クリエイターが知らないと損する“権利や法律”
著作権はどうやって使う
~第1章:なぜ著作権という権利があるの?~
2016年7月13日 07:00
オンラインソフト作者に限らず、あらゆるクリエイターが創作活動を続けるために、著作権をはじめとして知らないと損する法律や知識はたくさんある。本連載では、書籍『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』の内容をほぼ丸ごと、三カ月間にわたって日替わりの連載形式で紹介。権利や法律にまつわる素朴な疑問に会話形式の堅苦しくない読み物でお答えする。
前回掲載した“著作権を使うと何ができる”の続きとして、今回は“著作権はどうやって使う”というテーマを解説する。
著作権はどうやって使う
著作権は、作品を作ったら自然に発生する権利で、お金を得ることが可能、と。なんとなくわかってきました。
けど先生、著作権ってどうやって使うんですか?
著作権法という、法律に定められた権利ですから、法律に基づいて利用しましょう。
ええっ? ちょっと待ってください。
実はこの間ちょっと調べてみたんですが、著作権法って百何十条もあって、めちゃくちゃ難しそうなんですけど。
簡単な話なら、弁護士要りませんよね(ニコッ)
先生、やっぱり笑顔がコワイです。
もちろん、何でもかんでも弁護士や弁理士に相談しなさいとは言いません。
忙しいのは仕事冥利に尽きますけど、自分で自分の身を守るには、ある程度の知識が必要です。
そりゃそうですけど……。
ではまず、著作権法1条を読んでみましょう。
著作権法1条(目的)
この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。
……先生、やっぱりなんだか難しそうです。
ちゃんと説明してあげますから。最初に(目的)とありますね。
つまり1条には、著作権法の目的が書いてあります。
それが最後の『文化の発展に寄与すること』です。
文化の発展に寄与、ですか。
そうです。
その目的のためには『著作者等の権利の保護』が必要なのです。
お金と名誉を得るために?
そう! よくわかりましたね(そこだけは、ちゃんと頭に入っていたのね)。
わーい!
『隣接する権利』はややこしいので、一旦飛ばします。
省略して『著作物に関し著作者の権利を定め』と読むと?
わかりやすくなった気がします。
でしょ? ただし『これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ』なので、なんでもかんでも保護されるわけではない、ということになります。
つまり、例外もあると?
そういうことです。
『文化の発展に寄与』するのが目的ですから、権利ばかり強くなって『公正な利用』の妨げになってしまっては困りますからね。
なんとなくわかってきました。
ちなみに先ほど飛ばした『隣接する権利』というのは、著作物の伝達に重要な役割を果たしている者に与えられる権利です。
歌手、演奏者、俳優、ダンサー、レコード製作者、放送事業者などは『著作隣接権者』と呼ばれます。
著作者とは別なんですね。
そうです。
そして『権利の保護』は、権利が侵害されたときに差止請求したり、民法709条の不法行為に基づき損害賠償を請求したり、刑事罰があったりといった形で守られます。
著作権法112条(差止請求権)
著作者、著作権者、出版権者、実演家又は著作隣接権者は、その著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。
2 著作者、著作権者、出版権者、実演家又は著作隣接権者は、前項の規定による請求をするに際し、侵害の行為を組成した物、侵害の行為によつて作成された物又は専ら侵害の行為に供された機械若しくは器具の廃棄その他の侵害の停止又は予防に必要な措置を請求することができる。
民法709条(不法行為による損害賠償)
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
権利が侵害されなきゃ使えない……?
そんなことはありませんよ。
著作物を正規に利用したい人と、どのような条件で、どのように利用されるかを、あらかじめ約束しておけばいいのです。
そうか! お金をもらうことを利用条件にすればいいんだ!
そういうことです。
払ってもらえるなら、ね。
ぐぬぬ……。
次回予告
今回の続きとして次回は“〈コラム〉著作権の歴史と文化の発展”というテーマを解説する。
原著について
『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』
(原著:鷹野 凌、原著監修:福井 健策、イラスト:澤木 美土理)
クリエイターが創作活動するうえで、知らないと損する著作権をはじめとする法律や知識、ノウハウが盛りだくさん! “何が良くてダメなのか”“どうやって自分の身を守ればいいのか”“権利や法律って難しい”“著作権ってよくわからない”“そもそも著作権って何?”といった疑問に会話形式の堅苦しくない読み物でお答えします!