クリエイターが知らないと損する“権利や法律”
アイデアと表現の違い
~第2章:著作権で保護される作品を教えて!~
2016年7月19日 07:00
オンラインソフト作者に限らず、あらゆるクリエイターが創作活動を続けるために、著作権をはじめとして知らないと損する法律や知識はたくさんある。本連載では、書籍『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』の内容をほぼ丸ごと、三カ月間にわたって日替わりの連載形式で紹介。権利や法律にまつわる素朴な疑問に会話形式の堅苦しくない読み物でお答えする。
前回の“独創性って何だろう ~第2章:著作権で保護される作品を教えて!~”の続きとして、今回は“アイデアと表現の違い ~第2章:著作権で保護される作品を教えて!~”というテーマを解説する。
アイデアと表現の違い
じゃあ先生、『アイデア』ってどういう扱いなんです?
創作的に表現されていない、単なるアイデアの段階は著作物ではありません。
ええっ! そうなんですか?
そうですね……例えば、『主人公は突然、異世界に送り込まれるが、元の世界の道具や知恵を使ってさまざまなピンチを乗り越え、その世界の人間たちを救う』という物語のアイデアがあったとします。
ずいぶん大ざっぱな感じだけど、わりとありふれた設定ですね。こういう物語は、世の中にたくさんあるような。
もしこれが著作物として保護される対象だとすると、他の人は許可を得ないと似たような話を作れなくなってしまいます。
うわ、それは困っちゃいますね。
こういった単なるアイデアが保護される対象だと、著作権法1条に書かれている『公正な利用』の妨げになります。だからアイデアは著作物ではないのです。
なるほど……じゃあアイデアと表現って、どう違うんです?
これも、単純に区別するのは難しいところ。だからしばしばその境界線が問題になります。『これは盗作だ!』『いやいやアイデアが似ているだけだ!』と争いになることも多いです。
……なんか世知辛いですね。
当事者が問題にしなくとも、盗作だ! と世間が勝手に騒ぐこともありますね。例えば、ディズニーの『ライオン・キング』というアニメーション映画はご存じですか? この作品が発表された当時、手塚治虫さんの『ジャングル大帝』にそっくりだと日米で大騒ぎになりました。
どっちも観たことないんですが、そんなに似てるんですか?
アフリカが舞台で、ライオンが主人公で……と、確かに似ているところもあります。ただ、手塚治虫さんは当時すでに亡くなられていたのですが、著作権継承者である息子の手塚眞さんが書かれた『天才の息子』という書籍によると、似ていないという判断で訴えるのをやめたそうです。『ライオン・キング』は動物だけの物語、『ジャングル大帝』はライオンが人間と心を通わせる物語、と。
それは結構大きな違いですね。まあ、当事者が問題ないなら、周りがとやかく言うことじゃないですね。
ご存命ならどう思われたでしょうね。
次回予告
今回の続きとして次回は“キャラクターは保護されるのか ~第2章:著作権で保護される作品を教えて!~” というテーマを解説する。
原著について
『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』
(原著:鷹野 凌、原著監修:福井 健策、イラスト:澤木 美土理)
クリエイターが創作活動するうえで、知らないと損する著作権をはじめとする法律や知識、ノウハウが盛りだくさん! “何が良くてダメなのか”“どうやって自分の身を守ればいいのか”“権利や法律って難しい”“著作権ってよくわからない”“そもそも著作権って何?”といった疑問に会話形式の堅苦しくない読み物でお答えします!