使ってわかるCopilot+ PC

第99回

Arm版Windowsは3Dゲームの描画では不利にならない?

「3DMark」のArmネイティブとx64エミュレートでベンチ対決。意外な結果とその理由

「3DMark」のテスト選択画面。Arm対応のテストには「Arm」のアイコンがある

「3DMark」でArm版とx64版の実行結果を比較

 ULが提供する3Dベンチマークソフト「3DMark」にて、Arm対応が進んでいる。先日のアップデートでは、「Speed Way」と「Port Royal」が新たにArm対応となり、レイトレーシングのテストも可能になっている。

 さらに「3DMark for Enterprise」および「3DMark Reviewers」ライセンスでは、x64版とArm版のどちらを実行するか選べるオプションが追加された。つまり、Arm版Windowsで実行する際、Armネイティブによるものと、x64エミュレーター「Prism」経由によるもので、スコアを比較できるようになった。

 今回は「Snapdragon X(X1P-64-100)」搭載PCで「3DMark」を実行し、Arm版とx64版を実行するとどうなるのか調べてみた。

Arm対応の4項目でテストを実施

 今回実行したベンチマークテストは、「3DMark」の複数あるメニューのうち、「Steel Nomad」、「Solar Bay」、「Wild Life」、「Night Raid」の4種類。「Steel Nomad」はかなり重め、「Solar Bay」は中程度、他2つは軽量の3Dテストとなる。

 「3DMark Reviewers」ライセンスで実行すると、設定を変更できる「Custom Run」が使用できる。Arm対応のテストでは、「Run x64 version(emulated)」という項目があるので、これを[Yes]にすると、Arm版Windowsでもx64版が実行される。

Arm対応の「Steel Nomad」で「Custom Run」を開くと、「Run x64 version(emulated)」の項目がある

 ただし、「Custom Run」を使用した場合、メインの総合スコアは表示されない。個別のスコアは表示があるので、そちらで比較する。

 ちなみにレイトレーシングを使う「Speed Way」と「Port Royal」もArmに対応しているのだが、「Snapdragon X」シリーズはDirectX 12 Ultimateには非対応で、レイトレーシングが使えないため、動作対象外となっている。最新モデルの「Snapdragon X2」はDirectX 12 Ultimateに対応しているそうなので、動作すると思われる。

「Speed Way」と「Port Royal」はレイトレーシング対応テストだが、残念ながら「Snapdragon X」では実行不可

 では結果を見ていこう。

【ベンチマーク結果比較】
テスト名Arm版x64版
Steel Nomad: Graphics test4.58FPS4.68FPS
Solar Bay: Graphics test41.06FPS41.03FPS
Solar Bay: Section 144.49FPS44.44FPS
Solar Bay: Section 241.22FPS41.20FPS
Solar Bay: Section 337.12FPS37.09FPS
Wild Life: Graphics test112.79FPS112.96FPS
Night Raid: Graphics score28,55128,594
Night Raid: CPU score16,43810,130

 ちょっと意外な結果に見えるのではないだろうか。グラフィックス系のテストにおいては、Arm版とx64版の結果はほぼ同等で、「Night Raid」のCPUテストだけは約1.6倍の差がついている。

なぜグラフィックス系のテストでは差が出ないのか?

 グラフィックス系のテストにおいては、GPUがフルに使われるよう設計されている。つまりテスト中はGPUがボトルネックになってスコアが頭打ちになる。CPUには余裕がある状態だ。

 グラフィックス処理の命令は、「Snapdragon X」に搭載されているAdreno GPUがDirectX 12で処理する。そのため、CPU命令がArmネイティブでも、x64のエミュレートでも、GPUに送られるDirectX 12のコマンドやシェーダーの処理は基本的に同じになる。よってGPU負荷が大きい状況では、性能差は出ない。

 CPUに関してはx64のエミュレーションの方が負荷が大きくなるため、今回唯一のCPUテストとなった「Night Raid」のCPU scoreだけは差が付いている。とはいえ1.6倍の差で済んでいるわけで、エミュレーターの「Prism」は十分に優秀だと言えるだろう。

 この結果から、高負荷な3Dゲームを動かす場合、Arm版Windowsはそれほど不利にはならない可能性が高い。「Snapdragon X」シリーズのGPUはそれほど強力ではないが、NVIDIAの「RTX Spark」のように高性能なGPUを搭載したArm版Windows PCも登場している。この先のPCゲーミングがちょっと楽しみなデータだとは言えるだろう。

著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)

1977年生まれ、滋賀県出身

ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜で連載『石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』』(AKIBA PC Hotline!に移動)、『使ってわかるCopilot+ PC』などを執筆。

・著者Webサイト:https://ougi.net/