クリエイターが知らないと損する“権利や法律”
勝手に利用していいと書いてある
~第4章:無断で利用できる著作物を教えて!~
2016年8月4日 07:20
オンラインソフト作者に限らず、あらゆるクリエイターが創作活動を続けるために、著作権をはじめとして知らないと損する法律や知識はたくさんある。本連載では、書籍『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』の内容をほぼ丸ごと、三カ月間にわたって日替わりの連載形式で紹介。権利や法律にまつわる素朴な疑問に会話形式の堅苦しくない読み物でお答えする。
前回掲載した“許可を取れば利用できるのだけど”の続きとして、今回は“勝手に利用していいと書いてある”というテーマを解説する。
勝手に利用していいと書いてある
先生、いちいち著作者の許可取るの、面倒です。
逆に、著作者の側も、大勢の方からいちいち許可を求められたら、面倒で仕方がありませんね。
そこで、作品を発表する際に『ここまでの範囲であれば、自由に利用して良いですよ』と、あらかじめ意思表示しておくケースも増えてきました。
あ、もしかして、著作権フリーってやつですか?
はい、それも意思表示の1つです。
でも、実際に利用するときは、利用規約をちゃんと読んでからにしましょうね。
『フリー』と書いてあっても実は『自由』ではなく『無料』の意味で、商用利用はダメとか、クレジット表記義務がある場合などもあります。
利用してもいいけど、条件がついてるってことですか。
そうです。例えばクリプトン・フューチャー・メディアが販売している『初音ミク』は、声優の藤田咲さんの声を合成して歌わせられるソフトウェア音源です。
歌わせた音声データは、基本的には自由に利用していいことになっています。
あ、そうか、ミクさんは元々、音声合成ソフトでしたっけ。
ところが規約には例外として、商用カラオケ、携帯電話の呼び出し音など一定の場合は、別途許可が必要だと書いてあります。
えっ!? 何でも自由に利用できるわけじゃないんですか? 知らなかった……。
また、公式イラストの利用には『ピアプロ・キャラクター・ライセンス』という別の規約があります。
非営利かつ無償の場合であれば、二次利用に許諾は不要です。
そうか、いちいち許可が要らないから、ミクさんのイラストがたくさん生まれたんですね。
そう。ただし、同人誌のように最小限の対価を受け取って少部数を配布する場合は、事前に『ピアプロリンク』で利用申請して、配布物に申請証のQRコードを表示する必要があります。
公式イラストも、何でも自由に利用できるわけではないのですよ。
なるほど……要するに、お金儲けが目的じゃなければ無断で利用してもいいですよってことなのかな?
そうです。そしてこれは、クリプトン・フューチャー・メディアのルールなので、他の人の作品にはもちろん適用されません。
つまり、ひとくちに『二次利用可』といっても、どこまでの範囲なら無断利用できるかは、権利者によって異なります。
それでも、いちいち許可取るのに比べたらマシか……。
一般に、商業作品の二次利用許可がイチ個人に下りる可能性は、低いです。
だから、あらかじめ許諾範囲を明確にしてくれる形というのは、非常にありがたい話なのですよ。
確かにそうですね……ミクさんありがとうございます!
ミクさんは、権利者ではありません。
冷静なツッコミありがとうございます!
次回予告
今回の続きとして次回は“〈コラム〉パブリック・ライセンスについて”というテーマを解説する。
原著について
『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』
(原著:鷹野 凌、原著監修:福井 健策、イラスト:澤木 美土理)
クリエイターが創作活動するうえで、知らないと損する著作権をはじめとする法律や知識、ノウハウが盛りだくさん! “何が良くてダメなのか”“どうやって自分の身を守ればいいのか”“権利や法律って難しい”“著作権ってよくわからない”“そもそも著作権って何?”といった疑問に会話形式の堅苦しくない読み物でお答えします!