クリエイターが知らないと損する“権利や法律”
独占的利用の許諾って何だろう
~第7章:作品を発表するときに気をつけること~
2016年9月9日 07:20
オンラインソフト作者に限らず、あらゆるクリエイターが創作活動を続けるために、著作権をはじめとして知らないと損する法律や知識はたくさんある。本連載では、書籍『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』の内容をほぼ丸ごと、三カ月間にわたって日替わりの連載形式で紹介。権利や法律にまつわる素朴な疑問に会話形式の堅苦しくない読み物でお答えする。
前回掲載した“著作権を無償譲渡する利用規約”の続きとして、今回は“独占的利用の許諾って何だろう”というテーマを解説する。
独占的利用の許諾って何だろう
投稿サービスの利用規約を読む上でもう1つ注意すべきなのが、利用許諾(ライセンス)について。
著作権譲渡ではないけど、運営会社が利用するのは構いませんと許可を与える利用規約になっている場合が多いです。例えばこのような……。
例
利用者はコンテンツを投稿することにより、運営会社に対しコンテンツに関する世界的かつ非独占的なライセンスを無償で付与するものとします。
へえ……これは何のためなんです?
そう、そこが重要。
『何のために』が書かれていない場合が、結構多いのです。
ライセンスを付与する目的は何なのか。ライセンスはいつまで継続するのか。提携他社も利用可能なのか、などが明記されていれば、判断しやすいですよね。例えばこのような……。
例
このライセンスでユーザーが付与する権利は、本サービスの運営、プロモーション、改善、および、新しいサービスの開発に目的が限定されます。このライセンスは、ユーザーがコンテンツを削除したときに終了するものとします。
そっか、こうやって書いてあれば納得しやすいですね。
投稿サイトは、ユーザーは基本的に無料で利用でき、企業は広告で収益を稼ぐ形が多いです。
だから、運営会社が投稿コンテンツを利用するのは、集客目的が中心ですね。
プロモーション、大事ですね。
また、利用規約の文章は、1文字違うだけでまったく意味が異なる条件に変わるので注意が必要です。
例えば……。
例
利用者はコンテンツを投稿することにより、運営会社に対しコンテンツに関する世界的かつ独占的なライセンスを無償で付与するものとします。
ん? 『非』がない?
そう、『非独占的』ではなく『独占的』になっていますね。
つまり、このサービスへコンテンツを投稿したら、そのコンテンツは他社サービスはおろか、投稿者自身も利用できなくなってしまうのです。
著作権譲渡よりはマシですが、かなり束縛されることになります。
1文字ないだけなのに! 怖い……。
もっとも、独占的なライセンスを求める利用規約は、投稿サイトではなく、コンテンツ販売サイトに多いです。
コンテンツを販売できるサービスって、最近増えてきましたよね。
Kindleダイレクト・パブリッシングとか、noteとか。
コンテンツ販売サイトは、販売手数料で収益を得る形なので、他社でも販売できる状態だと手数料が減ってしまう、という考え方なのです。
なるほど……でも独占ってことは、販売できる相手が限定されちゃうわけですよね?
そう。だから、基本は非独占だけど、『独占販売なら手数料を安くします』というオプションが用意されている場合もあります。
なるべく多くの場所で扱って販売可能な対象を広げるか、1カ所に限定して利幅を大きくするか。
いろいろな考え方があるので、どちらがいいかは一概に言えません。マーケティング戦略次第ですね。
うおおお、なんかビジネスっぽい!
『ぽい』ではなく、ビジネスそのものなのですよ。
著作権を譲渡する条件なら取引は最初の1回で終了ですから、対価はなるべく高くしたいですよね。
利用許諾も、独占なら非独占より対価を高くしたい。何事も条件次第です。
そっか、これってビジネスなんだ……。
次回予告
今回の続きとして次回は“創作の適正な対価とは”というテーマを解説する。
原著について
『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』
(原著:鷹野 凌、原著監修:福井 健策、イラスト:澤木 美土理)
クリエイターが創作活動するうえで、知らないと損する著作権をはじめとする法律や知識、ノウハウが盛りだくさん! “何が良くてダメなのか”“どうやって自分の身を守ればいいのか”“権利や法律って難しい”“著作権ってよくわからない”“そもそも著作権って何?”といった疑問に会話形式の堅苦しくない読み物でお答えします!