クリエイターが知らないと損する“権利や法律”
インターネットに流す権利
~第3章:著作権について詳しく教えて!~
2016年8月1日 07:20
オンラインソフト作者に限らず、あらゆるクリエイターが創作活動を続けるために、著作権をはじめとして知らないと損する法律や知識はたくさんある。本連載では、書籍『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』の内容をほぼ丸ごと、三カ月間にわたって日替わりの連載形式で紹介。権利や法律にまつわる素朴な疑問に会話形式の堅苦しくない読み物でお答えする。
前回掲載した“勝手にレンタルしちゃダメなのか”の続きとして、今回は“インターネットに流す権利”というテーマを解説する。
インターネットに流す権利
著作権(財産権)は他にもあります。
インターネットが普及したことによって生まれた権利が『公衆送信権』です。
著作権法23条(公衆送信権等)
著作者は、その著作物について、公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行う権利を専有する。
2 著作者は、公衆送信されるその著作物を受信装置を用いて公に伝達する権利を専有する。
えーっと、インターネットに流す権利、ですか?
正確には、インターネットも含まれる、です。
ウェブサイトのURLをブラウザで開こうとすると、そのとき初めて自動的に文字や画像のデータが送られてきます。
これを『自動公衆送信』といいます。
その手前の、データがサーバーに保存されているだけの状態は『送信可能化』です。
送信可能化は、自動公衆送信に含まれます。
つまり、データをアップロードしただけで、誰も見ていない状態であっても、権利は及びます。
誰も見てないウェブサイトって寂しいですね……。
例えば、YouTubeに動画をアップロードするのが送信可能化で、クリックすると再生するのが自動公衆送信です。
なるほど。
ああいう動画投稿サイトって、たまにテレビ番組がそのままアップロードされてますよね?
テレビ局が公式で配信しているもの以外は、公衆送信権侵害の可能性が高いですね。
アップロードするのはもちろん、ダウンロードもダメですよ。
違法にアップロードされている音楽や映像を、そうと知りながらダウンロードすると、刑事罰の対象になります。
(ガクガクブルブル)
YouTubeが面白いのは、無許諾動画を自動検出して権利者に連絡し、削除するか、広告を載せて収益を得るかを選べるようにしている点です。
無許諾動画への広告によって、7年間で10億ドルの収益を権利者にもたらしているそうです。
10億ドル!? すげぇ……。
あと、公衆送信権はインターネット以外に、テレビ放送、ラジオ放送、ケーブルテレビのような有線放送で著作物を流す行為も含まれます。
え? じゃあ学校の放送部は? 勝手にCDで音楽流してるんですけど、あれは大丈夫なんです?
校内放送は同一の建物内への送信なので、著作権法上は放送ではなく演奏です。
つまりこの場合、関係する権利は『演奏権』です。
放送部は、校内放送でお金を稼いでいますか?
著作権法22条(上演権及び演奏権)
著作者は、その著作物を、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として(以下「公に」という。)上演し、又は演奏する権利を専有する。
まさか。無料で聴けますよ。
営利目的の演奏じゃなければ、視聴者から料金を取らない限り問題あ
りません。
著作権法38条(営利を目的としない上演等)
公表された著作物は、営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金(いずれの名義をもつてするかを問わず、著作物の提供又は提示につき受ける対価をいう。以下この条において同じ。)を受けない場合には、公に上演し、演奏し、上映し、又は口述することができる。ただし、当該上演、演奏、上映又は口述について実演家又は口述を行う者に対し報酬が支払われる場合は、この限りでない。
あ、もしかしてさっき出てきた、図書館の館外貸出が非営利だから問題ないっていう例外と同じですか。
そういうことです。
次回予告
今回の続きとして次回は“ファンサブって何だろう”というテーマを解説する。
原著について
『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』
(原著:鷹野 凌、原著監修:福井 健策、イラスト:澤木 美土理)
クリエイターが創作活動するうえで、知らないと損する著作権をはじめとする法律や知識、ノウハウが盛りだくさん! “何が良くてダメなのか”“どうやって自分の身を守ればいいのか”“権利や法律って難しい”“著作権ってよくわからない”“そもそも著作権って何?”といった疑問に会話形式の堅苦しくない読み物でお答えします!