の大沼功氏とじゃんけんをし、勝ったチームから順に最終発表の順番を選ぶことになった。
いよいよ最終発表 ~量子コンピューターと対戦できるゲームや3Dスキャンによる人のアバターを活用したゲームなど、力作が揃う
最終発表のプレゼンテーションは、ベルサール秋葉原B1Fで行われた。まず、ハッカソンのお題を決めた、清水亮氏が司会として登場して「全日本AIハッカソン2025」について、次のようにコメントした。
「ハッカソンとは、ソフトウェア開発者やその他の分野の専門家たちが集まり、短時間で新たなプロジェクトを開発するイベントです。これから各チームが作品をこの場で発表し、審査の後に優勝チームが決定します。この優勝チームがどういうことかというと、日本で初めて開催されたAIハッカソンですから、日本最強のAIハッカーであるという十字架をこれから背負っていくことになります。だから非常に緊張しています。どんな人が日本最強のAIハッカーになるのでしょうか。そして今回のハッカソンで、一番重要なのはテーマです。当日まで一切テーマは発表されず、その場で初めて知ってそこから作品を作り上げるというのがハッカソンの醍醐味です。全国5会場での地方大会では全て僕がテーマを考えていますが、これまではずっとホワイトボードに書く直前まで何も考えないようにしていました。今回ばかりは1週間、考えて考えて、最後の3秒で決定しました。そのテーマがこちらです。難しいですね。なんと読めばいいのでしょう。本当は『#』って書いたつもりだったんですが、スタッフが真面目に書いたら、三目並べみたいになってしまいました。いろんな解釈の幅があって、結果的にいいテーマかもしれないと思いました」
続いて、審査員の千代田まどかさんと伊藤有氏が登場し、審査がスタートした。審査は、実際に審査員にプロダクトを体験してもらう形で行われるため、きちんと動くものを作り上げるということが重要になる。
チーム「かもみ」:漢字を3×3のマス目に並べてその画数の合計を9にするゲーム
最初に、チーム「かもみ」が、テーマを「三目並べのマス目」と捉え、漢字を書いて3×3のマス目に並べ、その画数の合計を9にするゲームを発表した。子どもを主なターゲットとしており、漢字を覚えつつ、算数の足し算も学べることが魅力だという。AIは、手書きOCRの活用と、完成度を高めるために、マルチでAIエージェントを動作させて作ったとのことだ。
チーム「タコスなちょす」:仕事をコメントアウトしてワークライフバランスをマネジメントするゲーム
続いて、チーム「タコスなちょす」が、テーマをハッシュタグの「#」と捉え、そこからPythonのコメントアウトを連想し、与えられた仕事をコメントアウトしてワークライフバランスをマネジメントするゲームを発表した。AI活用ポイントは、バイブコーディングでプログラムを作ったことと、生成AIで評価コメントを生成させているとのことだ。
チーム「囲碁将棋部」:ユーザーを世界で唯一の特徴を持った人間として褒めてくれるアプリ
チーム「囲碁将棋部」は、テーマを井戸の「井」と捉え、自分の所属や実績、肩書きなど頑張ったことを入力していくことで、世界で唯一の特徴を持った人間として褒めてくれる「カワズ★オンリーワン」というアプリを開発した。バイブコーディングでプログラムを作成し、普通に計算したら計算できないようなことも、AIがロジックを作って示してくれることがポイントとのことだ。
チーム「0次会」:井戸に入ってくる不要な物を撃ち落とすゲーム
チーム「0次会」は、テーマを井戸の「井」と捉え、井戸に入ってくる不要な物を撃ち落とすゲームを作成した。右側のウィンドウに生成AIが生成したライブチャット風メッセージが表示されるのもポイントだ。AIは、キャラクターのドット絵の生成にも使っているそうだ。
チーム「診断AI's」:自分では気づかなかった強みや機会を発見できるアプリ
チーム「診断AI's」は、テーマを井戸の「井」と捉え、中小企業の経営者とAIが音声で対話し、井戸の外の景色を見せることで、自分では気づかなかった強みや機会を発見できるアプリを作ろうとしていたが、時間が足りず完成しなかったそうだ。
チーム「クロスジェネレーション」:ナンプレを人間と量子コンピューターで戦うゲーム
チーム「クロスジェネレーション」は、テーマを「マス目」と捉えて、ナンプレを人間と量子コンピューターで戦うゲーム「ピコッと量子ひらめきパズル」を作成した。これは量子アニーリング方式の量子コンピューターをクラウド経由で利用しているという。HTMLや画像も生成AIで生成しているとのことだ。
チーム「さんかくすう」:生成AIによって作られた迷路ゲームのコードを解説するアプリ
チーム「さんかくすう」は、一人での参加であったが、ハッカソンに参加する人と参加しない人の溝を埋めるようなアプリを開発した。AIが生成したゲームをプレイし、ゲームのどの部分がどのコードに対応しているかを解説するアプリだ。地方大会で作った迷路ゲームをもとに、そのコードを生成AIに貼り付けて、初心者向けに解説してというプロンプトを入れて作ったとのことだ。
チーム「ねこアボカドV」:悩みを入力すると猫が励ましてくれるアプリ
チーム「ねこアボカドV」は、テーマを「井」という漢字として捉え、「井の中の蛙大海を知らず」ということわざと、青天井、音楽記号の音が上がるという「#」からジャンプを連想し、トリプルミーニングで、井の中の蛙(猫)が大海で青天井するという作品を作った。この作品は、ユーザーが悩みを井戸の中に落とすと、AIが感情を汲み取って悩みに対する励ましの言葉をくれることで、落ちていた気分を青天井に打ち上げてくれるというものだ。励ましの言葉はすべて生成AIが生成したもので、バイブコーディングを利用してプログラムを作成したほか、ビジュアル要素もすべてAIに作ってもらったとのことだ。
チーム「たい焼きテクノロジーズ」:ASIに支配された世界でASIの破壊に挑むゲーム
チーム「たい焼きテクノロジーズ」は、ASI(人工超知能)に支配された世界で、人類が古くから存在する井戸を使ってASIを破壊しにいくという、「マトリックス」や「ターミネーター」のような世界観のゲーム「ASI DIVE」を作成した。
このチームは、昨年のAIハッカソン関西大会の優勝チームとその上位チームが合体したチームであり、決勝戦前に2回チームで練習をしているという強豪チームである。関西万博のシグネチャーパビリオン「null2」でも使われていた3Dスキャン技術を採用し、実在する人間のアバターを3Dゲーム内に登場させているところがウリの一つである。実は、たい焼きテクノロジーズは、中間発表後に千代田まどかさんの3Dスキャンを行っており、ゲーム中に千代田まどかさんを登場させていた。「ASI DIVE」は、オープニングムービーやクリア後のエンディングムービーも用意されている力作で、CursorやSora 2、Sunoなどさまざまな生成AIを活用したとのことだ。
チーム「わいわいハッカソンズ」:笑顔を集めてコレクションするアプリ
最後の発表となったのがチーム「わいわいハッカソンズ」である。「わいわいハッカソンズ」は、テーマを三目並べなどの「マス目」と捉え、笑顔をカメラで撮影してAIがキャラクター化し、3×3の図鑑を作る「スマイルグリッド」を開発した。開発はすべてバイブコーディングで行っているところと、笑顔の認識はローカルで行っているところがポイントだという。プレゼン時間終了後、メンバー二人がかぶり物をかぶって、本アプリの利用シーンの寸劇も行っていた。
日本一のAIハッカーの栄誉に輝いたのは「たい焼きテクノロジーズ」
全チームの最終発表が終了後、審査員の2人は壇上から退き、別室で審査に入った。その間、司会の清水氏とすべてのAIハッカソン大会の設営や運営を担当した大沼氏が登壇し、今回のAIハッカソンについての感想を次のように語った。
「面白かったけど、とにかく疲れた。時間がカツカツで、コンビニご飯しか食べられなかった」(清水氏)
「疲れたけどすごく面白かった。北海道大会で学習時間が足りないって叫んでたチームがあったりとか」(大沼氏)
審査は難航したようで、予定よりだいぶ時間がかかったが、千代田さんと伊藤氏が再びステージに登場し、千代田さんが優勝チームを発表した。
優勝チームは「たい焼きテクノロジーズ」で、次点は「クロスジェネレーション」となった。決め手となったのは、AIをフル活用して開発している点と、数日前に清水氏が発表したばかりの3Dスキャン技術をすぐに取り入れた点である。優勝チームのメンバーには、千代田さんと伊藤氏からメダルが授与された。
「たい焼きテクノロジーズ」のメンバー3人の受賞コメントは以下の通りだ。
「どうもありがとうございました」
「選んでいただいてありがとうございます。コードが5,000行を超えて、やらかしたなと思ったんですが、とりあえず動くものが出せてよかったです」
「まずは選んでいただいてありがとうございます。正直なところ、最後まで完成させられなかったのが、とても悔しいのですが、これから日本一のAIハッカーとして重圧に恥じないようにスキルをしっかりと身につけてやっていきたいと思います」













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