使ってわかるCopilot+ PC
第99回
Arm版Windowsは3Dゲームの描画では不利にならない?
「3DMark」のArmネイティブとx64エミュレートでベンチ対決。意外な結果とその理由
2026年6月19日 12:08
「3DMark」でArm版とx64版の実行結果を比較
ULが提供する3Dベンチマークソフト「3DMark」にて、Arm対応が進んでいる。先日のアップデートでは、「Speed Way」と「Port Royal」が新たにArm対応となり、レイトレーシングのテストも可能になっている。
さらに「3DMark for Enterprise」および「3DMark Reviewers」ライセンスでは、x64版とArm版のどちらを実行するか選べるオプションが追加された。つまり、Arm版Windowsで実行する際、Armネイティブによるものと、x64エミュレーター「Prism」経由によるもので、スコアを比較できるようになった。
今回は「Snapdragon X(X1P-64-100)」搭載PCで「3DMark」を実行し、Arm版とx64版を実行するとどうなるのか調べてみた。
Arm対応の4項目でテストを実施
今回実行したベンチマークテストは、「3DMark」の複数あるメニューのうち、「Steel Nomad」、「Solar Bay」、「Wild Life」、「Night Raid」の4種類。「Steel Nomad」はかなり重め、「Solar Bay」は中程度、他2つは軽量の3Dテストとなる。
「3DMark Reviewers」ライセンスで実行すると、設定を変更できる「Custom Run」が使用できる。Arm対応のテストでは、「Run x64 version(emulated)」という項目があるので、これを[Yes]にすると、Arm版Windowsでもx64版が実行される。
ただし、「Custom Run」を使用した場合、メインの総合スコアは表示されない。個別のスコアは表示があるので、そちらで比較する。
ちなみにレイトレーシングを使う「Speed Way」と「Port Royal」もArmに対応しているのだが、「Snapdragon X」シリーズはDirectX 12 Ultimateには非対応で、レイトレーシングが使えないため、動作対象外となっている。最新モデルの「Snapdragon X2」はDirectX 12 Ultimateに対応しているそうなので、動作すると思われる。
では結果を見ていこう。
| テスト名 | Arm版 | x64版 |
|---|---|---|
| Steel Nomad: Graphics test | 4.58FPS | 4.68FPS |
| Solar Bay: Graphics test | 41.06FPS | 41.03FPS |
| Solar Bay: Section 1 | 44.49FPS | 44.44FPS |
| Solar Bay: Section 2 | 41.22FPS | 41.20FPS |
| Solar Bay: Section 3 | 37.12FPS | 37.09FPS |
| Wild Life: Graphics test | 112.79FPS | 112.96FPS |
| Night Raid: Graphics score | 28,551 | 28,594 |
| Night Raid: CPU score | 16,438 | 10,130 |
ちょっと意外な結果に見えるのではないだろうか。グラフィックス系のテストにおいては、Arm版とx64版の結果はほぼ同等で、「Night Raid」のCPUテストだけは約1.6倍の差がついている。
なぜグラフィックス系のテストでは差が出ないのか?
グラフィックス系のテストにおいては、GPUがフルに使われるよう設計されている。つまりテスト中はGPUがボトルネックになってスコアが頭打ちになる。CPUには余裕がある状態だ。
グラフィックス処理の命令は、「Snapdragon X」に搭載されているAdreno GPUがDirectX 12で処理する。そのため、CPU命令がArmネイティブでも、x64のエミュレートでも、GPUに送られるDirectX 12のコマンドやシェーダーの処理は基本的に同じになる。よってGPU負荷が大きい状況では、性能差は出ない。
CPUに関してはx64のエミュレーションの方が負荷が大きくなるため、今回唯一のCPUテストとなった「Night Raid」のCPU scoreだけは差が付いている。とはいえ1.6倍の差で済んでいるわけで、エミュレーターの「Prism」は十分に優秀だと言えるだろう。
この結果から、高負荷な3Dゲームを動かす場合、Arm版Windowsはそれほど不利にはならない可能性が高い。「Snapdragon X」シリーズのGPUはそれほど強力ではないが、NVIDIAの「RTX Spark」のように高性能なGPUを搭載したArm版Windows PCも登場している。この先のPCゲーミングがちょっと楽しみなデータだとは言えるだろう。
1977年生まれ、滋賀県出身
ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜で連載『石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』』(AKIBA PC Hotline!に移動)、『使ってわかるCopilot+ PC』などを執筆。
・著者Webサイト:https://ougi.net/

























